気高くも高潔でもなく 5
大変長らくお待たせして申し訳ございません!
どれだけ遅くなろうとも完結までは執筆し続けますので、よろしくお願いします。
暴走しかけたリンデの妖力が安定を取り戻した。
リーリウムに手を繋がれ、照れつつも嬉しげなリンデに、浅黄は声をかける。
「えー・・・と・・・ごめん。リンデ」
リンデの赤くなってしまった目元。
視線が合えば気まずさと罪悪感を覚え、浅黄の目は泳ぎまくった。
「何が?」
「あー・・・・・・ウチの無神経な発言」
「別に」
こともなげに言い捨てる。そしてその後に続く言葉もない。
リンデの返答はそれだけのようだ。
「・・・えー」
「なんなの、鬱陶しい」
「いや、だってさぁ」
「・・・言いたいことがあるならはっきり言え」
さっきまでのしおらしさは、いったい何処へ。
浅黄は納得いかないような、しかし同時にほっとしたような、複雑な心境に陥る。
リーリウムとプリムローザは気を遣ってか、二人のやり取りを黙って見守るようだ。
「まあ、いいんだけどさぁ・・・もうちょっと反応してくれてもよくない?怒るとか、罵倒するとか」
元の素っ気なく刺々しい状態に戻ったことがやや残念で、口走った。
言ってからこれはないと慌てて誤魔化そうと思ったが、時すでに遅し。
「小夜風。お前は僕をなんだと思ってるわけ?」
イラついたリンデが先に喋り出したからだ。
「言っとくけど、ボクだって馬鹿じゃない。不愉快なのは間違いないけど、お前が悪気なく考えなしに言ったことくらい分かる。お前にとって優先すべきことがあったのもね」
気に食わないと全身から発しているが、リンデは珍しく、まともに会話を続けてくれるらしい。
「でもそれはボクだって変わらない。ボクはリリィ様を優先させてきたし、リリィ様以外を気遣うこともないし、というかしたくない。自分がそうなのに、相手にだけ思いやりなんて都合のいいものを求めるはずがない」
「・・・っ!」
衝撃に息をのんだ。
ぎゅっと、首を絞められたかのような息苦しさと、心臓を握りつぶされそうな痛みが浅黄を襲う。
(そんな・・・うそ、嘘っ!ウチは、一緒だった?リンデと・・・ホントに同じだった!?)
それじゃあまるで自分も、主以外に非情なヴァンパイアみたいではないか。
有り得ない。これでも自分は空気が読めて気遣い上手だと評判で、天然な結相 繋の次に一般生徒に親しまれているのだ。
効率よく人脈を築き、情報を操り、情勢を支配してきた浅黄にとって、コミュニケーションとは武器であり気遣いである。自らに有利に物事を進めるため、そして同時に他者を守る意味もあった。
時にはイタズラ目的で悪用することはあれど、基本的に人間とヴァンパイアが共存できるように学園でバランスをとることが目的。
(でも・・・でも、じゃあなんで?なんでウチ、リンデのこともっと考えてあげれなかったの?だって、おかしいじゃん。今まで、こんな風に失敗したことなんてなかったっ!)
