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第五十一話 人面犬カフェ

 兎のふれあいコーナーがある動物園を探した。

 兎に触れるならばカフェでは駄目だ、もしかしたら劣悪な環境かも知れないし、ストレスがかかっている可能性が過ってしまう。

 だとしたら飼育のプロがいる動物園からの、ふれあいコーナーが確実だ。

 ジェイデンは暇を見つけとうとう動物園に一人でこそこそと向かうと、朝の一番に開園しょっぱなからふれあいコーナーへ向かってしっかりと堪能することとした。


 ジェイデンは見た目はいかつくちゃらいうえに、粗野ではあるがどうしてもふわふわした生き物が好きではあった。

 犬から猫、兎、ハムスターまでなんでもござれだ。

 兎のふれあいコーナーでしっかり堪能してから幸せ心地で、ふいに非通知でかかってきた通話に無関心ながら出る。

 すると、きゃん!!!っと愛らしい鳴き声が聞こえ、一気にジェイデンは鼻水が吹いた。


「犬のこえ!?」

『ちがう、僕だ。桃だ』

「お前いつから犬になってんの?! ぽ、ポメラニアンかよしかも!!」

『ちょっと事情があってな』


 前足でかりかりするポメラニアンに、一気にジェイデンは胸を打たれ、もふりたい気持ちで締め付けられぎりぎりと歯ぎしりをする。

 桃のことは好きでも嫌いでもなかったが、ポメラニアンになっているならば話は別だ。

 ジェイデンは萌え悶え、変な笑みが出そうになるのをぎりぎりで堪える。


『お前は輝夜の村について詳しいだろ、吉野さんから聞いた気がする』

「まあな、情報源が身近にいるもんで」

『乙姫って輝夜の身内に存在するのか?』

「ああ、いるぞ。佐幸乙姫。輝夜の従姉妹にあたる。お袋さんの妹の子だ」

『なるほど……だとしたら、むむむ……なかなか複雑なことに』

「あ!!!! な、なあ動画撮って良いか……?」

『何を言ってるんだ、気色悪いこというな』


 ううううう、と唸るポメラニアンにでさえジェイデンはときめき、ひたすら可愛い仕草を十個集めましたというようなテレビ通話にひたすら胸がやられる。

 もともと桃は愛される仕草を天才的に自然にする行為がうまいため、違和感も無く。

 なんて小動物に向いた性格や動作なんだ、とひたすら感心するジェイデンだ。


『また電話する』

「ば、番号登録しておくな!! いつでもかけてくれっていうか、またかけていい!?」

『きもちわるいなお前ほんとう!!』


 きゃんきゃんきゃん!! と吠える桃を最後に通話は切れ、ジェイデンは一気にドッグカフェへ行きたくなった。

 しかしドッグカフェを幾つ巡っても、桃ほど天才的に可愛い仕草の似合う犬はおらず。

 どこか物足りない気持ちになる。


 変わった店構えのドッグカフェを見つけ、最後にココへ入ったらあとは諦めようと勢いづけて中へ入ると、中は人面犬に溢れていた。


「ひえっ」


 一気に心臓が悪い意味できゅっと縮んだジェイデンは人面犬カフェから出て行きたくなったが、鍵が閉ざされ開かない。

 そうしてる間に人面犬のスタッフがやってきて営業をされる。

 可愛い女の子でもなく、眼鏡のバーコード頭なおじさんの人面犬だった。


「いらっしゃいませ、此方へご案内しまあす」

「い、いやだあああ!!」

「ふふ、お客様だってお好きなく・せ・に」

「てめえええええ!!!! ぞっとするんだよおおお、裏声使うな!」


 人間だったらビール腹の似合いそうな眼鏡人面犬は、ジェイデンを席へ案内すると店で一番でかい土佐犬の人面犬を連れてくる。

 土佐犬の人面犬はアフロの紫髪をしたおばさんで、口紅が濃かった。


「まあまあまあ、いらっしゃいませお客様」

「濃いのしかいねえな、この店!?」

「ふふ、嫌がらないでえ、恥ずかしいのね坊や。嫌がるのも最初だけよ、そのうち虜になるわ……」

「いやああああ、近寄るなあああ!!!」

「んっふん、可愛らしい……うぶなのねッ沢山よしよししまちょうねえ」

「汚されるーーーー!!!!」


 沢山人面犬から営業を受けたジェイデンは、しばらく桃からの電話が再びくるまでは、犬が苦手になったらしい。

 輝夜のもとへしつこく押しかけ、暫くは桃への電話のかけ方を習おうとした。



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