第47話 全てを切る力
明けましておめでとうございます。今年1発目の更新です。
去年から評価を付けてくれた方々、ブックマークを付けてくれた皆様、本当にありがとうございます。
今年の目標はこの作品を完結まで更新すること。そして多くの皆様に読んでいただく事です。
それでは、今年もできる限り毎日更新を目指しますので、お付き合いをよろしくお願いいします。
――職業【剣使】――
今まではただ単に僕が持っている剣であれば、どんなものでも切れてしまうという認識だった。
一応試しにクルルが持っている剣や、その他の剣でも実験をしてみた。
その結果、剣の形状をした得物であれば、ナイフだろうが大剣だろうが、最悪槍の矛先を剣の様に扱うという場合でも、全てを切ることが出来た。
剣に至っては、刃毀れが酷い剣でも、錆びついてボロボロの剣でも、問題なくいろいろの物が切れた。
ただし、刃毀れがある剣やボロボロの剣の場合、2~3回物を切ると、持っている剣も折れてしまうので、武器は何でもいいという訳ではない。
切れる物は木や岩、鉄、鋼、上位の魔物の皮や骨や爪等が切れた。
この中には人が鍛えた剣や鎧、盾も含まれ、何度も切断しては協力してくれたラケーテン旅団や金精院の方々に何度も謝った。
この職業の力は強力だ。剣を持っているだけで何でも切れてしまい、更に僕には神様から頂いた身体強化の恩恵まである。
近接戦闘だけで言えば、僕は防御の構えをしていて、相手が剣で攻撃してきた際、ガードをするだけで相手の剣が切れる。
無防備になったところに止めを刺す。または、適当に相手に襲い掛かり、相手がガードをしてきたところを、そのまま剣ごと全て切断したらいいのだ。
恐ろしいほどのチート能力である。
――しかし、あくまでこれは近接戦闘のみの話だ。僕には遠距離攻撃手段は投擲術があるが、逆に遠距離からの防御が疎かになりがちだ。
投げナイフや投げやり、弓等の物理攻撃であれば、頂いた身体強化の力で動体視力を底上げし、避けるなり払うなりはできるが、魔法だと避けるしかない。
初陣の際のゴトーさん達の魔法を見た。敵陣に襲いかかる炎と風。あれが僕に迫ってきたと思うと――
避けれる事は可能であろう。しかし、周りに味方がいた場合は、見殺しになってしまう恐れもある。
それに、相手が魔法を連射してきた場合、何時までも避けれるとは限らない。
そこで僕は思ってしまった。魔法って切れないのかと――
実は、以前僕はクルルが寝ている隙に、一人で実験をして事がある。
それは、火が出る魔法道具の火を切れるか、水が出る魔法道具の水を切れるかという実験だ。
結果としては、切れたと思いたい。単に風圧とか、剣が通った場所だけ一時的に消えたとかの可能性もある。
――だから僕はお願いをしてみた。自分に魔法を撃ってほしいと……
「ナガヨシ大丈夫? 皇帝陛下とのお話で疲れちゃった? ちょっと休む?」
「ナガヨシ君正気? もしかして、ナガヨシ君ってマz「僕はSですよ?」……普通即答で言うかなそれ? 変な子ね」
エクレール姉妹のクルルとマリア―ナは、僕に口撃してきた。
とりあえず、2人には僕の考えと、改めての実験方法を説明した。
考えというのは僕の職業の可能性について。今までなんでも切れてきたから、もしかしたら魔法も切れるんじゃないかの実験に付き合ってほしい事。
実験方法は、何も直接僕に魔法を当てる必要はない。
僕が考えて実験方法は野球のバッターである。僕は剣を構える。魔法を使う人が僕の真横に魔法を放つ。僕が当てて切る。これだけだ。
それだと、相手側のミスが無い限りはかなり安全に実験ができる環境だと思う。
その事を説明すると、なんとかマリア―ナさんから実験に付き合ってくれる許可を得れた。
「ていうか、本当に魔法を切れるの? 聞いた事ないけど?」
「さぁ? 実際に試してみないとわからないからね。果たして僕のこの【剣使】は、どれだけの物を切れるんだろうね?」
そんな風にクルルと話していると、20メートルぐらい離れた場所にいるマリア―ナさん達から、準備が整ったと合図が来た。
1番手はフィアさん。先ほど見せてくれた氷の弾丸を放つための呪文が聞こえてきた。
『わが手に集いし氷の礫よ。我が意を汲み取り我が敵を穿て――【アイスブリット】――』
氷の弾丸が僕に迫る。実際には僕の斜め後ろのキャッチャーがいる当たりに的があり、その的目掛けて魔法が迫る。
僕は剣を構え、迫りくる氷の魔法を見た。何故かいろいろわかってしまう。
この魔法が的の中心へ的確に向かっている事。あと1秒にも掛からず的に当たる事が何故かわかってしまう。
