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最強主人公

「――いきます」


 リビアが短くそう呟くと、リコルヌに積み込んだ王家の船の装置が強く反応する。


 聖樹から得られたエネルギーも使用して、リコルヌがリビアをサポートする。


 クレアーレはリビアを見て驚くのだ。


『ちょっとこの力は予想外ね』


 クレアーレも予想していなかったリビアの力により、リコルヌは白く淡い光に包まれる。


 近付くモンスターたちは、その光に触れると消し飛んで黒い煙すら発せない。


 集まったモンスターたちを吹き飛ばし、それでもリコルヌは輝きを失わなかった。


 アンジェがその光景を見て驚く。


「リビア、お前は一体?」


 リビアはアンジェに微笑む。


「私にも分かりません。でも、今は――この力がリオンさんを助けてくれるから」


 リビアは真剣な表情になると目を細めた。


 左手を伸ばして前に向けると、リコルヌの輝きが増していく。


 マリエにしがみつくカーラが驚いていた。


「揺れていますけど、いったい何が起きているんですか!」


 リビアは本能で、この先をどうすれば良いのか察していた。


 リコルヌの周囲には白い粒子の光が集まり、そしてそれらが形を作っていく。


 その姿はリビアの姿に似ていた。


 デフォルメされたその姿は、女性の外見をしていることが分かる。


 顔には目だけが青白く浮かび上がっていた。


 リコルヌを中心に、巨大な白く輝くリビアの姿が誕生する。


 モンスターたちが近付けば吹き飛ばされ、味方であればすり抜けてしまう。


 今、リビアはまさに王国にとって勝利の女神となっていた。


 モンスターたちが消え去ったことで、王国軍からは歓声があがっている。


 だが、リビアの負担は大きい。


 気を抜くとすぐにでも倒れてしまいそうだった。


 そんなリビアをアンジェが支える。


「無理をするな」


「でも、今だけは――」


「私の力も使え」


 アンジェがリビアの手を強く握ると、リコルヌの周囲に赤い粒子の光が集まってくるのだった。


 それらは巨大なリビアにドレスを着たかのような姿に飾りつけた。


 赤いドレスを着た女性が、左手を前に向けると――そこから大きな魔法陣がいくつも出現する。


 魔法陣からは巨大な火球が出現し、放たれるとアルカディアに襲いかかった。


 アルカディア・コアが、急いでシールドを展開する。


 だが、そのシールドも突き破ってアルカディアに着弾して爆発を起こしていた。


 その様子をリコルヌの船内から見守るマリエが呟く。


「す、凄い。このままいけば、普通に勝てるかも」


 だが、リビアは楽観視していなかった。


「時間がありません。リオンさんを早く回収しないと」


 映像から、アロガンツがボロボロになっているのは確認した。


 リビアが目を閉じると、リコルヌの外にいる巨大な光の巨人であるリビアの目を通して外の景色が見えた。


「見つけた!」


 アルカディアのデッキでボロボロのアロガンツがいる。


 アルカディア・コアはこちらに意識を向けており、アロガンツに手を出していなかった。


 リビアが声を荒げる。


「リオンさんから――離れろぉぉぉ!」



『離れろぉぉぉ!!』


 巨大な女性の形をした光の粒子の集まりが、アルカディア・コアに手を伸ばしてきた。


 ミアは咄嗟に両手を前に出す。


「この人は――リビアさん?」


 ミアが用意した魔法障壁は、何重にも展開されていたが、リビアに簡単に破かれた。


 慌てて避けると、リビアの巨人が手を引いた。


 実力的にリビアの方が強かった。


 魔法生物が苛立っている。


『何だ、こいつは!? 旧人類なのか?』


 リビアが何であるか分からない魔法生物は、とにかくミアに倒すように言うのだった。


『主人! あれを使え!』


 あれとは、最大出力の攻撃のことだった。


 アルカディアの主砲並みの攻撃を、ミアはすぐにでも放てる。


 もっとも、連射できるほどの魔素を集めきれていない。


『巨人の中央に飛行船がある。そこに術者が乗っているはずだ』


 リコルヌを目指してミアが右手を向けると、アルカディア・コアの棘が同じ方向を向いた。


「――貴方たちでも許さない。騎士様の仇!」


 赤黒い光が集まり、そして放たれる。


 その一撃の破壊力は、これまで散々見てきた。


 それを収束して放ったのだ。


 威力だけなら今までの主砲よりも強い。


 それなのに――リビア巨人は右手で払いのけた。


 赤黒い球体は、進行方向を変えて遠くに着弾して大爆発を起こした。


 水柱が上がり、海面が衝撃波で津波を起こす。


 魔法生物が大きな目をいくつも開けて震えていた。


『ふ、ふざけるな! どうしてあの一撃を――あんな回避方法が出来るんだ! こんなの間違っている!』


 あまりの理不尽さに腹を立てていた。


 リビア巨人が両手を広げる。


