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第6話 先輩

涙は星になった

星は、夜の闇に輝いて消えていった。

彼女が泣いた理由が分かるほど、まだ私は彼女を知らなかった。



図書室の静かな雰囲気が好きだ。

築四十年は経っているであろう校舎の地下一階。

ワックスが飴色に光る木製タイル、所々黒ずんだ本棚。

カウンターに一人座り、ごく稀にしか現れない貸し出し希望の生徒の手続きをする。

そんな静かで、まるで一人でいるかのような所で、ゆっくり読書をする……わけではなかった。



放課後開放が始まってから三十分程が経った頃、遠くから図書室担当の教師と知らない声が聞こえてきた。

(そういえば今日は……)

今日は新入生の部活説明会だ。

この学校の図書室は、委員会ではなく部が管理を担当しているので、毎回新人が現れるのはこのタイミングだった。

「今年の新入部員の子よ」

担当は手短に紹介してくれた。

「よ、よろしくお願いします……」

「―よろしく」

そんなありきたりな出会いの後、彼女と私はよく一緒に当番に入るようになった。

彼女は機械が壊滅的なまでに苦手らしく、滅多にエラーの出ないパソコンの画面に赤いバツを表示させては、泣きそうな目で私に助けを求めに来た。



当番の時は基本的には暇だ。周りに聞こえないような囁き声で、昨日のテレビ番組の事や、学校でのできごとなど、いろいろ話した。

先輩後輩、というより、仲の良い友達。

たまに彼女は、私を見つめたままぼうっ、とすることがあるけれど、気には留めなかった。


季節も変わり、肌寒くなってきたある日の帰り道。

蔵書整理で最終下校時間ぎりぎりに彼女と校門をくぐった。

最寄駅までの、少し長い道のりを二人で歩く。

「先輩」

「ん?」

答えは直ぐに返ってこなかった。

ちらりと横の彼女を見ると、何か思いつめたような、そんな顔ををしていた。

「先輩」

「何?」

彼女が正面に立ち塞がり、私の歩みが止まる。

「私、先輩のことが―」


「好きです」


「んぇ!?」

変な声が出た。

脳がフリーズして、言葉が出ない。


「――やっぱり変ですよね……、その…、女子が女子に好きですなんて……」


微かに湿った彼女の声で現実に戻される。

まだ返事をしていなかった。うまく回らない頭で、一言一言、口にする。

「私は素直に嬉しいよ……」

彼女の涙は止まらない。


「―でも……、私もどう返せばいいか分からないんだ」



自分のありのままを告白して、でもそれに戸惑い涙を流す彼女。

そんな彼女から

なぜか目が離せなかった


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