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第34話 ダンジョンアタック(中編)/勇者の力

 案の定、41階層に降りると、直ぐにゴブリンが出てきたので、栄治さんはすぐに剣と盾を構えた。

 数は2体、それぞれ剣と槍を持っている。しかも2匹は何を言っているのかはわからないが、確かに会話をしてる。

 知性のある敵。初めて邂逅したが、いくら2足歩行の人型とはいえ、体の色が黄土色であり、顔も醜い化け物のような顔をしていたので、問題なく倒せた。


「栄治さん、どう? 感触的に」

「いや、特に問題はないな。恐らく顔が明らかに化け物だったから倒せたと思う。光は?」

「俺も問題ないっすね。後ろの二人は?」


 俺と栄治さんは問題がなくても、後ろの2人はもしかしたら堪えたかもしれないから、一応声を掛けた。


「私は大丈夫です」「あたしも」


 どうやら問題ないみたいだ。ココに来る前に複数回の戦闘を行い、だいぶ耐性が付いてたからスムーズに倒せたけど、これが10層あたりで出てきたら多分倒せなかっただろう。

 少しホッとしていると、栄治さんがぼーっとしているのがわかった。


「栄治さん? どうしました?」

「――光君。俺、【勇者】の力がわかった気がする」


 いきなり何を言ってんだ? この人。【勇者】の力? どういうことだ?


「どうやら【勇者】倒した相手の経験を奪える能力らしい。恐らく俺の考察間違いがないと思うけど、RPGゲームの勇者てかキャラクターって経験値を貰ってレベルがアップするよね? 多分それの応用だと思う。

 今小声でステータスって言ってみたけど、俺の目の前にステータスが数字で表示されていう状態なんだ」


 なんと、栄治さんの能力はステータスの確認とレベルアップ、そして相手の力を奪う能力だっていうのか!? それ俺の【闘神】よりもチート能力じゃん!


「うわ~! 凄い力だね! よくある最強系の能力の一つじゃん!」

「はぇ~……凄いですね」

 凜々花さんは興奮気味に、佳織ちゃんは純粋に驚いているような表情をしている。

 特に凜々花さんは顔を赤らめている事が俺でもわかるぐらい興奮しており、これはもしかして栄治さんに惚れているのか!? いつの間に!?


「しかもレベルが上がると魔力も体力も回復するタイプらしい。これだったら俺はもっと強くなれるな」


 そんな事を呟いているが、冗談じゃない! 栄治さんは俺の踏み台でしょ!? 何で栄治さんの方が主人公ぽい力を手に入れてるんだよ!


「どうする? とりあえずいろいろなタイプの魔物を倒したけど、もう帰るか?」

 栄治さんがそんな提案をしてきた。確かに戦闘については経験を詰めたけど、俺はまだ全然活躍できてないし、佳織ちゃんにカッコいいところを見せてない!


「あたしはどちらでもいいですよ?」

 凜々花さんはどちらでもいいと。佳織ちゃんは?


「私はもう帰りたいかな?疲れたとかじゃないんですけど、もうここにいても意味がないんじゃないかなぁ~って」

 佳織ちゃんは帰りたいだと!? それはマズイ!!


「皆! 実は言っていない事があるんだ」

 こうなたら仕方がない。あの手で行くか――


「このダンジョンの50階層より下の階層にはお宝が出てくるらしい。その中には教会が厳重に保管しているアイテムとかもあるみたいなんだ。どうせなら取りにいかないか?」

「いや、そんなに必要じゃないんじゃ? 別に下の階に行ってアイテムを手に入れても、俺達には必要ないんじゃないか?」

「その見つかったアイテムが俺達が使っている武器に匹敵するアイテムや防具系のアイテムでも?」

「ん??」


 栄治さんに反応があった。凜々花さんや佳織ちゃんも少し食いついてきた。もう少し押すか。


「俺達って女神の祠で武器は手に入れたでしょ?でもこの武器って壊れるかもしれない。さらに防具となると強力な防具が欲しいじゃないですか。だからそれらを手に入れるんです。ね? どうですか?」


