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己が正義の大犯罪(テロリズム)  作者: NoName
序の蝕
1/2

Peace is plating.

 

 世界の中心と言われるアメリカ合衆国にある都市「ニューヨーク」

 鉄道や道路などの交通も他の州と比べると整備されており、その全てがニューヨーク駅に向かって伸びている。まさに、世界の経済を回している「経済の心臓」と呼ばれる都市である。

 そんな都市に、モノレールに乗って向かっている青年がいた。


 青年の名は風間 凛輝(かざま りんき)。世界的に有名な大学「グローリアス大学」に通う大学四年生だ。

 趣味はバスケットボールで、高校ではインターハイに出るほどの実力者。大学に通っている今でもストリートバスケをやっている。

 父親はサラリーマン、母親は専業主婦で家族もとても一般的である。ごく普通のどこにでもある家庭だ。

 大学が忙しく電車の中であくびが出てしまう彼だが、今日は大学に行くためにモノレールに乗っているのではない。

 ニューヨークで働いているガールフレンドとデートをするためである。

 彼女、エレーナ・ロビンソンとはストリートバスケをしている時に出会い、そこからよく遊びや食事をする仲となり、遂には付き合うことになった。

 彼女は1年前から働いていて忙しいのだがデートする日時をしっかりと空けてくれる良い彼女である。

 ただ、今日は仕事で少し忙しいため会社の前で待っててくれないかと頼まれた。

 例え吹雪が吹き荒れていたり、竜巻が発生したとしても何時間でも待ってやろう。


 だって今日は1年記念日だから。


 彼女は覚えているだろうか。いや、覚えていなくても関係ない。この両手に持っているプレゼントを堂々とあげよう。


 彼女は喜んでくれるだろうか。

 彼女の好きなフェルディナンの紅茶セット詰め合わせとそれに合うようにマーティのスコーンを選んだ。なんとしても渡したい。渡して喜ぶ彼女の顔を見たら思わずこちらの頬も緩んで口角が上がってしまうだろう。

 そんなことを妄想していると自然とあくびもしなくなってくる。

 彼女とのデートではこの妄想以上のことがいつもある。彼女は世界で1番の輝かしい女性だ。そんな彼女と付き合えている自分はどんなに幸せ者なのだろうか。


 たとえ僕がハリウッドのスターと付き合ったとしてもハリウッドスターも彼女にはかなわないだろう。

 彼女は一流企業には勤めてはいるものの、セレブではない。一般人だ。

 それでも彼女はセレブ以上の魅力がある。ハリウッドスター以上の魅力がある。聖母よりも魅力がある。


 彼女は、まるで恒星のような存在だ。

 遠くから見てもとても明るく輝いて見える。

 それは、外部からの光によって照らされているのではなく彼女自身が輝いているのだ。


 彼女は自分にとっての太陽だ。彼女がいる限り、不安で暗い闇にのまれることはないだろう。


 ......なぁんて、月並みな表現かもしれないけど。


 この後のデートのことを考えると妄想がどんどん膨らんで、心が晴れやかな気分になる。ニヤニヤが止まらない。


 なんか、周りの目が気になるから抑えよう。


 凛輝は上がってる口尻を両手の人差し指で下げ、この浮かれあがった感情をどうにか抑えようとスマホを見る。

 それでも時々、感情が温泉のように湧き上がって抑えられなくなるのでそのたびに軽く自分の頬をビンタしていたので凛輝を見る周りの目はあまり変わらなかった。


 さて、そろそろニューヨーク駅につく。

 外を見ていなかったが、ここからなら彼女が働いている会社が見えそうだ。


 いつ見ても、すごい会社だ。流石は世界でもその名を知らぬ者はいないくらい有名な一流企業だ。

 会社の名前は「ニュー・ジェンダー・ビルディング」。あそこで彼女は働いている。そして卒業したら自分もそこで...。


 彼女と一緒の職場で働いて、彼女よりも稼げるようになって、そしていつかは結婚して彼女を養えるようになりたい。

 そして子供も作ってとても暖かい家庭を...


