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第七話 出口のない街

 輝夜は病院へ見舞いへと向かっていた。

 何せ病弱な父が今回何度目かの入院をしているのだ。

 行きがけに花屋で花を買おうかとも思ったが、近年邪魔となって病院に嫌悪されやすいとも聞く。

 ここは無難にゼリーでも買っていこうかと、コンビニに寄ってから、道へ視線を巡らせはたと気づく。


 道がいつもと違う。

 見覚えのない道になっているので、これはまたいつもの。

 市松で言うところのよくないものが取り憑いたな、と覚悟した。


 輝夜は警戒を深め、道を歩くが何処まで行っても道は風景が変わる覚えもなく。

 ひたすらに代わり映えのない砂漠でも歩いている感覚だった。


 やけに道路が長い、道の先にある子供の三輪車まで遠くいつまでも近づけない。

 道は坂道で上り坂をいつまでも登っている。辿り着かぬならこれはまるで登山だ。

 喉が渇くのでペットボトルを手に、汗を掻き喉をペットボトルの茶で潤す。

 その頃合いに道が変化し、やっとのことで三輪車に辿り着いたので、これはもしかしてペットボトルのお茶がトリガーになっているのだろうかと気づいた。

 病院まで道はまだまだ遠いがお茶を使えば、物の怪から逃げ切れるかもしれない。

 慎重にお茶を飲みながら、輝夜は道を歩いたが、いつまでも通り抜けられぬ。

 お茶を一口少なめに飲む度に、道は進む行為が出来るが飲まぬと進めぬ。

 これでは無限迷路のようだ。


 歩いてるうちに、周りが赤く歪んでいく。

 通りすがりの人々が怪しく笑いさざめく。

 やけに此方を見て「うまそうだ」とにやけつづけてる人らしき存在達。


 これは化かされたな。

 お茶が尽きるときが怖い、お茶が尽きれば目には映らない妖しの物が一斉に襲い掛かってくる気がする。


 いよいよまずいなと気づいた時、携帯のベルが鳴る。

 携帯に出ればそこには気易い声、市松の声だ。


『先生、貴方事務所の鍵開けっぱなしでしたのよ? とおっても危ない』


 市松と電話しながらであれば、道はするすると進む行為ができた。

 現実に関わる何かと触れればこの迷路から抜け出せそうだ。

 輝夜は市松に悟られないように話を引き延ばしながら、携帯に耳を当てやっとの思いで病院に辿り着く。


『先生今日は随分構ってくださるのね』

「少しな厄介な目に遭っていたのだよ」

『ほんと先生は世話が焼けちゃう。何かあったときは、また電話くださいね』

「大丈夫だろう、多分。きっと今の時間だけだったんだ、もう病院にも着いたしな」

『まったく先生は人を自ら頼ろうとしないんだから』


 病院に辿り着けば、妖しい空気も人々も消え、いつもの雑踏とした音や雑音が響く。

 市松の言葉に輝夜はそれはそうかもしれないと、輝夜は通話の切るボタンを押せばいつもの日常が戻った。


 手元のビニール袋に入ったゼリーはすっかり温めになってしまった。

 ゼリー自身によくないものを感じるので、ゼリーは買い直し、帰り道に寄ったコンビニの道を見れば空き店舗となっていた。


 白昼夢には気をつけようと思ったのに、と輝夜は瞬いた。




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