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間章③ 高嶺の花と付き合えました(中編)

「いや、お互い名前で呼び合ってんじゃん。それで付き合ってないとか無理があるくない?」

 そう竹内さんは言い出した。

 確かに御互いを下の名前で言い合ってるって、僕達のお年頃の場合は、付き合ってると勘繰られてもおかしくないのか。


「しかもみなもってば大胆にこんなところで抱き着くなんて。普段なら考えられないよ?」

 そう竹内さんじゃない眼鏡をかけている先輩(後で聞いたが前田恵梨香さんというらしい)に指摘された。


「てかみなもって独占欲強すぎ。ただ下の名前で呼ぶだけじゃん。友達とかでも呼んでるでしょ?それが異性になるだけだよ」

 今度は別の短髪の先輩(三村美羽さんというらしい)が指摘した。


「う~――でも……」

「僕はみなもの意見に従います。だってみなもがこんなに嫌がってるんだし。人が嫌がることはしちゃダメだからね」

「――ありがとう、なーくん! 流石だね!」

 何が流石かわかりません。


 そんな風に騒いでいると、僕達のやり取りをした男の上級生が話しかけてきた。

 ていうか、どうやら残っているクラスの人全員が僕達のやり取りを見ていたらしい。


「おい、月代。こいつ誰だ?」

「え? 友達だけど?」

「いや、抱き着いてたし、ただの友達じゃないだろ?」

「いえ? 仲の良い普通な友達だよ?」


 その後もその先輩はしつこく質問をしてきたが、それを全てみなもは暖簾に腕押し状態だ。

 先輩はとうとうムキになってしまったのか、今度は僕にターゲットを変えてきた。


「お前! 月代が優しいからって調子乗ってんじゃないだろうな?」

「すみません? 調子に乗るの意味が分からないんですが? 具体的にはどういう状態の事を指します?」

「おちょくってるのか! そういう態度だよ!」


 いや、本当に意味が分からないから質問しただけなのに、なんで怒られたんだ?

 そう思っていると、竹内さんから手助けの声が聞こえてきた。


「はいはい。あんたがみなもに惚れてるのはわかるけど、後輩君に当たらないの」

「っち、違うし! 別に俺は――」

「ていうか、あんたこの間みなもに告白してフラれてるでしょ?しつこく迫っても脈ないんだから、もう諦めな?」


 以前みなもに聞いていたが、自分にしつこく迫る男が数人いて困っていると愚痴を聞いた事があったが、どうやらその内の一人のようだ。


「俺はただ、全員が気になることを聞こうとしただけだ。ズバリ、月代にとって大事な友達だとはわかったが、お前はどうなんだ?月代の事好きなのか?」

「はい。好きですよ?」


 僕は迷わず即答すると、目の前の先輩は驚き、みなものお友達は口を大きく開けて固まり、周りから阿鼻叫喚のような悲鳴とも歓喜ともどちらとも言えない声が、教室中に響き渡った。