人の心象管理なんて簡単だった。何を見誤ったのだろう。
「今回は、たんにボクの忍耐不足。自分の思い通りにならなくて、癇癪を起すなんて・・・」
リーリウムを一瞥し、きまり悪そうに目を伏せたリンデ。続く言葉が、リンデの反省を如実に表していた。
「―――自分が子供すぎて、嫌になる」
自嘲を浮かべるその顔は、諦観が垣間見える。
「ダメなの?」
気づけば、リーリウムが握ったままの手を引いて、リンデの意識を自分に向けさせていた。
「リンデ。私たちは、まだ子供なんだよ」
宝石によく例えられるエメラルドの美しい瞳が、リンデを捉えてやまない。
薄い桃色の唇が紡ぐ言葉一つ一つが、リンデの世界に唯一意味を与えるのだ。
「子供だから、我慢できないんじゃない。子供だから未熟で、子供だから失敗するのでもない」
「・・・・・・・・・」
「大人になっても、耐えられないことはある。大人でも失敗したり、間違うこともある。・・・大人だって、完璧な理想の自分だとは限らない」
「そう、ですね」
「でも大人はみんな、何とかしようとするでしょ?たとえ本意じゃなくても、努力したり、足掻いたり。時には妥協することもあるだろうけど、それだって、立派な選択。自分で自分の身の丈を、価値を定めるのって、すごく大変だと思う」
今の私にだって、できない。
そうリーリウムは言った。
「私たち子供はいつか大人になるまで、そういう重い選択や失敗した時のリスクを、責任を、一時的に預かってもらってるだけなんじゃないかな」
「預かってもらってる・・・」
「そう。・・・子供の時だけ、失敗しても、何度でもやり直せる。一人で選択や責任を持たなくちゃいけない未来に備えるめに、私たちは子供という大義名分で、いくらでも挑戦できる」
子供と大人。違いを挙げようと思えばきりがない。
けれど今重要なのは、ある部分だけ。
「大人はね、失敗してもやり直せない時がある。自分で責任を持っているから。でも私たちはやり直せる。子供だから。・・・ねえ、リンデ」
「はい」
「子供なのはダメ?私は、一緒に・・・今を生きる選択の練習をして、何度でもやり直して、そして・・・、そして、リンデと過ごす未来を、確かなものにしたい」
「っ~~~!何もダメじゃないです!ボクも、リリィ様との未来のためなら、どれだけ失敗しても構いませんっ・・・!」
「・・・嬉しい」
「っっっ!!!」
瞳を甘く煌めかせたリーリウムの微笑と控えめな抱擁。
世界で最も愛する主からの愛情表現に、リンデがノックアウトされたのは言うまでもない。
「もはやプロポーズじゃ・・・?はぁーやってらんないよねー」
「羨ましいですわ・・・浅黄、なぜ貴女はこんなに可愛げがないのかしら」
「え、ひど!?ちょっとローズ様、聞き捨てならないんだけどそれは!ウチ、健気にローズ様のために動いてるじゃん、いつもいつもっ」
「だって、ねえ?この可愛らしい二人のやり取り・・・こんな甘くてキラキラしてるような会話、浅黄としたことないでしょう?」
ほう、と溜息か感嘆か判別のつかない吐息を漏らしたプリムローザは、じっとリーリウム達の様子を見つめていた。
「・・・そりゃあ、ね。分かるでしょ?柄じゃないし、こっぱずかしいしー」
「あら、それは。口にしないだけで、本当はワタクシのことを想っている、という意思表示かしら・・・?」
「へっ?・・・っあ」
しまった!と盛大に墓穴を掘ったことを悟った浅黄は、言い訳しようと急速に思考を回転させる。
対し、プリムローザは楽しげに含み笑いを零した。
リンデの心情を慮ってやれなかった理由に至れぬまま、浅黄の思考は逸れる。
「・・・やっぱり邪魔だな」
「そういえば・・・リンデ、浅黄には口調が違うね」
室内にいるのは自分とリーリウムだけではなかったのを思い出したリンデ。せっかくリーリウムといい雰囲気だったのにと、黄金の主従に恨みがましい目を向けた。
そこでリンデの言葉遣いにリーリウムは関心を抱いた。
「!・・・まあ、ボクが丁寧な口調で話すのはリリィ様と位階が上の方々だけですから」
「でも、最初の頃は浅黄にも丁寧語だった」
「それはリリィ様もそばにいましたので」
「でも今は?私がいるけど、さっきから砕けた口調で浅黄に喋ってるよ」
「えーと・・・です、ね」
「爆発してリリィ様の前でもウチに感情のままガーって喋っちゃったからだと思うよ!」
これ幸いとプリムローザの追及を逃れるため浅黄が答える。
「もう・・・浅黄ったら」
