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最終話:明るい未来

――謹慎をあけた俺を待っていたのは、元の日常だった。


 いくら無実とはいえ、仮にも学校を荒らしたのは事実な訳で、多少の仲間はずれは覚悟をしていたのに。教室に入った俺たちを、変わらぬ日常が迎え入れた。


 久しぶり、と冗談交じりに語りかけてくれるクラスメイト。勘違いしてごめんと、求めていない謝罪をわざわざくれるクラスメイト。


 俺は久々に、人間の温かさに触れたような気がした。


 これは俺だけでなく、奏音も同じで。謹慎あけ初日の彼女の周りには、たくさんの人だかりができていた。大方、謝罪を述べるクラスメイトばかりだったが、優しく受け流す奏音の笑顔は印象的だった。


 本当に、全部終わったんだな。


 空になった二つの席を見る度に、そう実感させられる。変わらぬ元の日常の中で、唯一姿を変えた二つの空席。


 天谷千冬と秋月秀次は、謹慎をあけてから学校に来なくなった。


 申し訳ない、なんて優しさは、もう俺の中に残っていない。俺の手でそうさせた、俺と奏音の復讐によってその席は静かになった。そう考えると、妙な高揚感に襲われた。


――俺はこの結末に、後悔はない。



****



「ここって、意外と眺めいいのね」


「そうだな」


「この屋上には嫌な思い出しかないから。私、これで最後にするわ」


「俺もそうする」


「……」


「……」


 昼休み、特に訳もなく屋上に向かった俺は、一人の少女と出会した。

 艶やかな紫髪を靡かせながらどこか遠くを眺める彼女の姿は、どこか懐かしい。

 まるで、会う約束をしていたかのような。けれど、互いに屋上に用はなく。

 偶然向かったその先に、妻夫木奏音の姿があった。


「秀次、退学になったんだってね」


「らしいな」


「結局、あいつらは両方クズだったのね」


「そうだな」


「……」


「……」


 柵に肘を置き、ただぼーっと景色を眺めるだけで、謎の開放感を味わえた。

 ずっとこうしていたい、思わずそう望んでしまうのは、溜まった疲れのせいだろうか。


「思ったより、呆気なかったわね」


「そうだな」


「クラスメイトに受け入れてもらえるか心配だっけど、ひとまず安心ね」


「だな」


「……」


「……」





「――ねぇ、達川」


「……」


「私達、付き合わない?」


「……えっ?」


 突如放たれた彼女の言葉に、ぼんやりとした俺の意識は覚醒する。気づけば景色を映していた俺の瞳には、顔を赤く染めた奏音の姿が映っていた。


「ふふっ、冗談よ」


「……はっ!?」


「あんたが余りにも淡々と返すもんだから、ちょっとからかいたくなったのよ」


「なんだよ……それ」


 意地悪げな笑みを零した奏音は軽やかに後退りし、手を後ろで組みながら視線を元に戻す。


「私達、自由になったのよ。騙されながら過ごし続けてきた日々は、もう終わった」


「……」


「ねぇ、達川」


 奏音はくるりと体を捻らせ、俺と視線がぶつかると


「復讐して良かったって、思わない?」


 優しい笑みを浮かべながら、そう尋ねた。

 

 勢いのまま決意した、浮気相手に対する復讐。途中、何度も諦めかけたけれど、結局無事終わりを迎えられたのは奏音のおかげ。


 今なら言いきれる。

 復讐して良かった。

 この道を選んだことに後悔はない……と。


 俺は奏音に対する感謝も込めて、清々しく微笑み返した。


「――そうだな」


 屋上から見えた街並みは、俺たちの未来のように明るく、どこか澄んでいるような気がした。



 ~完~



最後までお読み頂き、ありがとうございました。



無事完結を迎えたということで、少々後書きを綴らせてもらいます。暇な時にでも、是非お読みくださいませ。



まずは、次回作についてです。


小説家になろうで活動している身として、今後も作品を投稿していくつもりです。その際にも読者様の支えは、多大なモチベーションになります。


もし、少しでも「応援してるよ」「次回作も期待してるよ」と思ってくださる方がいれば、"お気に入り作者登録"等々で作者の支援をしていただけると大変嬉しいです。


何卒、よろしくお願いします。



次は、本作についてです。


本作は約一か月前に連載を開始し、本日10月12日。読者様の支えもあって、無事走りきることができました。


ありがとうございます。


つきましては、いずれアフターストーリーなども投稿できればと考えております。


この結末に納得のいかない読者様もいるでしょうし、モヤモヤした部分を少しでも補えればと思っています。


宜しければ、ブクマや下の評価欄から《☆☆☆☆☆》を《★★★★★》にしてくださると、モチベーションに繋がります。



この作品及び、長々とした後書きを最後までお読み頂き、ありがとうございました。


次回作にもご期待を!



犬野空



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― 新着の感想 ―
[一言] 二章まで読み終えて。 一章では奏音は主人公をほとんど信用すらしていないかのように秘密裏に動いて最後に巻き込んで停学 そんなこんなで二章は学校側の描写はままリアルに仕上げてあったのは良かったと…
[良い点] >「私達、付き合わない?」 付き合わなくてよかった。 どんな美少女でも秀次が抱いた女と付き合うなんて嫌すぎる。
[一言] ざまぁした後サレ同士付き合うケース多いけどこういう結末の方が好きだな
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