学校案内
さて、校長室を出た俺たち。夏至が過ぎてすぐともあってかまだ青空が広がっている。無言でてくてく歩くのはさすがに彼女に申し訳ない。確かに俺は女の子と話せるがあくまでもそれは集団の中だ。1対1、ましてや初対面の美少女ならなおさらだ。こういうのはこっちから話しかけるべきだ。むこうが馴れないところで緊張してるかもしれない。
だが、何を言おうか。悩んでいるとある重大なことに気付いた。呼び方だ。それすら俺たちは決めてない。うん、先ずはこれだ。俺は斜め後ろをてくてくと歩く彼女の顔は見ずに
「えっと、とりあえず、何て呼べばいい?」
「……ミコト。あなたのことは?」
「シュウでいいよ」
そこからは大分会話は弾んだ。編入試験のこと、父の仕事のこと、アメリカでの暮らしのこと、そして魔術のこと。
そう話していると改めて気づく。やはりコイツは猫を被っていやがった。クラスではあの清楚系お嬢様って感じだが、今は質問すると最低限しか返って来ない。まぁ、この姿を見れるのが俺だけっていうのはなかなかにいいことだ。
演習場も見せ終わり、あとは帰るだけってところで校長が飛んできた、いや、湧いてきたという方が正しいだろう。
「校長、今度は何ですか?」
「お前ら一回模擬戦してみろ。」
「「は?」」
2人が声を合わせると校長はからかってきた。
「いや~、仲良くやってるようでなによりだ。それはさておき、やるよ、模擬戦。ちなみに勝者には部屋のルールを決める権利が与えられる。よくよく考えたら必ずそこで喧嘩が起こる。ということだ。なぁに、人払いはしてある。両者、位置につけ。」
俺は別にどうでもよかったが、ミコトの眼がガチだ。まぁ、勝負なのだからやるからには勝たせてもらおう。
「試合開始‼」