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第73話 町の避難と子ども達

 あれから子ども達を連れて再度歩き出し、日は落ちてしまったが、まだ町が活気ある時間帯に到着する事ができた。

 町に着くなり早速ギルドへ向かい、子ども達についての事情を説明した。


 どうやら一緒に行動した冒険者達は最初に僕と別れた後、このギルドに僕が伝えた情報を報告し、再び山へ向かった様だった。

 そのため、ある程度は状況を把握してくれており、僕は山に入ってからの事から話す事にした。


 沢山いたリザードマンやトカゲ達、そしてそれを束ねていた色竜の事。

 証拠として僕は魔法具の中に入れていた灰竜の頭を取り出した。

 頭を出した瞬間、周りにいた冒険者達は驚き、ギルド職員も緊張しながら慎重に灰竜の頭を確認しだした。


「……おい坊主……お前、それを一人で倒したのか?」


 強面の冒険者が恐る恐る僕に尋ねてくる。


「ええ、皆さんと離れた後、この灰竜が襲ってきたので、何とか倒しました」


 そう言うと、周りにいた冒険者達や、ギルドの職員達が更に驚いた顔をして僕を見ている。

 そう言えば、ワイバーンを1体倒すのに兵が10人必要で、色竜の場合は1,000人いても倒せるかどうかって言ってたな。

 灰竜のブレス攻撃は確かに強力だった。当たれば石になるブレスなんて、連発でもされたら1,000人なんて簡単に石にされてしまうだろうしね。


 そんな風にさっきの戦いを回想していると、先ほど灰竜の頭を鑑定してくれていた職員が戻ってきた。


「こちらの竜の頭の鑑定が終わりました……結果は本物の灰竜でした……まさか本当に色竜の一部をこの目で見れるとは……」


 そんな報告を貰った後、僕は頭を返しえ貰った。一応何かの素材になる可能性があるため、帝都にある何れかの武器屋に預ける予定だ。


「ありがとうございました。じゃあ最後にカードの更新をしておきますね?」


 僕はギルドであれば何所の支部にも置いてある更新用の魔法具にカードを翳した。

 以前ヤンホーさんが言っていたが、ギルド内にも極秘の資料とかを保管しているとの事だ。

 帝国の城の中の資料室にはあれ以上の本はないため、他の場所の資料もいろいろ確認したいし。

 その為にはランクを上げないといけないけど、今回の戦いで灰竜を倒したんだ。恐らく1ランクぐらいは上がってるんじゃないかな?


「さてさて……今回はどうかな?」


 しばらくすると魔法具から光が止み、僕はカードを取り出した。

 そこにはⅣだったランクが、一気に2段上のⅥにまで上がっていた。


「Ⅵか。もうそろそろ上級の仲間入りかな?」


 そんな僕の呟きを聞いていた冒険者達が、再びぞわぞわしだした。


「お前、灰竜を倒せるぐらいの力があるのに、まだⅥなのか!?」

「マジかよ? しかもコイツ、俺達が来るまで一人で多くのリザード種を倒してたんだぜ?」

「信じられない……」

「僕は冒険者になって半年ぐらいですよ? 訳あって討伐系のばかりしている状態ですけど」


 以前お世話になったラケーテン旅団ザックさん達が言っていたが、ランク=強さではなく信用度らしい。

 しかし、強ければ強いほどランクが上がりやすい事には間違いなく、約半年でⅥにまでなった僕はとんでもない新人扱いなのだろう。

 その事が分かったのか、このフロアにいた全員が少し納得した表情になった。


「さて、僕は明日にでも帝都に向かいます。皆さんはどうします? 帝都にあのリザードの群れが向かうと思われますが、どちらに逃げます?」


 この町は帝都へ向かう途中にある町だ。故にあの色竜達の進行が始まったら、恐らくこの町は滅ぼされ、残っている人達は全員餌にされる。


「はい。この町の住人達にはお昼の間に魔物の群れがこの町に来る事を伝えています。

 今此処に残ってくれている冒険者さん達が護衛として、明日のお昼頃に一緒に避難する事になっています。

 場所については、本当にリザード達が帝都に向かうというのであれば、南西の方角にある第2都市【アゼル】の方へ向かいます」


 一応僕は本当に竜達が帝都に向かうことを直接教えてもらったが、信じるわけがないよね?

