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5日目 Ⅱ

袖を洗濯バサミでしっかり固定、生地も出来てる。準備は万全だ。かかってこいリア充ども!


花火のために人がちらほらと集まってくる。

「おっさん、客引きお願いします!」

「おっしゃ!スマンな坊主!屋台で欲しいものがあったら言ってくれ、買ってきてやる」

「いいんですか?それじゃ後ほどお願いしま す!」

「おう!任せとけ!」


この屋台独自のたこ焼きの焼き方を教わったが、あえて無視。なぜなら串に刺すからたこ焼きを強くしないといけないからだ。俺は油を多めにひいてたこ焼きをこんがり焼いていく。俺なんかの料理で本当に金を稼いでいいのだろうか、疑問だ。


カップル、男子高校生の群れ、カップル、家族連れ。客足は様々、料理をしつつ、客と会話。いつもなら料理に集中できるがこれはとても難しく感じる。っていうか人多くないか?


それもそのはず、俺たちには屋台のくせに浴衣を着た少女がいる。男子高校生や中学生はミコト目当てに買いに来ている奴もいたぐらいだ。俺もあんなノリで楽しみたいよ……


客との応対が板についてきた俺は下衆いことを思い付く。

「おっさん!少しの間会計できる?」

「ああ、問題ない!やってやるさ!」

「シュウ、私たちはどーすればいい?」

「小波、ミコト。お前らはこのたこ焼き串をもって通りを歩け。食べさせあいとかするとなおよし」

「シュウ、それをしたらどうなる?」

「俺が萌えるってのは建前だ。本音はひとは珍しいものを見たら欲しがるものだ。それが可愛い子ならばなおさら。そして需要がある。ならば供給してやらねばならない」

「シュウ、頭狂ったか……」

「有川くん、本音と建前が逆……」

おっと、これは失敬。まぁ、2人の気分転換にもなるだろう。

「シュウ、わたあめ、りんご飴、焼きそば」

ミコトはやってくれそうだ。小波はどうだ?

「やり……ます……」


「人、多い」

「えっと、どうしよう……」

「あそこ、ベンチがある。そこで食べる」

「うん、そうしよっか」

そして2人はベンチに座る

「ミコトさん、はい、あ~ん」

「コナミ、あ~ん」

そこで2人は食べさせあいっこをした。


「お、おい! あの子メチャクチャ可愛くないか?」

「女の子どうしだ。百合だ!」

「キマシタワー‼」

「尊さが凄い! なんだあれは!」

とヒソヒソと聞こえてくる声にミコトは聞こえないふりをした。


2人のおかげで客足はさらに伸びた。今、この屋台には尊さが溢れている。尊さパワーのおかげかそれとも変態が多いのかは知りたくはないが大成功だ。花火打ち上げまであと30分。ラストスパートだ。


「坊主、ありがとな!もう大丈夫だ!行ってこい。屋台の裏から他の屋台に交換しに行け!なんでも手にはいるはずだ」

「ありがとうございます!」

花火打ち上げまであと5分、おっさんは俺たちを解放してくれた。そして俺はたこ焼き串を6本持っていく。


戦果:わたあめ、りんご飴、焼きそば×2、唐揚げ×2


河川敷に並ぶ屋台の後ろの階段には人は居らず俺たちはゆっくりと食べながら花火を見れた。りんご飴を持ったミコトが本日のベストショットになった。


花火も終わり屋台を片付けていく。純利益は8万円。この短時間でこれならいい線いったのではないだろうか。


「そういや小波、明日はどこに行くんだ?」

「私は明日、福岡に行きます。花火大会です」

「おっ、奇遇だな、俺たちも明日は福岡だ。じゃあ、また会うことになるかもな。」

「今日は本当に助かりました。これはほんの気持ちです」


そう言って俺は3万円を手にいれる。今さら3万円ぐらいどうってことないがバイトをして手にいれたお金は重みが違った。俺は少なくともそう感じる。


「ミコト、どうだった? バイトしてみて」

「面白かった、しんどかったけど」

「そうだな、じゃあ浴衣返してホテルに――」

ミコトに袖を掴まれる。

「下駄、脱げ」

「バレてた?」


俺は慣れない下駄で足の親指と人差し指の所から血が出ていた。こういうのって普通、男女逆で男が女をおんぶするっていうのが普通―――

「裸足で歩け。痛くないだろ」

「あの~個人的には舐めたりしてくれると傷が治るかな~なんて」

「あっそ、自分で舐めてろ、変態。あと、子犬のような目で見るな」

まぁやっぱりムリか。


浴衣を返してホテルに行く。2日連続車中泊だったのでふかふかのベッドに俺たちは飛び込み、疲れを癒す。



「シュウ、マッサージー」

風呂にも入って一段落、ベッドでうつぶせになっているミコトが足をぱたぱたさせながら言ってきた。魔術陣を描いている俺からすると邪魔されたくないのだが。

「私の背中が痛くなったのは誰のせい?

