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第六十二話 僕は恥ずかしがりだから、もう会わないよ。




 元の世界へ戻ってくれば八ヶ月も経っていた、今はあと少しで吉野がいつも神域から帰還してくる季節になっていて。あっという間に夏を見れなかった。

 父親の様子が気になった輝夜は、父親と面会してから向かうことを市松に約束し。次の日、病院の内庭で市松は待ち。輝夜は病室に向かう。

 父親はすっかりこけていて、誰か様の纏わり付く人数は増えていた。室内に白い子供があふれかえって愉しげに笑っている。


「父さん、私、月夜村に行ってくるよ」


 娘からの言葉に父親は驚くと、一気に悲しげな顔をした。


「駄目だやめなさい。あの村には、母さんがいる」

「母さんは死んだんじゃないの?」

「死んだからこそいるんだよ……あの村は死者との境目の村だ。今年が終われば母さんもいなくなる期間だ。お前のことだ、母さんと会ったら居残るだろう」

「……その結果死んでしまうって? とんでもない、今の私は……きっと大丈夫。もっと、もっと大事なものもある。親戚の子をほっとくわけにもいかないし」

「親戚……?」

「先に月夜村に行った知り合いから、私の従姉妹が虐待を受けているって連絡があってな。引き取りに行きたい」

「……輝夜、一つだけ約束してくれ。絶対に振り返ってはいけないよ」


 翁からの言葉に輝夜は頷き、差し入れのプリンが冷えた頃合いに父親へ食べさせた。

 内庭に戻ればちょうど御門が市松と鉢合わせした状態で、自分も御門に見つかる。

 御門は記憶を覗いたのか、目を鋭くし、嘆息を少しだけついた。


「いいよ、おじさんのことは任せていってこい。それで僕の心を取り戻してくれたお礼はチャラだ」

「君からはちゃんと対価は貰っていただろう」

「気持ち的な話だよ、たった二人で向かわせたのは変わりない。輝夜姉を頼みましたよ、月に帰らせないように」



 御門の言葉に、市松は今こそが向かい合うときなのだと示された気がした。

 輝夜に対してねじ曲がった元凶になった罪を償うときなのだと。市松は緩やかに微苦笑すれば、頷き努力しますと告げ。二人は月夜村へ旅立つ。


 誰か様は、その間二人をずっとずっと監視していた。

 子供特有の笑い声をひっそり沈めて。



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