 竜に直接聞いたとか言った場合、また空気がおかしくなると思ったので、僕はその事は帝都にいるお偉いさんだけに言おうと決めた。


「わかりました。ところで、子ども達は……」


 僕がそう言うと、ギルドの受付の奥にいた偉そうな人がこちらに近づいてきた。


「お前が、リザード達と灰竜を倒し、子ども達を救ってくれた勇者か?」

「ええ、まあ。勇者かどうかは別として僕ですけど、貴方は?」

「先までお前が持ってきた灰竜の頭を調べていた人間だ。一応このギルドで一番偉い人間だな」

「つまりギルドマスター?」

「そうだ。名前はマスターと呼べばそれでいい。っで、子ども達だったな。

 今全員寝ているぞ。流石に山の中腹で泣き叫んで、それから此処まで歩いて来たんだ。飯を用意したが、食わずに眠っちまったよ」


 そうか。もう眠っちゃたのか。でもよかった。


「あの、一番酷い怪我をしていた子は?」

「あの子も今は眠っている。しかし、流石に左手足を無くしたんんだ。しかも両親も恐らくいないんだろ? この先どうするか……」


 確かにあの子の未来は暗すぎる。両親は恐らくあの時食べられている筈だし、本人は身寄りのない子になる。

 しかも手足が無い状態だ。ろくな未来が待っていない事は想像しやすい。


「ちなみにですけど、手足を再生できる術ってあるんです?」

「あるにはある。が、この非常時だ。恐らく難しいだろう」


 ここはテンプレ通りか。よく体が傷ついた女性を助けた事でその人に惚れらる漫画とか小説を読んでたから、もしかしてと思ったけど……


「まず1つは帝都にある再生薬を服用する事だ。かなり高価な薬で数もあまりない様だから一般人にまでには出回らないな。

 しかも金もない子どもに服用するのが目的となると、ほぼ無理と言ってもいいと過言ではない」

「確かに。しかも今から戦が始まるので、そんな貴重な薬は戦う人優先に使いますよね」

「もう1つが再生魔法だ。この魔法は王国にいる【聖女】様が扱えるらしい。本当かどうかの情報は未確定だから何とも言えんがな。

 しかし遠い。王国の王都までこっから1カ月半は掛かる。その間の護衛費とかはバカにならないからな。やはり無理だろう」


 なんと、こんな場所であの【聖女】さんの話を聞けるとは……

 しかもご都合主義の様に再生魔法を扱えるなんて。本当に伝承に残る【聖女】のようだ。


 ――どの道僕は一度王国に戻る予定だった。ならば用事が少し増えても問題ないよね?

 それにあの子があんな目にあったのも、僕の力が及ばなかったからだし、少しは罪滅ぼしになるかな?


「じゃあ、このゴタゴタが終わったら、僕があの子を王国まで連れて行きますよ。あんな状態になったのは僕の責任でもありますし……」


 そう言うと、ギルドマスターは僕の両肩を掴んだ。


「止めとけ。あの子があんな姿になったのはお前のせいじゃない。運が悪かっただけだ。

 それに、この先同じような状況になった場合、お前はそいつら全員を助けるつもりか?」

「いや、しかし――」

「助けた後はどうする? お前がずっと面倒を見るのか? それとも、あの子が元の姿に戻れたとして、それでお終いか?

 もしお前が、あの子が守れなかったからとかいう罪滅ぼしの感情で動こうとするのであれば、ただの自己満足だぞ?」


 そう言われ、僕はハッとした。

 確かにそうだ。僕は自分の力が及ばなかった罪を、あの子を元に戻すという事で許されようとしていたようだ。


「もし、明確な理由で助けたいというのであれば、俺は止めん。あの子の親代わりになるとか、あの子を嫁に貰うとかな。

 そうじゃなく、自分の都合の為というのであれば、それ相応の理由を付けろ。そして最後まで面倒を見れるように考えるんだな」


 そう言ってギルドマスターは僕の肩から手を離し、奥へと消えて行った。

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