 そう言うと栄治さんと凜々花さん、佳織ちゃんは考え始めた。

 もしも今自分が使っている武器が壊れたら?防具が弱いせいで大怪我を負ってしまったら?そう思うと今のうちに強い装備が欲しいに決まっている。


「今の俺達の強さならもっと下の階に行ける筈です。もしも強い敵が出てきた場合は逃げればいいし、行けた階層が今の俺達の強さの指針にもなりますしね」


 そういうと、栄治さん達は下に降りることに了承した。


 そしてそのまま65階層まで来れた。なんと1日で記録更新だ。流石は俺達召喚者組だ。現地の人間よりも遥かに強いから簡単にここまで来れた。

 その間にも魔物が沢山出てきた。ゴブリンからコボルト、オーク等の人型魔物から、蛇やワニ、猿のような動物型魔物まで幅広く出てくるようになった。

 一応全部の敵を倒しているが、その都度栄治さんのレベルが上がったらしく、動きも洗練され、力も上がっているみたいだ。面白くない。


「お? 宝箱だ」


 栄治さんは前方に宝箱があることを教えてくれた。これで3つ目だ。一つはポーション系のアイテムが、もう一つからはよくわからない魔法具が出てきた。

 これらの品は帰ってから鑑定所に持って行って確認してもらう必要がある。


「さて凜々花さん、お願いね」

「わかったわ栄治さん。【地の精霊よ、力を貸して……私に全てを見通す目を、全ての厄から守ってくれる手を、貸してください】――サーチ!」


 凜々花さんが精霊魔法を使って宝箱を見た。何でも精霊の力を使って宝箱に害があるかないかを確認しているらしい。

 ちなみに呪文は精霊と考えたらしい。だから何故そんな呪文になったかは不明だ。


「――よし、栄治君。この宝箱は害がないみたい。そのまま開けていいよ」

「了解。ありがとう凜々花さん」


 栄治さんが宝箱を開けると、その中から魔法使いが装備するようなローブが出てきた。


「これはあたりか?」

「さぁ~? どうなでしょうね? とりあえず回収して鑑定に回しますか」


 その後も問題なく下の階に移動でき、とうとう71階層まで辿り着いた。


「さて、60階層では複数の種類の魔物が沢山出てきたけど、今回はどんな種類の魔物が出てくるかな?」

「とりあえず、気を付けて行きましょ?一応階層が変わる度に魔物の種類や強さが変わってるみたいだから」


 栄治さんと凜々花さんが密着して話している気がする。このダンジョン攻略で二人の距離が縮まってしまったのか……しょうがない! 凜々花さんは諦めよう!俺にはまだ大本命の佳織ちゃんがいるしね!

 そう思っていると、佳織ちゃんが俺の方に近づいてきた。これはもしや――


「光さん。何か情報を持ってませんか?70階層なんて誰も到達したことないんですよね?」


 佳織ちゃんから質問がきたので、張り切って考えてみた。

 70階層は誰も到達していない未踏の階層だ。60階層では今まで出てきた魔物が混在して出てきた。

 それらの情報を元に、さらに異世界転生モノの物語の定番とかを考えて、ここは恐らく――


「多分60階層と変わらないと思う。魔物が混在して現れるんじゃないかな? ただしより強くなってだね。でも大丈夫。俺達は強いし、いざとなったら俺が守るからさ」


 俺はカッコよく佳織ちゃんに語り掛けた。そしたら佳織ちゃんは顔をそっぽに向けた。多分照れてるんだろう。

 よしよし、確実に佳織ちゃんは俺に対しての好感度を上げているはず! このまま行けばもう少し好感度を上げれるかもしれない――


 そんな事を考えていると、前方から魔物の気配が近づいて来ているのがわかった。

 俺達は会話を中断し、戦闘の準備をした。俺達なら問題ない。だって今まで苦戦することなくここまで来れたんだ。

 そんな思いをしていると、とうとう魔物が姿を現した。


「――なんだ……この魔物は……魔物か?」


 明らかに魔物の気配をしているが、今すぐ近くにいる魔物は、どっからどう見ても人間の姿をしていた。

 見た目は王国に多く存在する茶髪の男。歳は20代ぐらいだろう。鎧と剣を持ち、しっかりした目で俺達を見ていた。


「――気配は魔物だ。でも姿は完全に人間だ……」


 俺達が戸惑っていると、その男は何も言わずに襲い掛かってきた。

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