『リオンさん――今、助けます』


 すると、何千という魔法陣が出現し、そこから次々に魔法が撃ち込まれた。


 火球、光の球と、とにかく色んな種類の魔法が高威力で放たれてくる。


 ミアはすぐに上昇して避けようとするが、魔法はどれも追尾してくる。


 ミアも迎撃するために攻撃を行うが、間に合わずに数百発の魔法を受けて吹き飛ばされた。


「くっ!」


 アルカディアの要塞部分から離れると、リビア巨人がデッキ上にいるアロガンツを守るように両腕で覆い隠す。


 巨人の顔は目しかないため、表情は分からない。


 だが、きっと微笑んでいるのだろうと思えた。


 それがミアには許せなかった。


「騎士様を殺しておいて自分だけ――よくもぉぉぉ!」


 最大出力で攻撃を放つと、リビア巨人の背中から新たに頭部が出現する。


 髪の長い女性だ。


 その女性の上半身まで出現すると、両手を広げてミアの攻撃を受け止めた。


 爆発するが、リビア巨人は無事である。


 魔法生物が震えている。


『あり得ない。何だこいつは? どうしてこんな――こんな時代に、どうして私を圧倒する存在がいるのだ!』


 むしろ、どうして今まで使用しなかったのか分からない程の強さだった。


 リビア巨人が四本に増えた腕を伸ばしてミアを掴む。


 逃げようとしたが逃げ切れず、捕まって暴れ回るミアはリビア巨人の強さに悔しがっていた。


「最初から手加減をしていたというの? こんなの――絶対に許せない!」


 暴れ回ってリビア巨人の手を破壊して脱出し、上空に逃げる。


 そして、リビア巨人の上から――アロガンツを狙って攻撃を開始した。


「大事な人を目の前で失う悲しみが――貴方たちに理解できるの!」


 アロガンツに降り注ぐ攻撃は、一つでも当たれば致命傷だった。


 すると、リビア巨人がアロガンツを庇うために覆い被さる。


 全ての攻撃をリビア巨人が受け止め、アロガンツを守っていた。


『そのまま畳みかけろ、主人!』


 魔法生物が、このまま一方的に殴り続けるように指示を出す。


 ミアも攻撃を続けると――ミアの真上からリビア巨人の手が振り下ろされた。


 その腕は、リビアの背中に生えたもう一人の巨人の手だった。


 声が聞こえてくる。


 リビアとは違う声だ。


『リオンに手を出す奴は――落ちろぉぉぉ!』


 急降下するミアは、そのまま海に叩き付けられてしまった。


 叩き落とされ、戦場から随分と離れた場所に落ちてしまう。


 圧倒的な差を見せつけられてしまった。


 ミアは不甲斐ない自分と、理不尽な敵に涙を流した。


「こんなのってないよ。こんなの――私は騎士様の仇も討てないなんて」


 歯を食いしばり、手を握りしめ、再びミアは浮かび上がった。


「たとえ、死んだとして――も?」


 ただ、様子がおかしい。


 浮かび上がって再びリビア巨人と向き合ったのだが、相手の輪郭が朧気になっていた。


 今にも消えてしまいそうだった。


 それを見た魔法生物が、ようやく気が付く。


『そうか! 既に限界だったか! そうだよなぁ~。それだけの威力のある魔法か何かだ。何の負担もないわけがないよなぁ~!』


 嬉しそうに相手が弱る様を見ていた。


 リビア巨人が消えていくのを見て、ミアはすぐにアルカディアのデッキへと向かう。


 ボロボロになった余計な部分が崩れ落ちて、アルカディア・コアは小さくなっていた。


「――これで邪魔者はいなくなったよ、リオン」


 ミアはリオンの止めを刺しに行くのだった。



「ルクシオン――状況は?」


 動かなくなった体では、状況も満足に確認できなかった。


 ルクシオンが俺に周囲の状況を伝えてくる。


『生き残った無人機たちを集めました。アロガンツの整備を行っています』


 せめて移動できるくらいには整備しているようだ。


 アロガンツにコンテナを背負わせていた。


 俺はユリウスたちの安否を確認する。


「あいつらは無事か?」


『はい。帝国が降伏を宣言したことで、今は要塞の外に出ています。マスター、すぐに後方に下がって治療を受けてください』


「それは良かった――死なれたら――気分が悪いから」


 あいつらが無事だと聞けて、素直に嬉しかった。


 腐れ縁だったが――悪い奴らじゃなかったからな。


 問題も多くて、馬鹿だったが――ゲームの時とは違って嫌いじゃない。


 現実だったら、意外といい奴らだったよ。


 ――もっと、仲良くしておけば良かったな。


 顔を上げてモニターを見れば、アロガンツが握りしめているブレイブの大剣を見る。


「フィンが――生きていたら、きっと頼むと思うんだ。ミアちゃんを助けないと」


 余計なことをしていると自分でも理解しているが、ルクシオンが強く反対してきた。


『マスターがそこまでする必要はありません!』


 それでも――ここで頑張らないと――あの世でフィンに合わせる顔がない。


「馬鹿野郎――どのみち、ミアちゃんを止めるしかないだろうが」


