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和紙売りの少年

作者: しののめなな

感想、評価頂けたのが嬉しくて、2作品目書いてみました!今回も短目のお話となっています。

異国から流れ着いた技法で作られた和紙。

この国には今まで無かったけれど、きっと役に立つ物に違いない。

これは、和紙の可能性を信じて作り、売り続ける一人の少年の物語。


「今日も天気がいいや」


朝から海辺に出て身体を動かす。

そんな少年の日常が、変わるのは一瞬の出来事だった。

海辺に男が倒れていたのだ。


「大変だあ、大変だあ……」


そう叫びながら一緒に助けてくれる人を探す少年。

何とか見つかって海辺に戻るとやはり倒れている男が居る。

自分たちが着るものとはまたちょっと違うような服。

興味はあったが、まずは助けなければと近くの小屋まで運んでいった。


騒ぎを聞いて駆けつけてくれた人の中には着替えを持っている人もいたから、身体を拭きつつ着替えてもらった。

息は穏やかだから、大丈夫だろうとこの小屋で寝かせておくことにした。


少年は見張りをかって出た。

何故かこの人が気になる。

少年は昔から、新しい物事に対する興味が人一倍強かったのだ。


『ここは一体……』


少年はかすれ声を聞き逃さず、飛びつくように近付いて、数多の疑問を投げかけた。

どこから来たのか、何故ここに居るのか、この籠には何が入っているのか……


答える暇のないほど矢継ぎ早に言うが、一通り言った後に、男はゆっくりと答えていった。

その中でも少年の興味を惹いたものは籠の中身だった。


「わあ、すげえや」


少年が目を輝かせて見つめる先には薄い紙とよばれる字を書く為のものだった。

普通は木や石に書く事が多いが、この紙というものは見たことがない。

この紙の事を根掘り葉掘り聞くうちに、気づけば夜が更けていった。


少年は男を連れて帰宅した。

少年は家族に、昨日のことを話した。

少年の家族は、この村で商人をやっている。

その為か、少年と同じくらいに興味津々に話を聞いていた。


「この紙を作ることが出来れば、この村はもっと裕福になるだろう」


何故か、異国から来た男の言葉を理解出来るのは少年だけだった。

その為、まずは少年が紙作りをすすめることになった。


「こ、この木が紙になるのか!?」


紙作りは驚きの連続だった。

そして、時間が非常にかかっていた。

無論、少年はその時間が気にならない程に紙作りに夢中になっていた。


「これが、紙……」


どれほどの日数が経っただろうか、ようやく完成した紙を見て少年は感嘆した。

今まで紙の作り方を教えてくれた男に感謝の意を込めて、その日は家族で宴をした。


その晩、少年は男が紙を広める為に旅をしていた事を知った。

この国にも広まるといいなと二人で夜通し語り合った。


「この紙を、貴族の方々に使って貰えないか」


少年は父親に想いを伝えた。

この紙は作るのに時間がかかるからどうしても高級品として、貴族に使ってもらう必要がある。

父親もそのことは理解したようで、交流のある貴族に売り込んでいくと息巻いていた。


売るとなればたくさん作らなければ。

普段の仕事に加えて紙を作ってくれる仲間を探した。

最初からうまくいくとは思っていなかった。

しかし、実際に作った紙を見せ、少年の熱い想い思いが伝わったのか、人が集まるのは早かった。


紙がある程度安定して作れるようになった時、父親と伴に少年は貴族の方々と会う事となった。

既に、紙を使っていたとのことで、今までの木や石とは違った使い心地の良さを喜んでいた。


「たくさんの人の手間をかけて作り上げました。どうか、この紙を買っていただけないでしょうか」


少年は持参していた紙を差し出し、貴族に伝えた。

少年の想いに応えるように、他の貴族にも宣伝することまで約束してくれた。


特産品があるわけでも無かったこの村に生まれた紙。

その紙はこの村を豊かにした。

忙しくなったが、その分、かえってくるものがある事に充実感を抱く村人が多かった。


この活気がいつまでも続くと良いと思いながら、今日も少年は紙を作り、紙を売っている。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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