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14話:悔いのない結末

「何これ……」

「これってさっきの……」

「さすがにまずくない…?」


 屋上を後にし、教室に戻ろうとした俺たちを待ち受けていたのは、ザワザワと廊下で騒ぐ生徒の集団だった。


 何事だ、と思ったのは一瞬で、すぐに俺のせいだと理解する。


 生徒は辺りに散りばめられた紙を見て、ざわめいていたのだ。無論、それは俺がバラ撒いた紙。


 復讐心に任せて後のことを考えていなかったが、こうなるに決まっている。冷静になってみれば校内中に紙をバラ撒くなんて、中々の事をしてしまったのだから。


「正直に……謝るか…」


「そうね……」


 覚悟してなかった訳ではない。辺り一面に紙をバラ撒いて、簡単に見逃してもらえるとは思ってないし、奏音も覚悟の上で俺に頼んだんだ。 

 せめてもの償いとして、潔く謝ろう。


 そう決意した俺たちは、呼び出されるよりも前に職員室に向かう。

 俺は紙をバラ撒いた謝罪。奏音は私用で放送室を使った謝罪。それぞれの罪を抱えて、重い足取りで扉を開けた。


「おう、お前ら……どうした?」


 幸い、担任の教師――伊野巻達雄(いのまきたつお)の机が入口付近にあることが救いとなったものの、俺たちは緊張に包まれていた。

 職員室に入る機会なんてそうそうないし、慣れない空気感が辺りを漂っている。

 

「あ、あのっ…先生…」


 普段は強気な奏音の声も緊張を帯びていて、顔が強ばっていた。

 が、ここまで来たからにはもう引けない訳で、俺たちは一度顔を見合わせて頷き、見栄えのいい角度で頭を下げ、誠意を込めて言い放った。


「「ごめんなさい!!」」



*****



 反省の色が通じたのか、はたまた浮気に同情してくれたのか。

 

 あの後、俺たちは事の経緯を全て話し、何度も頭を下げた。浮気のことも、クラスでのやり取りも。一切包み隠さず、俺たちは全てを伝えた。若干大袈裟に語ったことは、許してほしい。

 けれど、そんな必死な弁明も相まって、俺たちは見事許しを得た。ただし、一週間の停学付きで。


 辛かったのは分かる。けれど、だからといって見過ごす訳にはいかない。


 そんなご最もな指摘を受け、俺たちは処分を下された。停学と聞くと、中々の大きな事態に捉えられるも、やったことに対する反動にしては、十分に考慮してくれた。

 

 校内中に勝手な放送を流し、辺り廊下一面を紙で埋めつくす。俺たちのやった行いは、端的に言えば学校荒らしだ。


 普通ならもっと重い指導を受けるであろう行為を甘く終わらせてくれたのは、先生自身もあの放送を聞いていたからだろう。

 

 生々しい音声。リアルな浮気現場。


 先生は俺と千冬、奏音と秋月の交際を知らなかったようだが、それでもあの放送は学校中の人間に影響を与えた。


 浮気という、許すまじき行為。人間の闇を盗聴した、リアルな音声。そして、その声の主を示すバラ撒かれた紙。


 それらを見た生徒が感じたのは、恐怖か。はたまた憎悪か。いずれにせよ、その許すまじき行為のお陰で、俺たちは救われた。


 だからこの停学処分も真に受け止め、やり過ぎてしまった行為を反省しつつ、俺たちは前を向く。


 たとえ何と思われようとも、俺たちのやったことに後悔はないのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄い面白くて好き 個人的に特に良かった部分は奏音が先走って失敗し、それを主人公が鼓舞して焚きつけるところ。 前日の主人公が焚き付けられるシーンとの対比と合わせて良かった。 [気になる点]…
[気になる点] 浮気者2人に、事実と異なる、「既に別れていた」「お前達は嘘つきだ」との名誉毀損をされて、その反撃、汚名を晴らすために、真実を証拠とともに提示せざるを得なかったという状況です。 どちら…
[一言] まぁぶっちゃけ何の関係も無い思春期の連中にとっては只のエロボイスでしかないよねっていう話。
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