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修羅場Ⅰ

負けた……しかもアイツはほぼ避けてるだけだった。それなりに訓練は積んできたし、魔力切れを起こさないための魔力も手にいれたのに、負けた。こんな感じで負けるのはあのオッサン以来だ。今までなら私の火力で全てをねじ伏せてきたのに…… やはり要注意人物、関わらないって決めていたのに、どうして部屋まで一緒になる! アイツを見たときすぐにわかった、あれはヤバイと、自分の本能がそう訴えてきたのだ。だからあんな猫を被ってまで近寄ったのにこれではただ私が恥をかいただけではないか。だけど一体コイツは何者なのだろうか。


そうこうしてるうちに私の(?)部屋に着いた。スパイとして色々とマズイものは近くのコンテナ倉庫に入れてあるのでバレる心配はないだろう。

あっ、でも男の人の部屋に入るって今までなかったから緊張する…… とその時、


「あ、先ずお風呂入ってね」

「……は?」

「いや、そんな泥だらけの人を部屋に上げたくないんだよ」

「……あ。」

そりゃそうだ。水と土の魔術で地面はドロドロ、そこに押さえつけられたら服は濡れてるわヨゴレてるわで確かに申し訳ない。私は彼の指示に従い泥を落とさぬようにそーっと風呂場へ向かう。


「タオルはこれとこれを使って、シャンプーとかは男モノだけど、それは今度の週末にでも買いに行こっか。じゃあ俺は晩飯作るからゆっくりつかってて」


そう言ってアイツは出ていく。今思うと確かに服の感触が気持ち悪い。私は服をソッコーで脱ぎ迷ったあげく、洗面台の上に置いた。落ち着こう。なんか、今日の私は色々とおかしかった。風呂に入ればそれもできるだろう。

《~♪~~♪ オフロガワキマシタ》

ビクゥッ、っと体が跳ねる。あの男、用意が良すぎる。帰る途中に風呂を沸かし始めていたのか。あの男、オドオドしてるくせに頭の中では全て計算づくか。まぁ、風呂からあがったら一応ありがとうぐらいは言おう。うん、そうしよう。


さて、彼女を風呂に入らせてる間に晩飯を作ろう。女の子の風呂を30分として、なにができるだろう、米を炊く時間はない。向こうはアメリカ帰り。なら、冷蔵庫の中のロールパン、これは確定。アメリカ、アメリカ、呟きながら急いで飯を作る。結局、具入りオムレツ、ベーコン、サラダ、インスタントのスープに落ちついた。


さぁ、できることはやってしまおう。そう、荷物の運び入れだ。女の子にこれはさせたくないので今、やっておこう。借りを作っておけばなかなかにいい関係が築けそうだ、俺にとってだけれども。うんうんと少し頷きかけたその時、


「~~~~~~~~‼」


と悲鳴が聞こえて風呂場へ向かい、扉を勢いよく開け、

「どうしたッッ‼」

と突入。するとそこには――――全裸の彼女がいた、正確にはタオル1枚だが。俺は見とれてしまった。その濡れた髪を、その肩を、水が滴り落ちるその足を、そして服の上からではわからなかったが、その大きな胸を。キサマ、着痩せするタイプだったのかッ‼ ミコトの顔はみるみる赤くなっていく(もともと赤かったが)。ヤバイ、それだけは避けなくては。それとはつまり、ミコトが叫ぶことで隣人が突入、この現場を見られることだ。ならばすべきことは1つ。あの口をふさぐッ‼


俺は彼女に向かって突進、左手で彼女の口をふさぐ。勢い余って床に倒れるが右手で彼女の頭を守る。そうしてから気付いた。馬乗りにはなってないものの、これは俺が彼女を押し倒した形だ。彼女は目に涙を浮かべている。ここで状況がわかった。服だ、俺は彼女の着替えを用意してなかった。ミスった。いや、それよりもこの状況を何とかせねば。校長が湧いてきたらヤバイ。

「ええええっと、服!服だよな。」

と言うと彼女はコクコクと頷く。押し倒した際に暴れなかったのでこちらとしては都合がよかった。だがそこに――――


「ほーーう、これはこれは」

一番来てはいけない人が湧いてきた。

「ちょっ、ちょっと待って!誤解だ。話し合おう!」

「これをどう誤解しろと言うのだ」

食い気味で言われる。

「まぁ、私は全て観ていたから、なにが起こったかは理解しているよ。修!ジャージでいい。早くもってこい。」

校長が俺を修と呼ぶ時はガチトーンなのだ。つまり俺を全くからかってない。俺は紺のジャージとtシャツを持ってくる。伸長差があまりないので恐らく使えるだろう。下着?そんなのは諦めた。

「ん。服。」

と言って服を持っていくと校長に殴られた。

「阿呆か、お前はそんなにコイツの裸体が見たいのか」

あ。全く考えてなかった。俺はそそくさと洗面所から出ていく。


成り行きで校長もここで飯を食べることになった。あぁ、飯に味がない。怒られながら食べる飯の味ってないよね。


嵐のように校長が過ぎ去り、今日はもう寝ることにした。校長や担任が時たま愚痴をいいにここに来ることもあって部屋を常に片付けていたのがよかった。明日は土曜日。午前中に荷物を出して午後には買い物に行こう。現在、午後9時。久しぶりに8時間は寝れそうだ。






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