プロローグ 『悪夢』
──私は確かに見た。人が一人、目の前で死んでいく瞬間を。
大瀑布の上空だった。魔法も超能力も何も無いと信じていた世界で、身体が浮いていた。そして、私の近くにも空に浮くニンゲンがいる。
夢という認識は無かった。ただただ、その状態を受け入れるだけだったから。
どこかに飛んでいくニンゲンを私は追いかけた。何があるのかと興味津々でいっぱいで、その後に起こる出来事は予想していなかった。
何かを言い合い、見えない攻撃で傷付くニンゲンがいた。その空気感は、50m以上離れていても、ビリビリと肌に伝わった。
知らない世界で、知らないニンゲン。さらに激しい争いが繰り広げられ、いつの間にか身体が緊張して強張っていた。息の仕方も忘れてしまうほど、次第に一方的な攻撃となっていた。
一人の少女を複数のニンゲンが傷付ける。それは、酷く悲惨な様子で見ていられないものだった。
身体の至る所に切り傷や打撲痕などがあり、服も破けてしまっている。
私はヒーローじゃない。目の前で起こっていることが、現実だとも思えなかった。だから、力尽きて落ちていく少女を追うことも出来なかった。