サイコロ振ったのはだぁれ?」

「いや、確かに2日連続車中泊は悪いと思ってる。でもルームサービスとか色々あるd」

「時間外」

「えっ」

「やれ」

「はいはい、わかりました。やりゃあいいんだろ、やりゃあ」


……ちょっと待て、マッサージは肩だけなら校長にしたことはあるのだが、相手がうつぶせの形は初めてだ。どどど、どうすればいい? 乗っていいのか? 馬乗りいっちゃっていいのか?


「はやくー」

ミコトが膝から下をぱたぱたして俺を急かす。やるしかないよね……


ミコトは背中が痛いとか言っていた。丸まって寝ているからだろう。まずは背骨に沿って手のひらで押していく。相当こっているようで一押しするごとにボキボキと骨が鳴っていく。あとは肩甲骨と肩と首だろうか。ここからは指圧でマッサージしていくのだが―――


「んっ、くっ、はぁっ、あうっ、はぁっ、」

ミコトが喘ぎだした。

「ちょっ、変な声出すなって!」

「うっ、むりぃ、ダメぇ」

「なら、せめて枕に顔うずめてろ。おかしくなりそうだ」


ミコトは確かに疲れが溜まってる。軽く押すだけでゴリゴリ鳴っている。

「~~~~~~‼」

ミコトは相変わらず喘いでいるがこれはこれでエロい。

「ふぅ~、こんなもんかな?」

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」

ミコトはビクビクと震えている。ちょっとやり過ぎたか。


俺は魔術陣作成を再開させる。テロリストの一件以来、ストックを作っておくと便利と思った俺だったが、なかなか作成の機会がなかった。


「シュウ」

「今度はなんだ?」

「どーん」

「~~~~~!?」


ミコトはベッドの上でうつぶせになりながら魔術陣を作成している俺に身体を密着させてきた。うん、しっかり柔らかいものも当たってる。


「ミコト!? 何してんだ!?」

「シュウ、魔術陣を描けるってことは他の属性の魔術を覚えてるってこと?」

「無視!? ええと、そうだよ。大体の魔術は覚えてる。校長の私物に色々あった」


そう、俺たち魔術師の得意魔術はそんな陣を覚えなくても感覚とそいつの魔力さえあれば魔術が使える。


「シュウ、なんで覚えようと思った?」

「んー、覚えてたら便利だし、暇だったし。俺は大概のことはそこそこできるんだよ、たいした努力がなくても。これもその副産物だな。」

「それにしてはそこそこの域を超えてる気がする」

「よくお分かりで。最初からそこそこできる奴ってぶち当たる壁がいきなり大きくなるんだ。そうなるとコツコツやって来た奴の方が上へ行く。だが、俺の場合、時間がありすぎた。料理も、魔術も、裁縫も、剣術も、極めちゃった。人付き合いは全然だけどな」


「シュウはクラスの皆と仲がいいはず。どこが全然なの?」

「えっと、どう言ったらいいのかな? 俺は皆と仲はいいけど、浅い付き合いなんだよ。現に俺はクラスの中心じゃないだろ」

「うん」

「あとは…… あれだな、人って誰にも入られたくない領域ってあるだろ。それが俺は広すぎるんだよ。全く、人付き合いってめんどくさい。社交的な俺を装うのももう板についたよ」

「……………」

「あれ? ミコトさん?」

「ZZZ」


ヤバイ、ミコトの体温が上がってる。あいつ、寝やがった! ……こうなると陣の作成も無理か。えっと、このまま寝るか。だってミコト、俺の首に腕をまわして寝てやがる。これが不可抗力ってやつだな。うん、寝よう寝よう。


眠れねぇ……


5日目の、終了。








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