「いや、だってお友達ですし? 普通友達の事は好きだと思うんですけど?」

 僕がそう言うと、みなもは「うんうん」と言って頷いた。


「いや、そうじゃなくて! 俺が言いたいのは、お前は異性として月代の事が好きかを聞いている!」

「いや? みなもは女子ですから、異性に決まってるじゃないですか? ちょっと意味が分からないんですけど?」


 申し訳ないが、僕は早熟ではない。そのため、今みなもに向けている感情は、友情なのか、友情以外の感情中の境界線はないのです。

 だから、とりあえずカテゴリー的に言うと「好き」のカテゴリーの為、僕はみなもが好きなのだ。


「これ、多分噛み合ってないようね、話が」

「うん、多分。どうする? 石田君、雰囲気的にわざとじゃなさそうだし、助け舟出す?」


 何やらお友達たちが企んでる様子。しかも、僕の発言のせいでクラス中の声が止み、僕達の動向を見守っている状態だ。

 ちなみにみなもは現在いつの間にか僕の手を握ってます。そのせいで目の前の先輩に物凄く睨まれている。


「みなも。みなもは石田君の事どう思ってるの?」

「もちろん好きだよ?」


 その答えに、お友達たちは頭を抱えた。何やらニュアンスでみなもが言いたい事が伝わったらしい。


「これはヤバイね――前ちゃん、ミーちゃん。みなもの事任せた」


 そう竹内さんが言うと、前ちゃんさんとミーちゃんさんはみなもを連れて、教室の端の方へ移動した。

 僕はと言うと、竹内さんに詰め寄られている。その姿を見たのか、みなもが抗議の声を出しているが、他の2人に止められて何やら話し合いが始まっている。

 そして先程の先輩は他のお友達のような人に連れられて慰められている。


「石田君。質問するね?石田君って恋愛感情とかわかる?」

「微妙ですね。何となく言いたい事はわかりますが、どの感情が恋愛感情なのか想像もできないです」

「う~ん……じゃあ質問を変えるわ。石田君、みなもと一緒にいて楽しい?」

「そうですね――あのカラオケ以来、直接あったのは今日初めてですけど、すごく楽しいですね」


 そう、実際は夜に声を聴いたり、テレビ電話をして相手の顔を見ながら電話したりはしていたが、直接会うのは2週間ぶりぐらいなのだ。


「あら? 今までのやり取りで結構頻繁に会ってると思ったんだけど、違うんだ?」

「だいたい夜に電話するぐらいですかね?」

「――あの子、もしかして石田君と同じで恋愛感情の受信状態が少しおかしい可能性があるわね……」


 僕と同じとなると、あんなにモテて告白も何回もされているのに、恋愛をしたことがないということになるけど――片思いぐらいはしてるよね? 僕はないけど。


「よし、こうなったらこの前ネットで見た事を――石田君?ちょっと今から言う事を想像してみて?」

 そう言われたので、とりあえず目を瞑って考える準備をした。


「もしも、みなもに好きな人ができて、もう石田君とは会えないと言われたら、どうする?」

 そう言われたので想像してみた。まずそもそもみなもが僕以外の誰かと一緒にいる姿が想像できない。


「次に、もしみなもが目の前で石田君以外の男の人と手を繋いで歩いていたら、どうする?」

 想像をしてみたが、やはりみなもの隣いる男性の姿は、僕以外の姿が想像できなかった。


 その後も、同じような質問が何個か続いたが、全て上手く想像できない。

 やはり、みなもの隣にいるのは僕以外想像できないし、一応親友である久秀を想像してみたが、自動的に僕の姿に変換された。


「どう? 嫌な気持ちになった?」

「――いえ、そもそも想像ができなかったです。みなもの傍に僕以外の男性がいるビジョンを」


 そう言うと、竹内さんは驚愕の表情を浮かべた。


「そこまでわかっておいて、今の感情が理解できていないなんて、どういう事? 完全にみなもに恋してるじゃん!」


 え? このみなもを思うとずっと一緒にいたいとか、手をずっと握ってたいとか思うのって――恋なの?


「そうなんですか? これが恋?」

「恋以外にないでしょ? そんな感情。今時小学生でもわかるわよ?」


 僕はその小学生を数カ月前までやってましたって言ったら、多分怒られるかな? しかし――


「なるほど――これが恋か……」


 僕はとうとう恋心を自覚したらしい。そうと決まればやる事は一つである。

 丁度みなも側の話も終わったみたいだ。みなもはかなり照れており、ミーちゃんさんと前ちゃんさんも顔を赤らめている。


「どうしたの? 3人とも」

 竹内さんが3人の様子を見て質問した。


「いや、何でもないよ、彩ちゃん。本当に何でもない――」

「そうそう。何でもないよ。後で説明できるタイプの話だから」


 そうミーちゃんさんと前ちゃんさんが回答した。みなもは未だに照れている表情をしたままだ。

 たまたまみなもの顔が見れる位置にいた先輩男子達が、みなもの顔を見ると、恥ずかしそうに眼を背けている。先輩女子達はニヤニヤしていた。


「とりあえず、2人の感情がどんな感情なのかはこちら側のとしては想像できるけど、2人とも大丈夫?」

 どうやら竹内さんは2人にみなもの状態を、そして2人に僕の感情を説明したらしい。2人とも顔のニヤニヤが止まらない。

 でもまぁ、僕の今の感情がわかった事なので早速――


「みなもさん、好きです。僕と付き合ってください」

 告白してみた。

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