仕方ないですわね。とプリムローザも諦める。
「リンデさんは、昔は今の浅黄に話しているような口調だったのですわ。それこそワタクシに対しても」
「そうなの?」
「・・・・・・恥ずかしながら」
過去の汚点を詳らかにされ、リンデは羞恥で縮こまった。
「ウィスタリア様に対しては、今も昔もリリィに話すような丁寧語でしたけれど」
「ねー。たぶん、あとは王だけだったんじゃない?リンデが形だけでも敬うのって、そのお二人だけだったでしょ、前は。今はローズ様とか、騎士より上の位階上位者にも言葉遣い気をつけてるみたいだけど」
「・・・・・・・・・」
「そうなんだ」
「リリィ様!今はちゃんとしてますから!リリィ様の専属騎士として、相応しい振る舞いを心掛けているんですっ!」
「つまり、私のために頑張ってくれているんだよね。ありがとう」
「そんな、滅相もありませんっ」
抱擁を解かれたリンデは、些か甘すぎる主の対応と言葉に、さらに申し訳なさで縮こまる。
「別にいいよ?砕けた口調で話してもいい相手には、私の前でも無理せず話して」
「ですが」
「リンデには、もう少し我儘言ってほしい。もっと、自分本位になっていいと思う」
リンデの絶叫で気づかされた。
リーリウムは、圧倒的にリンデへの配慮が欠けていたと。
知っていた。知っていたはずなのだ。リンデの生い立ちも、状況も。
それでも、ただ寄り添うだけで何も対処してこなかった。
(甘えがすぎた。・・・自分のことでいっぱいいっぱいだったなんて、言い訳だ)
だから、もう間違えたくない。気づかなかったからなんて、言い訳はもう嫌だ。
大切な、たった一人の騎士。主を守るのだ、支えるのだと公言して憚らないリンデを、リーリウムはとっくに、切り離せないほど大切に思っている。
例え人間が相手でも、リンデを傷つけたなら、あるいは・・・と。
考えてしまうほどに。
まずは4カ月も更新しなかったことをお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございませんでしたm(__)m。
薄々察している方がいらっしゃるかもしれませんが、また職場がらみです。
例の上司も問題でしたが、実は新人さんもやらかしまして・・・。
以前に辞めた人から引き継いだ通常業務の他、新人さんは上司の仕事を手伝っています。
もともと危なっかしく、話を聞いてるんだか理解してるんだか分からない人だったのですが、とうとうフォローしようもない問題行動を起こしまして。
上司に報告も連絡も相談もなく、勝手に色々自己判断で仕事に手をつけまくっていました。
・・・呆れますよね。しかも、社員全員に関わるような案件なんですよ。
そのあげく、日々こなさなければならない通常業務はおろそか。
一度たまっているその仕事に関して声をかけた時、新人さんは言いました。
「え、僕もやるんですか?Sさん(私の名前)とYさん(同僚の名前)がやってくれるものだと思ってました」
ふざけんなお前えぇェェェェ!!
お・ま・え・の!担当する仕事だって!教えただろうがあああああ!!
当時の心の中の私の叫びです・・・・・・。
どうしてそうなった・・・と同僚達と考えた結果、おそらく上司の仕事を手伝っているからそれ以外の業務はやらなくていい、と勝手に判断していたもよう。
ちなみに上司は一言もそんなこと言っていません。これは上司も頭を抱えてたので。
ヤバいよ・・・上司もヤバいけど、同じくらいヤバいのがきちゃったよ・・・。
結果、そんな新人さんが手をつけまくった仕事に問題がなかったはずもなく、対応に追われることとなりました。
色々と私や同僚、上司から怒られた新人さんは1カ月ほど経って・・・
―――クリスマスに、退職届を出しやがりました。
1月20日に退職します。退職日まで有給使います。
・・・こいつは心臓に毛でも生えているのではないだろうか。
無論、新人さんのやらかしのみならず、上司の細々とした無理難題も対応していましたので、私含む社員は振り回され、激務でした。
正月休みなんぞ1月1日だけの会社なので、ただでさえ忙しい年末に新人さん問題、上司のあれこれで、年明けに仕事は持越し。
とっくに新人さんが辞めた現在に至るまで、まだ解決していない問題と仕事がごろごろ。
・・・転職しようかな?
愚痴にお付き合い下さりありがとうございました。
次の更新は・・・・・・なるべく、なるべくゴールデンウィークまでには投稿できるよう頑張ります!




