謝るしかない
「な、なにをしてるんですか!」
さっきまでこちらを一切見ていなかった店員さんがこちらに駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか?」
そうして白鷹さんの顔に保冷剤を当てた。
「あ、ありがとうございます……」
白鷹さんが弱々しくお礼を言うと、店員さんは顔を赤らめた。
「な、なんで……?さっきまで騒がしくしてもちっとも気にかけられなかったのに……」
私が呟くと、白鷹さんはニヤッと笑って、小声で「存在感を元に戻しました。」と言った。
「くそっ……チクショー!」
私が地面に拳を打ち付けると、店員さんは私がまた暴力を振るうと思ったらしく、携帯を取り出し始めた。
「け、警察呼びます!」
「いや、ま、待って!確かに申し訳ない事したけど!でも、ご、誤解がちょっとあると思うんです!」
私が言い訳をすると、すかさず白鷹さんが弱々しそうな顔になった。
「て、店員さん……警察、読んでください……」
「言い訳なんて聞きません!絶対に呼びます!」
「店員さん、イケメンに弱すぎない?」
店員さんは厳しい顔で携帯を耳に当てた。
「もう……おしまいだ……」
私はこれからの自分の暗い生活を思って絶望した。
「青春……したかったなぁ……」
急に、白鷹さんがパチン、と指を鳴らした。
「へっ?」
ぽかんとする私に、白鷹さんは諭すような口調で言う。
「今、時間を止めましたー。ぼくを殴った事、申し訳ないと思いますかー?」
「お、思います!思います!」
私が必死に叫ぶと、白鷹さんは優しい顔で笑う。
「では、ここにサインをしてくれれば、あの店員さんの記憶から、この出来事を消しますよ。」
それはあの契約書だった。
私は、藁にもすがる思いで渡された羽ペンで自分の名前を書いた。
読んでくださってありがとうございますー(=´∀`)