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第56話 VS邪神軍③/召喚者達の魔法

 ――対策本部――


「残りの魔物の数はどうか!」

「現在確認中――出ました! 55万程です!」

「わかった――離脱者はどうか!」

「現在2万人程! その内死者が6,000名、残りは現在医療テントに搬送されておりますが、回復までまだ時間が掛かります!」


 対策本部で怒涛の如く降ってくる伝令を聞きながら、ファージンとダンフォードは次なる作戦を考えていた。

 現在開戦からもう少しで1時間となるが、その被害数に頭を抱えていた。


「ダンフォード騎士団長。今の離脱者数は多いのか?」

「普通なら撤退を進言するレベルです。しかし、こちらの数はまだ38万程おります。一応は想定の範囲内ではあります。少々速すぎますけどな」


 現在魔法使いと【闘神】光、そして途中から参戦した【勇者】栄治と【戦乙女】小音子のおかげで何とか耐えている状態だった。

 その光と栄治、小音子は最初の30分程戦い周りの士気を多いに上げ、来るべき強大な敵の為にいったん下がっている状態である。

 そこからの一般兵と魔物の戦いはすさまじく、一進一退の攻防が続けられているのであった。


「魔法使いの魔力はどうか!」

「もう30分程時間を頂ければ、大技の魔法を撃てるとウルス様から伝言を預かっております」


 魔法使い達は最初に魔法を放った時、自信が考えられる最高の魔法を最初に討つように命令されていた。

 最初から一気に大きく数を減らすためである。

 その為、魔力回復に時間が掛かり、まだ第2射を放てずにいたのである。


「伝令!」

「どうした!?」

「ハッ! 勇者様一行である【賢者】タダシ殿、【精霊魔術師】リリカ殿【魔導士】カオリ殿から出撃の要請が出ております!」

「何? どういう事か?」


 勇者一行の後衛である3人は、実は最初の魔法一斉射に参加していなかった。

 それは切り札的扱いであるため、まだ戦いの序盤戦での投入を控えられたのである。


「なんでも、前線の魔物どもの質が上がったらしく、1体を倒すのに時間を有しているそうです」

「何? ということは、低位ではなく、中位の魔物の出てきているという事か?」

「はい――そのため、速やかに排除するためと、本人たちから広域魔法の試し打ちをしたいとの要望です」


 それを聞き、ファージンは考えた。彼らの扱いは切り札であるが、どれくらいの性能を有しているのかはあまり情報がない。

 そのため、一時的でも戦線に出し、情報を確認後、再び出すべきタイミングまで休ませる方がいいだろうと決断した。


「よし、いいだろう。3人に伝えろ。最前線の魔物ではなく、その後ろ辺りに控えている魔物を狙って攻撃しろとな」

「ハッ! 畏まりました」


 ***


「タダシ殿、リリカ殿、カオリ殿、出番です。ご武運を」


 そう言って、ウルスさんは後方にいる魔法部隊まで戻っていった。


「さて、既にお二人は聞いていると思いますが、前線では栄治さんや光さん、小音子さんがかなり活躍されたそうです。今度は私達の番ですね」


 そう言って、正さんは私と凜々花さんの手をぎゅっと握ってくれた。

 私達は今回がこの戦争での初戦闘になる。流石にあの数の魔物を見ると、緊張が止まらない状態だい。

 だからこうして手を握ってくれるのは本当に嬉しい。


「あたしも精霊契約は上手くいってるし、大掛かりな魔法も問題なく撃てますよ」


 凜々花さんはやる気一杯だ。どうやら出撃前に栄治さんと会ってお話したことで、少し緊張を誤魔化せたらしい。


「では早速始めましょうか。2人とも、準備はいいですか?」


 私と凜々花さんは頷き、呪文の詠唱を始めた。


『わが手に集まりし魔力よ。戒めの鎖となり、我が敵の動きを封じよ――【ギガバインド】――』

『集まれ冷気よ! 広大な大地にその礫を堕とさん!――【アイスメテオフォール】――』

『お願い精霊たち――我が魔力を糧に成長せよ――【ウッドスピアー】――』


 私達の魔法が発動し、前線より後方の敵に襲い掛かる。

 正さんの魔法は魔力で出来た鎖を使ったバインド魔法。といってもただ拘束するのではなく、鎖で締め上げ相手をギュって絞って圧死させるえげつない魔法だ。

 それがとんでもない範囲で展開され、一気に数百、数千の魔物が締め上げられて息絶えた。