 ぺちっ。


 また、妄想が膨らんでしまった。いけないいけない。


 頬にビンタをした後、また会社を窓から見ていた。

 いやあ、それにしてもでかい。それでいて芸術性がある。

 働いている彼女を少しだけ見たことはあるが、忙しそうだったが楽しそうでもあった。

 世界でも有名になるためには職場環境も良くないといけないのだと改めて思った。


 そんなことを思いながら会社を、そしてその周りの街並みを眺めていた。

 忙しなく行きかう人々、シンボルに集まり談笑している人々、カフェで午後のコーヒータイムを楽しんでる人々。色々な人々がこの街に入る。


 そんな自由で、平和で、幸福な街。

 いつもと変わらない暖かさに溢れた日常の雰囲気に包まれている。


 だが、その刹那


 会社から橙色の炎が灰色の黒煙がでて、上空を煙で染めていく。

 爆発したのだ。

 モノレールの中からでも聞こえる爆破音、遠くから見てもわかる現実の惨劇に凛輝は目を奪われていた。


 すぐに彼女のことが気になり、彼女に電話をかけた。


 トゥルルルルルー...トゥルルルルルー...トゥルルルルー...


 電話の呼び出し音が無情にも鳴り続き、凛輝の心を焦らせる。


 すると


 ガチャっ


「エレーナ!?ぶj...」


「Your call could not be connected. Please try again later... Your call could not be connected. Please try again later...」


 電話がつながったと思ったが、聞こえてきたのは電話がつながらないことを知らせる機械音であった。

 その機械音に凛輝はさらに焦り、すぐにでもエレーナの元へと行きたい気持ちが強くなる。


 このモノレールは遅い!なんでこんなに遅いんだ!


 さっきまで何の文句もつけずに優雅に乗っていたモノレールにケチをつけ始めた。

 モノレールが悪くはない。そんなことは分かっている。だが、モノレールに八つ当たりするしかないほどに凛輝の気持ちは焦っていた。


 一時一分一刻一秒でも速く、速く、速く!


 焦る気持ちから凛輝は激しく貧乏ゆすりをしている。


 電車内も騒然としており誰も凛輝の行動を機にしたりはしていない。

 ニューヨークの、それも世界でもトップクラスの会社の襲撃など、世界にとっての大事件だ。慌てていないほうがおかしい。


 そしてついにニューヨーク駅に着いた。

 乗客がモノレールの中で焦って押し合っているが、そんなものには目もくれず必死に足を動かした。


 エレーナ エレーナ エレーナ エレーナ!


 凛輝の頭は彼女のことでいっぱいになっていた。頭がいっぱいになりすぎて、何人かにぶつかったがそんなこと覚えているはずもない。


 彼の足は彼女のもとへ。彼女が見えるまで彼は足を止めないつもりでいた。


 だが、目の前に出てきた帽子をかぶった重装備の男に止められた。警察官だ。

 気が付くと凛輝は、会社のすぐ近くまで来ていた。目の前には「KEEP OUT!」と書かれた黄色いテープが張られている。


「Do incoming!It is dangerous!(入ってくるな!危険だぞ!)」


「危険?それがなんだ。彼女はその危険な場所にいるんだ。通らせてくれ。」


「No!(ダメだ!)」


「通せ!」


「No!」


「通せ!」


 警官と口論になり時間が浪費されていく。




 2度目の爆発。


 1度目よりも爆発が大きく、その一撃が建物に大ダメージを与え、会社は橙色の炎と延々と立ち上る黒煙とともに崩れ始めた。


「Please go away!(離れろ!)」


 周りにいた警官がのどを枯らすほどに叫んで声をかけ、民衆は危機を感じ取り全速力でビルから離れていく。凛輝は抵抗はしたものの警察に腕を引っ張られ、その場から離れた。


 崩壊していくビル。逃げ惑う民衆。立ち昇る黒煙。現実とは思えない光景を目の前に、


「エレーナ!エレーナ!エレーナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 凛輝は愛する彼女の名前を、助かるように、天へと届くように、叫ぶことしかできなかった。


 当然その声は、天にも神にも届くことはなく、結果、凛輝はこの世の終わりとも見える現実を、目に焼き付けられることを我慢するしかできなかった。

 