 リビアがその力を発揮してくれたおかげで、何とか時間が取れた。


 だが、倒しきれなかったようだ。


 アルカディアのデッキに、ミアちゃんが降りてくる。


 その姿は、先程までの刺々しい姿ではない。


 ミアちゃんの姿だった。


 銀色の姿で、まるで黒いゴツゴツとした鎧をまとっているかのように見える。


 きっと、先程までの棘の部分がそげ落ちて、残った部分が鎧のように見えているのだろう。


 無人機たちが前に出ると、ミアちゃんに破壊された。


「ルクシオン、最後の命令だ。――投薬してくれ」


 ここでミアちゃんを止めないと、大変なことになる。


 内部にとんでもないエネルギーを蓄えているのだ。


 そのエネルギーを破壊のために使われると、王国が大変なことになる。


 簡単に言えば、沈むだろうな。


 それを止めるためにも、もうひと頑張りする必要があった。


 ルクシオンが何も答えない。


「このままだと綺麗な終わりを迎えられないだろ? ミアちゃんを救ってハッピーエンドだ。いや、ベターかな?」


 ゲームで言うならほとんどバッドエンドに近いだろうな。


 クリアは出来たが、何とも後味の悪い終わり方だ。


 ――とても俺らしい。


『マスターの幸せはそこにあるのですか?』


 俺の幸せ? ――たぶん、この先にあると思う。


 ルクシオンに尋ねられ、俺は精一杯の笑顔を見せる。


「どうして俺たちがこの世界に転生したのか、ずっと考えていたことがある。きっと、何か理由があるはずだろ? なくても良いけどさ。ないなら、作るしかないじゃないか。みんなを救って――救えなかったけど、それでもベターな結果を求める。俺にしては上出来だ」


『自己犠牲の精神ですか? 理解できません。マスターは愚かです』


「知らなかったのか? 俺は最初から愚かだよ」


 魂というのは、悟りを開くまで何度も生まれ変わるらしい。


 俺のような俗物は、転生し続けるわけだ。


 仏教の思想だったか? まぁ、今はどうでもいい。


 こんな俺の人生にも意味があったと思えれば、少しは救われるというものだ。


「頼むよ――相棒。多分、これが最後の命令だ」


 ルクシオンの赤い瞳が悲しそうに見えたのは、気のせいではないだろう。


『と、投薬を開始します』


 強化薬が打ち込まれ、これで三度目となる。


 激しい痛みが体を襲い、俺は耐えきれずに吐血してしまった。


 それでも、気分が良くなってくる。


 アロガンツを立ち上がらせると、ブレイブの大剣を構えさせた。


 大剣を見たミアちゃんが話しかけてくる。


『騎士様と――ブー君の剣を返して!』


「奪い返してみろよ、このじゃじゃ馬ぁ!」


 スペアの両足でしっかり床を踏みしめ、大剣を振り下ろしてやった。


 その一撃を小さな女の子が受け止める。


「ルクシオン、ミアちゃんに取り付いている奴を引き剥がせるか?」


 ミアちゃんを助けられるか確認すると、ルクシオンは既に解析を始めていた。


『現在調査中です』


 ミアちゃんが飛び上がってアロガンツを殴ろうと大きく振りかぶってきたので、大剣で受け止めて後ろに下がる。


 女の子の拳とは思えない強力な一撃だった。




 アルカディア要塞内部。


 ユリウスたちは、降伏した皇帝――バルトルトを拘束していた。


「あの化け物を止める方法を知らないだと?」


 鎧に乗ったままのユリウスは、バルトルトと会話をしていた。


『魔法生物がミアを取り込んだ。このアルカディアの主人はミアだ。止めるにしても、ミアの命令が優先される』


 肩を落としたバルトルトは、不甲斐ない自分が情けないようだった。


『どうして――ミア』


 ユリウスもミアの事を知っている。


 そして、フィンのことも知っている。


 だから、分かってしまうのだ。


「愛しい人を目の前で失えば、誰だって正気ではいられない」


 自分もマリエが死んだらどうなるか分からない。


 そう思ったユリウスだが、要塞が急に揺れたのを感じた。


「どうした!?」


 確認を取ると、ブラッドが状況を報告してくる。


『上でリオンとミアちゃんが戦っているってさ。ルクシオンは、僕たちに先に脱出しろと言って来ているよ』


 グレッグが不満を口にする。


『何でだよ! 助けに行けばいいだろうが! 俺たちだって、少し前とは違うんだぞ!』


 だが、クリスは冷静に考えていた。


『何か理由があるのかもしれない。それに、マリエたちのことも気になる。ここは一度戻ろう』


 ジルクもグレッグを説得する。


『リオン君も無事のはずです。ルクシオンが見捨てるとも思えませんし、何か策があるのかもしれません』


 そう言われては、グレッグも引き下がるしかなかった。


 ユリウスは、捕らえた者たちを連れて要塞を脱出することにする。


(リオン、本当に無事なんだろうな?)


 これまでのリオンを見てきたユリウスは、一抹の不安を覚えるのだった。


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