 私の魔法は先程魔法部隊の人達が行ってたメテオ魔法の氷バージョン。

 本当は水系の魔法が得意なんだけど、海の魔物相手に水魔法は意味がないと思い、物理的に攻撃ができる氷に切り替えた。

 結構な魔力を使ったので、大きな家ぐらいの大きさの氷塊が10個程でき、一気に魔物達を潰していった。


 凜々花さんの魔法は、魔物の群れの下から沢山の木の杭を出現させ、串刺しにするという、結構えぐい魔法だ。

 数万本の木の杭がいきなり魔物下から生え、一気に空高く串刺しにされた魔物。これだけで数千体以上の魔物を倒している事がわかる。


 私は少し多めに魔力を使ったため、一旦休憩するけど、正さんはさらに呪文の詠唱を始めていた。

 やっぱり正さんは凄い。本来拘束系の魔法って相手を倒すまでには至らないと勉強したけど、その締め付けの強さや、締め付ける物を具現化することにより、相手を倒すことに成功している。

 しかも詠唱をしているため、魔力消費も恐らくそこまでなく、2回目の魔法を終わらせると、更に3回目の魔法の準備まで始めていた。


 やっぱりこの世界の主人公は正さんで正解だと思う。王道の魔法ではなく、不遇な魔法でこれだけ戦えるのだ。

 よく見る不遇系主人公に通じるものがあると思ったけど、私の考えは間違っていなかったんだと改めて実感した。


 ちなみに、凜々花さんは精霊魔法を使っているため、魔力の消費もそこまでないのか魔法を連発している。

 私もそろそろ休憩を終わらせ、再びアイスメテオフォールを放つ準備を始めた。


 ***


 それは援護攻撃にしては、妙に迫力があり過ぎる光景であった。

 縦横無尽に走る鎖。数百匹を一気にまとめ上げては、一気に絞め殺し、また新たな得物を求めて戦場を走り回る。


 一方では地面から鋭い木が急に現れ、魔物の串刺しを量産していく。


 更にいろいろな場所に降り注ぐ特大の氷塊。ゆうに家一戸分の大きさの氷が、群れのあちこちに降り注ぎ、何百、何千の魔物達を潰していく。


 この3つの攻撃にて、魔物が一気に魔物が7万程減った。

 たった3人の攻撃で7万の魔物が減ったのである。


 その衝撃的な攻撃を見た兵達は、改めて勇者一行の凄さを再認識した。


 ――己の肉体を弾丸の様に使い、兵達を鼓舞しながら戦う【闘神】――

 ――剣術と魔法を使い分け、更に周りの兵達を回復しながら戦う【勇者】――

 ――【勇者】に付き添い、その小さな体で何体もの魔物を葬る【戦乙女】――

 ――巨大な鎖を具現化し、敵の足止めと止めを同時に行う【賢者】――

 ――空から幾つもの氷塊を堕とし続ける【魔導士】――

 ――精霊の力を使い、敵を串刺しにして数を減らしている【精霊魔術師】――


 更に後方には傷ついた兵隊の回復を任されている【聖女】がいる。

 この戦争は勝てるかもしれない。そう兵士たちは感じ取り、その力は1人1人のパワーアップも促した。

 士気が高い兵は強い。昔から言われている常識である。兵達は歴史に載る英雄と肩を並べて戦っている。そう思うだけで力で湧いてきた。

 1人、また1人が魔物を倒していき、このまま順調に事が進むと思っていたその時、奴らが突然進行スピードを上げ、前線へとやってきた。


「報告! 最前線付近にクラーケン、シードラゴン、そして大海魔が現れました!」


 1体の力が数千人分とも数万人分ともいわれている最高位の魔物。それが3体も現れたのだ。

 その事実に、再び士気が下がる。味方は数十万。犠牲を考えずに戦えば勝てる可能性はある。

 しかし、誰が好んで犠牲になりたいと思うだろうか。しかし、英雄たちは違った――


「俺の相手はこいつか? 栄治さんはドラゴンの方に行っちゃったし、小音子ちゃんも海坊主みたいな奴のところかな?」


【闘神】光は自身の装備品である籠手をギュっと握り、クラーケンに向けて構えを取った。


「くそ! まさか3体も出てくるとは、早めにこのドラゴンを倒して、どちらかの援護に行かないと」


【勇者】栄治は盾を装備している左手に魔力を込め、剣先をシードラゴンに向けた。


「――邪魔」


【戦乙女】小音子は一言呟き、大海魔の頭を潰すべく跳躍をした。


 3人がそれぞれの魔物に向けて攻撃を開始したその時、この戦争の序盤は終わり、中盤戦に移行するのであった。

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