――斬――
僕は氷の弾丸が僕の真横に来た瞬間に剣を振るった。
僕が振った剣は、ちょうど氷の弾丸の真ん中あたりにぶつかり、氷の弾丸を真っ二つにした。
真っ二つにされた氷は、的には当たらず、それぞれ的の脇を通過して後ろの壁にぶつかった。
「切れたね」
僕がそう呟くと、クルルが冷静にツッコミを入れた。
「うん、切れたけど、よく考えたら氷って石とかと変わらなくない?」
確かに。高速で飛んでくる氷を切っただけだ。そうなると別の魔法で試さないといけないね。
「じゃあ他の魔法を試してみようか。この場合は炎とか風とか雷とかかな?」
「う~ん――それか範囲攻撃とか?氷魔法だったら吹雪みたいな魔法があったと思うし――」
そんな風に話していると、マリア―ナさん達がこっちに来た。
「いや、普通切れないからね? 魔法使いが放った氷って普通の氷とは違うんだから」
そう呆れながらマリア―ナさんがツッコんできた。
「まさか~私の魔法が切られるなんて~凄いですね~」
フィアさんがおっとりした口調で言っているが、その表情はかなり吃驚した表情をしていた。
詳しく聞くと、魔法で出来た氷や土、炎などは、魔力で出来ているため、通常の物とは根本的に造りが違うらしい。
そのため、例えば魔力で出来た氷を解かすには、魔力の炎で溶かすか、その氷を作った際の魔力が無くなるまで待つしかないとの事だ。
炎とかも同じで、魔法使いから放たれた炎は、魔力の水を掛けるか、魔力が無くなるまで待つしかなし。
一応魔法の炎は、草とかに燃え広がると、それは何故か魔力の炎ではなく、自然の炎となって通常の水でも消せるらしい。何故かは不明との事だ。
「わかったかしら? ていうかクルル? あなた、これぐらいの知識は家を出る前に習った筈よ?」
「――えっと……ウン、シッテッタ。オボエテタヨオネエチャン」
これは完全に忘れているな。目が物凄い勢いで泳いでいる。顔から汗もダラダラかいているし。
「ハァ――帰ったらまた勉強会ね。いいクルル? 絶対に逃げない事ね? 逃げたらお父様にも報告するから」
「絶対に逃げません! ナガヨシと一緒に勉強会に参加します!」
「えぇ!? 僕も参加なの!?」
まさかの道ずれ!? でも勉強会事態は必要だと思うから、なんとも言えない感情がこみ上げてくるな、これ。
「さて、だいたいの事はわかったので、実験の続きをしましょう」
そう言ってマリア―ナさん達は元の場所まで移動した。
それから、リオさんから特大な炎の玉や火炎放射の様な魔法、更に炎の壁の魔法を僕に向かって放ってきた。
それらを全て切り裂くと、炎の玉と壁は切った瞬間に消え、火炎放射は切った瞬間は消えるが、継続して炎が迫って来るので切り続けた。
リオさんは最初はノリノリで僕を狙って来たが、自分の魔法がどんどん切られるので、最後は涙目になりながらムキになって魔法を浴びせてきた。
最終的に全てを切り裂いた時には、「ヒック――なんだよぉ――お前なんか嫌いだよぉ――グスッ――」と泣きながら責めてきた。ちょっとボーイッシュな可愛い人が上目遣いで泣いている姿はグッとくるものがあるね。クルルの視線が怖いけど。
クリスタさんも同じようにいろいろな魔法を試してもらったが、全て切り裂く事が出来た。しかし、リオさんとは違い大人な対応をして「凄いですね」と言って僕の頭を撫でた。クルルの視線が更に怖くなった。
そして――
「じゃあ行くわよ? 雷魔法を切り裂く事が出来るかしら?」
僕はマリア―ナさんと対峙している。マリア―ナさんの体の周りからは雷の玉が複数個浮いている。
今までの実験での結果、雷魔法も切れると思うけど、その速さが厄介だ。
果たして雷の軌道を最初から最後までしっかりと見れる人っているのだろうか?
雷の速さは人が認識できる速さを超えている。正直防ぐ方法はないと思う。
だから僕は提案した。模擬戦をしたいと――
実践形式で戦い、その速さと威力を体感する。マリアーナさんは魔法部隊の元副隊長だ。相手のとって不足はない。むしろ僕の方が弱い。
マリアーナさんは最初は難色を示したが、僕が勇者一行の一人と言ったところ、仕方がないという風に受け入れてくれた。
僕とマリアーナさんはそれぞれ約20メートルぐらい離れて対峙した。審判はクリスタさんがしてくれる。
「二人とも準備はいいですか? ――それでは、始め!」
その言葉を聞き、僕は後方に急いで下がり、マリアーナさんはそんな僕を見て雷の玉を投げつけた。
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