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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕 が含まれています。

Yui;2017-赤い林檎と長寿の娘.typeβ

作者:恋住花乃
Corplash氏主催『お題小説を書いてみた』(http://ncode.syosetu.com/n5365cb/)四月テーマの別次元のお話です。本編の方もそろそろアップされると思うので、宜すぐお願いします。
「皆、一番になることは良いことだと思ってるけど、そうは思わないよ。」大学1年生になった嶋野智絵里は最初のジューパ(新入生歓迎ジュースパーティ)でふと呟いていた。彼女の眼は儚げな眼をしていた。孤独感に満ちている。
「ねえ、嶋野さんってどうして一番になることを躊躇うの?」新入生で隣の席である東野結衣は、彼女に尋ねた。
「だって、一番になると仲の良い友人達がみんな敵に回るでしょ。権力のトップになれば、瑕を求めて批判的な目になる。いつだって勝者は不安なのよ。」
彼女はみんなに現役生だと思われているが、118歳だという。
「私はね、皆よりも遥かに年を取っているのよ。118歳になるの。いろんなことを経験してきたわ。」肌の質からも十代に見える。結衣はそのことを冗談だと思っていた。でも、1899年の生まれだと免許証を見て真実だと知った。
「嘘でしょ。100年も生き続けているなんてどう接すれば良いか分かんないよ。」
「そうだよね。でも良いの。今のことはさ。結衣の方がよく知っているじゃん。私は100年生きてきたから見てきたことは言えるけど。時代というか流行の移り変わりが早い現代のことは分からないよ。こんなに心を許せる友人は久し振りだよ。宜しくね。結衣。」最初の時とは表情が違っていた。少しお嬢様のような雰囲気を感じたが、彼女は高等女学校の出であり裕福な家庭だった。
「もっと、智絵里のことが知りたい。何処かで夕食でも食べない?」
「良いね。私が出してあげようか?」
「良いわよ。申し訳ないからさ。」
パーティが終わった後、喫茶店に寄って飲み直しをした。この店はマスターこだわりの珈琲が飲み放題の店で智絵里はよく通っていた。智絵里はオムライスセットを、結衣はカルボナーラセットを注文した。
ドリンクはコーヒーメーカーから注ぐタイプであり、二人ともカプチーノを注いで飲むことにした。
「智絵里は良く来るの?この店に。」
「此所の珈琲は美味しいからね。孫が高校生の頃に連れてきて貰って以来、飲みに来ているの。もっとも、二人でいるとアベックだと思われたけどね。」
「アベック?」
「ああ。今はカップルだったね。その孫ももう40近くなって、この前曾孫が生まれたんだ。」
「おめでとう。でもとてもひいばあちゃんになったとは思えない。」
「きっと、400年位生きることになるのかもね。」智絵里は冗談を言って笑っていた。
「そう言えば、智絵里は今まで何をしていたの?」
「高等女学校を出た後は、地元の名家の息子、山辺秋雄と結婚して秘書みたいな仕事をしていたわ。珍しかったけど恋愛結婚だったの。彼は、「僕は君のような永遠の花を手にしてしまったけど、僕は無限の命ではない。それが悔しい。いつも君を守りたい。」と言っていたわ。28年前に90で天寿を全うしたけど。今は、息子の春継が山辺の仕事を継いでいるの。」
「あの、どうして歳をとらない体になってしまったの?」
「多分、女学生時代に食べたふじりんごが原因だと思うのよ。とある街を歩いていたら道に迷ってしまってね。家に帰れなかったのよ。暫く歩いてたんだけど、お腹が減ってきてね。見上げると黄金に輝くリンゴの実を見つけたものだから、家の主に言ったの。『あのリンゴを下さいませんか?』ってね。家主は若い男の人でね。『どうぞ。お食べなさい。今とってきますから。』と親切に黄金に輝くリンゴを採ってきてくれた。それはもう夢中になって食べたの。今までに食べたことのないくらいに甘かったわ。」
「私、もう智絵里に寂しい思いをさせたくない。秋雄さんと同じ事かも知れないけど、永遠の花がしゅんとしてたら良くないと思うの。だから、お願い。私にも林檎を食べさせてくれない?」
「本当に良いのかな?ずっと若いままなのは良いけど、子や孫が死にゆく姿も見ることになるのよ。」
「それでも、私には智絵里がいると思うと、乗り越えられる気がするわ。」
「じゃあ、明日案内するから宜しくね。」食べ終えたあと、二人は解散した。

その日は晴天だった。初の授業を終えた後、智絵里と結衣はその林檎が成る木を目指して歩いた。
「この住宅地を歩いて行くのよ。地元民でも迷ってしまうくらいだから。」そう言いながらも、単純に二人はたどり着いた。
「この豪邸はね。今は私の所有物らしいの。今脚立を持ってくるから待ってて。」智絵里は脚立を持ってきて黄金の林檎を掴んで結衣にプレゼントした。
「この林檎だよ。先に食べてて。私、トイレに行ってくる。もうパンパンで漏れそうだから。」
そういって智絵里はトイレに行った。
「いただきます。」結衣はその林檎を覚悟して食べた。智絵里の言うとおり滅多に食べられない甘さの林檎であった。
「お待たせ。結衣。食べてくれたんだねあの林檎。本当に有り難う。お陰であの人の元に行けるよ。」
「智絵里ちゃん、ねえ。智絵里!」結衣は焦っていた。智絵里の体が赤くなっていたからである。
「御免よ。400年生きぬくか。誰かにこの林檎を食べさせるか。じゃないと、人生が終わらないの。短い間だったけど結衣は大切なお友達だったよ…あり…がとう。速く逃げて。私の体が爆発する前に!」そう言って智絵里は息絶えた。
「智絵里!ねえ!そんな…早すぎるよ。これから一緒に大学生活を楽しもうっていったじゃん!ねえ。」結衣は感涙にむせび泣く。しかし、智絵里の体は発火し始めていた。彼女は泣きじゃくりながら元の道を生きたいという一心で走り続けた。途中何度か爆発音がして、後ろを振り向いたが無心に家まで戻った。

翌日、心の整理がつかないままクラス指定の共通科目を受けた。しかし、何故かそこには、智絵里の名前はなかった。確認の為に名簿を読み上げられたが、嶋野智絵里という名前は全くなかった。
『智絵里、存在してないように思われてるけど。私は智絵里のこと忘れないよ。』心の中でそうつぶやいた。


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