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#9 『機械靴の少女シシド=アグリ』

 


 王都アルカディアに存在する武器屋は大きく分けると三つ


 国から認められ、その性能もお墨付きの高級店

 お求めやすい価格帯で一般的な冒険者の懐にも優しい店

 そして訪れる者は限られる貧相で軒先の荒れ具合も見るに堪えない



 "オートメカニクス=アグリ"



「ここが依頼主のお店か、わくわくする店構えだね!」


「その意見には同意しかねますが……」



 古来より創作物でこういった店構えの場所に外れは無し!謎のオーパーツを提供してくれる心強い味方となるのが定石であり、ヒイロには男の子心をくすぐられる素晴らしい風貌に見えた



「それと……あまりここの店主とは会話しないようにお願いしますよ……?」


「どうして? あ、分かった! 気難しいおじさんでろくに会話も出来ないような……」



 声を潜めながら念を押す様に言うマリアだったが、ヒイロからすればこれもお約束というか、最初は信頼されていない状態からスタートするも依頼をこなしてく内に、悲しい過去の話とか聞いたりして自分の子供のように扱われて……って奴だと信じて疑わなかった。しかしそれを聞いたマリアは少し声のボリュームを増しこれが冗談でも何でもない事をヒイロに訴えた



「そんな生易しい物じゃありませんよ! その……言ってる事がおかしいんですよ……」


「科学者ってのは少なからずまともじゃ務まらないんだよ!」


「それが……あっちの世界の神様がどうとか……動かなかった足が……とか」



 なるほど、宗教的な……しかもあっちの世界とかかなり色んな所に飛んでしまっているみたいだ……まぁ僕が言えた義理では無いけども。そんな話をしながら開けっ広げになった店内を伺うもこの店の主は留守にしている様だ。武器屋とは言いながらも売りに出されている商品なのか処分間近のガラクタなのかも分からない有様で、ここで待つのも退屈だと感じている時に背後からマリアさんとは別の女性の声がした



「キミら、店に入るか避けるかしてくれないと私が通れないんだが」


「あっ、すみませ……ゲッ……」


「随分とご挨拶だね"異教徒村のお嬢ちゃん"」



 マリアさんの反応を見るにこの人がこの店の主……?想像していた筋骨隆々で白ひげを蓄えた老人では無く、小綺麗に整えられた赤茶けた頭髪を後ろで結い、上背は女性にしては高めだろうか?僕の肩くらいまであるすらっとした見た目だ。ただその目元や肌は不健康そうで、身体も青白くほっそりした印象だった



「へぇ……お兄さん素敵な靴履いてるね?」


「は、はぁ……」


「良かったら私の"靴"も見て行かないかい?」



 靴か……この世界に来てからずっと履いていた物だから気にはしなかったけれど、スニーカーの様な履き心地の良さで悪路も辛さを感じなかった。


 対してこの女性は……



「その……それって鉄の……?」


「良いだろう? まるで"この世界には存在していない文明"の様で……」


「ヒイロ様……早く依頼の件を……」


「あ、あぁそうだった……この素材収集の依頼なんですが……」



 なんとも思わせぶりな口調で話すこの女性に、危うく本来の目的を忘れて話し込んでしまいそうだったが、寸での所でマリアさんが現実に引き戻してくれた。僕らを払い除ける様にして店の中に入って行った女性は依頼という言葉を聞くと、軋む木製の椅子に腰かけながらこちらを見て恨めし気な表情で喋り出した



「なんだ冒険者だったのか? じゃあ早い所お願いするよ、こっちはもう何カ月も待ってるっていうのに……この世界の冒険者とやらはどうも傲慢で良くない、産まれてから五体満足のいく状態で甘やかされて育ったその心根の腐り方が──」



 また何かスイッチを押してしまったらしく、全ての話を聞き終える頃には日も沈んでしまいそうだったので依頼された魔物の狩猟を請け負い足早に街を後にした



「それにしても想像してた以上に個性的というか……」


「だから言ったんですよ、気味悪がられてこんな簡単な依頼すらも数か月待ちなんですから……」


「それはちょっとかわいそうだけど、あの足……」



 フードの付いた布切れに身を包んでいるだけで、とても身なりに気を配っている様には見えなかった彼女にしてはあの歯車で装飾された鉄の靴は少々奇抜すぎるファッションというか……



 どこか自分の生きて来た世界で見たスチームパンクの世界観に似た外装だった



 * * *



 騒々しい人間の去った寂れた店内でシシド=アグリの顔には自然と笑みがこぼれていた


 現代日本で足元は第二の顔と言うが、アグリにとってその言葉はそれ以上の意味を持ち



「私と一緒だ……まだ歩き慣れていない足運び……」


「まるで不慣れな歩行器に支えられて歩く様な危なっかしさ」


「そしてあの"左手に着けていた機械"はきっと……神様から貰った物だ」



「私の足と同じ様に──」



 生まれながらに不自由な足に苦しめられていたシシド=アグリ

 彼女が撫でたこの"緑色の靴"も、またヒーローグッズの一種だった



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