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エピローグ2 その頃の地球では

 破壊神型の超大型怪獣が対馬で消失したことに対して、日本国は調査団を派遣した。

 その調査団には、色々な分野で権威ある博士たちと、さまざまな機材が同行し、数か月という時間をかけて測量を終えた。

 そして報告結果が、穴井太造総理と閣僚の元に届けられた。

 報告を一読みし、穴井総理は片眉を不愉快そうに上げる。


「あれだけ金かけた調査の結論が、怪獣は異世界へ転移しましただぁ?」


 胴間声のべらんめえ口調で詰問されて、調査団の長が身を震わせる。


「様々な分野の権威の皆様が、様々な調査機器が弾き出した結果をもとに、そう結論付けたものでして」

「ふんっ。こんな調査結果を出すなぞ、アニメや映画の見過ぎじゃねえかと疑って当然だろうがよ」

「そ、そう思われるのはごもっともなのですが、ちゃんと調査した結果なのは動かしようのない事実でして」


 冷や汗で額を濡らす調査団の長。

 穴井総理はらちが明かないとばかりに、調査団の他のメンバーに顔を向ける。


「おい、関沢博士よ。酒に酔った状態で、この報告書を書いたんじゃねえだろうな」

「穴井くん。君は私が下戸と知っているだろう。そんなわけあるまいに」


 知古に対する気安い口調を放ってから、関沢博士は詳しい説明に入る。


「大怪獣が消失した場所で調査した結果、重力振検知器と時空振スペクトラム測定器に顕著な反応が見られ、大気中には地球上の大気にはない元素粒子が観測された。以上の三点からでも、大怪獣が地球ではないどこかへ転移したことを示す証拠となるのだよ」

「テメエが言うなら、それは真実だろうよ。だが別の星や宇宙空間に行ったじゃなく、異世界に転移とは、理論跳躍が過ぎるんじゃねえか?」

「ごもっともだ。しかしながら、先ほど言った『地球に存在しない元素』が問題なのだよ」

「別に、この地球になかろうと、他の星や宇宙空間にないとは言い切れめえだろうが」

「いや言い切れる。なにせ発見した元素とは、原子量14で電子配置は1s2 2s2 2p3、なのだからね」


 関沢博士が自信満々に言った言葉に、穴井総理は首を傾げた。


「あん? 小難しい言い方してやがるが、それは窒素ってことだろうが。地球にもある物質だろうが」

「穴井くん、ちゃんと話を聞いていたのかね。私はこう言っているのだよ。窒素と同じ原子量と電子配置を持ちながらも『窒素ではない元素』を見つけたのだと」

「そんなことあり得るわけがねえ――ってことで、異世界って考えに飛んだわけか」


 言葉の途中で意見を翻した穴井総理に、関沢博士は嬉しそうに顔を綻ばせる。


「やはり穴井くんは、自分の考えをすぐに変えられるほどに思考が柔軟だね。けれどその通り。私たちが住む世界には『窒素に酷似しているのに全く違う元素』など存在しえない。そんな物質が大怪獣が消失した現場に残留していた。となれば、あの大怪獣は異世界へ転移したのだと結論付けるよりほかにない!」


 関沢博士の演説に、穴井総理はパチパチと軽めの拍手を送った。


「ご高説はありがてえけどよ。結局のところ、あの大怪獣は異世界から帰ってくるのか、来ねえのか?」

「それは分からないね。昔のアニメよろしく、役目を終えたら元の世界に帰ってくるとも考えられるし、現在の流行りである送還方法がない召喚だった可能性もあるんだからね」

「それじゃあ、いつか戻ってくるかもしれねえって恐怖で、枕を高くして眠れねえじゃねえかよ」

「ところがどっこい、そうでもない。なにせ、画期的な理論を思いついたのだからね!」


 関沢博士は白衣の懐から紙束を取り出すと、穴井総理にだけ手渡した。

 予想外の動きだったようで、調査団の長はギョッとした顔をしている。

 一方で穴井は、受け取った紙面に目を走らせて、にやりと笑った。


「なんとも面白い方法を考え付くな。なんだこの『異世界への落とし穴』ってのは」

「大怪獣が消失した現象が起きた。現象が起これば、科学者は理論を立てることができる。そして異世界へ『落とす』方法が確立できれば、日本国に上陸しようとする怪獣の全てを、放逐することができるというわけだよ」

「怪獣たちを、異世界へ廃棄するってのか。俺らにゃ嬉しいことだが、送られる先にとっちゃ迷惑千万だな」

「なに、我々の手に余る輩だけ、転移させればいいのさ。それに理論がゆくゆく極まれば、地球から太陽に転移させることが可能になるかもしれないよ」

「星の門計画じゃあるめえし、妄想もたいがいにしろよ。まあロマンはあるがな」


 穴井総理は関沢博士に紙束を押し返した。


「テメエに割り当てられた研究費で何をしようと勝手だが、怪獣を落とし穴に入れる際には連絡を入れてくれよ」

「そのときまで、君が総理だったら考えておくよ」

「おいおい。うちの政党が政権を取っている間は、俺は閣僚に居続ける羽目になりそうなんだぜ。総理じゃなくたって連絡してくれよ」

「「くくっ、あはははははっ」」


 穴井総理と関沢博士が二人して高笑いする中、他の面々は置いてけぼりを食らった顔で、状況を見つけることしかできていなかった。


というわけで、この話をもって、大怪獣! 異世界転移す の物語は終了です。


怪獣が跋扈する地球と、アデムが死んだ異世界は、この後どうなっていくのか。

読者の皆様が想像して楽しんで下されば幸いです。


少し時間を置いて、次の物語を投稿するよていですので、そのときは再びの御愛顧をお願いいたしますね。


それでは、読んで下さった方々に感謝しながら、次の物語でお会いしましょう


中文字でした ノシ

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