 青年は、その日平和であると思い込んでいた。世界は平和だと疑いはしなかった。だがその平和という薄っぺらいメッキは無残にも剥がれ落ちた。









「・・・・・・また、この夢か」


 頭を押さえながら、寝心地の悪いベットから体を起こした。

 どうやら相当うなされていたらしい。シーツは汗でびっしょりと濡れていて、すぐに干さなければカビができてしまうだろう。


 流石にあの頃の様に、枕から塩が発見されるほどのことはなくなったが、あの忌まわしき事件は彼の心を離してはくれなかった。


 あの事件からは18年が経っていた。

 当時はテレビや新聞、SNSなどで目にしない日はないほどに報道をされていた。


 あれは不快だ。嫌な記憶を毎日毎日植え付けられ、そしてそのやつれた心を癒すために目をつぶろうとしても、あの日の記憶が思い浮かぶ。


 あの事件は今では学校の教科書にも載っている。

 事件名「The day the world has stopped(世界が止まった日)」。4月30日に起こったことから「430事件」ともいわれる。事件を起こしたのは過激派組織「アストレア」。


 この事件が起きて1か月、3か月、5か月、1年、2年、とまるで記念日のように告げているマスコミにはあきれを通り越して、尊敬の念まで出てくる。よくぞそこまでその事件について報道ができるな。何も知らないくせに。


 よくぞ嘘偽りのことを世界に向けて発表ができる。そんなマスコミに拍手を送りたい。


 今生きている人間は、あの事件にかかわってない人間どもは、あの惨劇を知らない。あの惨劇を経験していない。あの事件に目を向けもしない。


 それにしてもよく1年ごとに記念日のように報道できるものだ。


 記念日だって馬鹿馬鹿しいものなのに。くっだらない。


 イエスの誕生日なんてくそくらえ。何が神の子だ。十字架に掲げられて死んだただの人間だろう。そんなのを祀り上げてどうなるんだろうな。


 凛輝の心は年齢とともに干からびていた。もう齢40。ジャパンでいう初老だ。


 色々なことを経験し、色々な道を歩んできた。だがその心は、皮肉にもあの事件の名前と同じく、あの時のまま止まっている。


 そんな凛輝は今、何をしているのか。


「おい、相棒!起きたか?仕事だ」


 扉の向こうから、聞いただけで勇ましさが伝わる女の声が聞こえてきた。


「何だ、もうそんな時間か」


「ひでぇんだよ上のジジイども。まだ深夜の2時だぜ?お騒がせなスター共がホテルのベッドの上でパーリィーしてる時間だぁ。なぁ、俺達もベッドの上でお祭りでもするかぁ?」


「そういうことならよそでやってくれ。生憎、君の中に花火上げる趣味はないよ」


「まあそういうとは思ったぜぇ。早くしろ。お偉い方がキリンみたいになりながら待っている」


「教えたばかりの日本語を自分流にアレンジするんじゃないよ」


「うるせえ、口を動かしてないで手を動かせ。てめえの体にもう一つタマを追加することになるぞ」


「大丈夫だ、君と話しをしながらもう着替えは済ませた」


「おぉー、そうか。ちゃんと武器は持ったか?情報機器は?」


「母親じゃないんだからやめてくれ。大丈夫。すべて持った」


「そうか、なら行くとするかぁ!」


 その勇ましい女声がきこえて、部屋の扉を開ける。


 いつも見ているが荒廃したひどい土地だ。ところどころ花などが生えているが、たとえ踏みつけても誰も気づかないだろう。どんなに美しく咲いていようと、それを見る者がいなかったらなんの意味もないものとなる。そこら辺に生えている雑草と同じ・・・いや、いつも踏んでいる地面と何も変わりはしない。


 見るものがいなければ花を踏んでいようが、雑草を踏んでいようが、地面を踏んでいようが何も変わりはしない。どんなにきれいな花でも、泥をかけてやれば汚くなる。ヘドロをかけてやれば美しさはなくなる。セメントをかけてやれば何もなくなる。


 結局どんなものでもそれ以上の力を押し付けてやれば意味のないものとなる。笑えてくる。怒りがこみあげてくる。結局弱いものは強いものに負ける、どんな理不尽な理由があっても。


 話は変わるが今の凛輝の仕事は


「さあ、大犯罪者(テロリスト)どもを殺しに行くか」


 対テロリスト兼VIPの護衛のための軍、ATA(アンチ・テロリズム・アーミー)の第17支部特殊犯リーダーだ。



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