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第21話 始まる新学期、再会した幼馴染

まずは、謝辞を。

読者の皆様のおかげで日間、週間ランキングに載ることができました!


ありがとうございます!

 春休みが終わった。


 そんな感じの教室の中、僕はいつもと変わらずに窓の外をボケーッと眺めている。現在は、始業式が終わってホームルームまでの短い休憩時間。


「ねぇ、聞いてる?」


「もちろん聞いてるよ」


 ちょっと怒り気味のレベッカ。迷宮探索の授業の際に受けた魔法回路の損傷もついに全快したということで、進級初日から登校しているのだ。


「っで、なんだっけ?」


「やっぱり聞いてないじゃん。だから、来月の聖教国研修の事前学習、集まって調べるのいつやるのって話」


 聖教国研修というのは、グリセード魔法学校2回生にとっての恒例行事。創造神ミシリアを祭るミシリア教の総本山である聖教国に5泊6日の旅行に行くのだ。


 その前にはグループで聖教国について調べなければならないことになっているのだ。ちなみにこれは春休み前から決まっていることなので、たぶん他のクラスメイトは既に取り組み始めているはず。


「ああ、それね。僕はいつでもいいよ」


 別に調べるまでもなく聖教国のデータぐらい頭に入っているし。


「マリアンヌはいつが都合がいい?」


「わたくしもいつでも大丈夫ですわ。ただ……護衛がついてくるので、事前に場所と時間を教えてもらってもよろしいでしょうか?」


 マリアンヌ王女も学校に復学した。ただ、やたら護衛の主張が激しい。今も教室の後ろに身動き一つしない完全武装の近衛騎士が3人、鋭い視線を僕たちに向けている。


 絶対、侍女長の差し金だ。学校の敷地内にあんなごつい護衛がいる意味が分からん。


「それなら、週末に王立図書館でどう?」


「オッケー、問題ないよ」


「分かりましたわ」


「決まりね!」


 レベッカは手帳に予定を書きこむ。


「ちなみに、その後って二人とも予定空いてる?」


「空いてるけど?」


「わたくしも、陽が暮れる前に王城に帰れれば問題ありませんわ」


「それなら、マジョリカに行こうよ。この前はいろいろあって行けなかったし」


 迷宮探索の日に帰り際に行こうとしていた有名レストラン(マジョリカ)


「はい! いいですわね! ぜひ行きましょう!」


 キラキラと瞳を輝かせるマリアンヌ王女。


「それ、カルロのおごり?」


「まぁ、今回だけなら……」


 レベッカはケガから復帰したということだし、快気祝いとして奢ってあげよう。


「やった! ありがと、カルロ」


「ありがとうございます。カルロ様」


 手を取り合って喜ぶレベッカとマリアンヌ王女。


 ん? ちょっと待て。レベッカは分かるけどマリアンヌ王女、あなた大衆店のレストランぐらい店ごと買い取れるぐらいのお金持ってるでしょ!


「……ど、どういたしまして……」


 ここで「奢るのはレベッカだけです」とは言えないし、無駄な出費が……。


 と、ここで休憩時間の終わりを告げる鐘が鳴る。


 レベッカもマリアンヌ王女も席に戻っていき、春休みの思い出を語り合っていたクラスメイト達もそれぞれの席に着席する。


 僕は、静かになった教室で財布の中身を確認するのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 


 進級初日の授業が終わった昼下がり。


 僕が向かうのは、オリエステルの魔法具店。理由は単純で、昨日、約8カ月ごしに頼んでいた魔法杖が完成した連絡があったのだ。


 そう! ついに、待ちに待った超古代魔法具(ハイアーティファクト)から取った魔法石(コア)を組み込んだオーダーメイドの魔法杖ができたというのだ! もう、朝からワクワクが止まらなさ過ぎて始業式の長い校長の話なんて一瞬も聞いていないし、レベッカの話を聞いていなかったのもこれが原因だ。


「カルロ様!」


 そんな僕を校門で呼び止める声が一つ。


 誰!? 一刻も早く僕はオリエステルの魔法具店に行きたいんだけど?


「誰で……」


 僕が振り返るとそこには、見覚えのある顔が。最悪だ。


「カルロ様、お久しぶりです!」


「なんで……エリスがここに……?」


 そこに立っていたのは、昔、僕が禁術で助けた少女エリスだった。


「あれ? おかしいですね? お手紙をお送りしたと思うのですが?」


「……あ!」


 確かに実家から手紙が来ていた気がする。もう関わり合うこともないからと思って開けずに捨ててしまった。ああ、こんなことなら手紙もしっかりと中身を見ておくべきだった。


「見ていないんですね。もう、やっぱりカルロ様はあたしがいないとだめなんですから。奥様も心配しておりましたよ」


「それは……そんなことより、なんで王都にエリスが……まさか……」


 僕は、エリスの着ている服装で全てを察する。


「はい! エルドラード士官学校に入学しました!」


 誇らしげに言い放つ僕と変わらない身長の少女。詰め襟、ダブルボタンに士官候補生の肩章が眩く光っている。


「まじで!?」


「はい! マジです!」


 エルドラード士官学校と言ったらグリセード魔法学校と並ぶ王国三大学校の一つで未来の騎士団幹部を養成している超難関校だ。


 それを便宜上、僕と同い年のエリスが合格したのだ。制服を着ていなかったら未だに信じていないだろう。最年少合格なんじゃないのか?


「エリスって魔力適正皆無だったよね?」


 騎士といえども魔法が使えないと実戦で戦えないのが今日この頃。魔法が全く使えないエリスが魔法を使うこと前提の試験にどうやって合格したのかよく分からん。知らない間に魔法が使える体質になっていたとか? あり得ないけど。


「はい。なのでゴリ押ししました」


 満面の笑みのエリス。ただ、言っていることはとち狂っている。


「ゴリ押しって……?」


「あたしは、魔法が使えないので思いっきり斬って、殴って、なぎ倒したんです!」


 完全な脳筋。力こそ正義。その体現者がここにいたようだ。


「で、士官学校に合格したのは分かったんけど、なんでここにいるの?」


 王都の中で士官学校は魔法学校の反対側に位置している。魔法学校の校門前をエリスが通ることは起こりえないのだ。


「カルロ様と一緒に帰ろうと思いまして」


「いや、なんで? 僕、このあと予定あるし」


 僕は、エリスと一緒にいるといいことがない。僕の『魔法の深淵を覗こう計画』の変更を余儀なくした根源なのだ。また、計画をとん挫させられたらたまったもんじゃない。


「はい! 分かりました」


 なんだか今日はやけに物分かりがいいな。エリスも僕が家を出て行ってから成長したみたいだ。


「分かってくれたなら別にいいんだけど……エリスも大変だと思うけど頑張って」


 僕はエリスと別れて歩き出した。


「カルロ様とこうやって街を歩くのも久しぶりですね!」


 僕はエリスと別れて歩き出した……はずだよね?


 エリスは、僕の隣をスキップしながらついてくる。


「なんでついてくるんだよ!」


「なぜ、と言われましても……?」


 キョトンと首を傾げるエリス。


 何を言ってもついてくる気がする。こんなところでエリスと格闘していても時間の無駄だ。


「はぁ……もう、いいや。」


 結局こうなる運命なのかもしれない。


 僕は、ご機嫌のエリスと共にオリエステルの魔法具店に向かった。

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