第六話 東方の国「大和」へ
アジトの場所を突き止められてしまった大罪継承者の一行。その場はベルーナの能力で切り抜けるも、長くは持たないと考え、ルーシュは、一時的に亡命することを提案する。
ルーシュ アジト談話室にて
「そろそろここを・・・いや、大陸自体を離れた方がいいかもしれない」
ふとルーシュはそんなことを言った。
「何故?」
「青の国に私たちの居場所がばれてしまったんだ。誰かさんが本気をだして動いてくれたからなんとかなったけど、私たちは人を倒すことはできても加護の|盟約<<めいやく>>によって殺すことはできないからね。次は大軍が来ると思っていい。誰かさんは当分起きなさそうだしね」
そういってルーシュはベルーナの方を見る。彼女はそうとう疲れているらしくぐっすりと眠っている。そして案の定アルスヴェルが側にいる。
「ただ移動は一筋縄ではいかないと思った方がいい。|国境警備隊<<こっきょうけいびたい>>は厳しいしね。船に関しても制限されるだろう。すでに私たちは厳重にマークされているから。それに私たちは海を渡る手段が無い」
「じゃあどうするんですか?・・・その怪しい笑み・・・まさか船を造るなんて言いませんよね?」
レヴァが訝しげな目でルーシュの方をみた。彼女の態度を見る限り図星らしい。ヤバイと思ったのか突然こっちを向いた。そしてニヤリと笑う。嫌な予感がした。
「君の重力魔法で皆を運べないかな?」
突拍子もないことを僕に聞いてきたからとりあえず真面目に答えた。
「無理だよ。今はまだ自分一人を浮かせるのが精一杯だよ」
それを聴いたとたんルーシュがかなり落胆した。しかもだいぶ考え込んでいる。
「んー。どうしようか・・・。そうだ。変装していこう。
「却下」
総意だった。
「あたし考えたんだけどさ。船を奪えばどうかな?」
「・・・」
「それだーー‼」
皆がその妙案に大声をあげて賛同するのにそう時間はかからなかった。僕も例外ではなく叫んでいた。
マリン 名も無き海岸にて
あたしの一言で崖に来ている。ここは隠れ家からそこそこ離れたどこの国にも入らない通称「名も無き海岸」。そのわりには崖の下をよく船が通る。
「8人が乗れる大きさの船を探そう
「うん」
そのとき
「そこの8人‼なにをしている‼」
突然3人の兵士に声をかけられた。
「国境警備隊⁉なぜ⁉」
「貴様らは既に監視されている。さあ!大人しく此方に来い‼」
「なめない方がいいよ。少年‼任せた‼」
どうやらルーシュはあのガキに任せたらしい。
「僕⁉「なめない方がいいよ」とか言っときながら僕任!?」
「ああw重力魔法のお披露目だよw」
「はぁ。わかったよ。」
しぶしぶ了承したガキは詠唱を開始する。
「サーヴ・ユア・バージア・コンス!」
すると相手の動きが鈍くなった。
「完全にはまだ止めれないか・・・。全員は無理だけど足止めぐらいならできるよ。その間に船を奪って‼」
その叫びをかきけすようにサートが叫んだ。
「あったぞ‼あれだ!8人乗れるぞ‼しかもあれ・・・、密輸船か?」
「はやいな‼しかし密輸船なら好都合だ。」
皆半分お遊び気分だ。これだからガキは困る。
「マリンちゃん。今これだからガキは困るとか思わなかった?」
威圧感がはんぱない。レヴァはかなりの確率であたしの考えてることを当てる。そうこうしてるうちに下から声が聴こえた。
「おーい。全員海に落としたぞー‼」
とサート。
「食料も一杯あるぞー」
とベルズ。
やはり8人のうち最強の二人に任せたら一瞬だった。
「さあ。行くよ‼少年。一気に吹き飛ばして‼」
「無理だよ‼これが精一杯」
「わかった。私も手伝うよ」
そういってルーシュは継承者のガキの隣にたって左手をかざして一気に手を振る。すると3人の兵士は面白いように左へ飛んでいく。
「さあ。行くよ」
「うん」
「「せああああ」」
二人が飛び乗ってきた。船が大きく揺れる。そしてルーシュは号令をかける。
「さあ。行こうか。東方の国「大和」へ‼」
「ああ」
「おう」
「「うん」」
「ほい」
「はーい」
「行こうか」
7人のバラバラな掛け声が大海原にこだまするのだった。
遅くなりました。ユウです。ほんとすみません。もはや誰もこのシリーズを覚えてないかもしれませんが第六話です。次回から舞台は大陸を飛び出し、海へと移行します。それではまた次回お会いしましょう。