能力の没収
月夜に舞う、熱い火の粉。街の隅々にまで響く女の高い断末魔。
罪無き哀しい終末となったその女を、天まで届きそうな、高く煌々とした塔から一人の少女が眺めていた。
「どうやらまた、魔女狩りが行われたようですね」
「えぇ。丁度その様子を、マラディ様が目撃したそうですよ」
「そうですか。あの子も順調に“仕事”をしているようですね」
石造りの廊下に響く足音二つ。その二つの足音の主は、どちらも女性である。
前を歩いていた女性は髪を靡かせて後ろの女性と目を合わせた。
「そろそろ、後継者になるための準備をさせなくてはなりませんね」
「けれど、そう簡単に頷いてはくれないと思いますよ?どうするおつもりですか、紫陽花様」
後ろに付いていた女性は、前を歩く女性にそう聞いた。
すると、「紫陽花様」と呼ばれた女性は頬を膨らませ、腰に手を当てた。
「んもぅ!空蓮ちゃんは分かってない!私はあの子達のお母さんのお母さんなのです!」
胸を張ってそう言いのける紫陽花に、空蓮は深々とため息を吐く。
「意味分かりませんよ。どーせ、白技様に頼る気でしょう?」
空蓮がジト目でそう言えば、紫陽花は咳払いをしてこの場を誤魔化した。
「ともかく、空蓮ちゃんはファミーヌちゃん、ゲールくん、マラディちゃんを呼んでおいて!私は白技ちゃんを呼んでくるから」
紫陽花はそう言うと細く呪文を唱え、この場から瞬時に去って行った。
他に誰の気配もなくなった石造りの廊下に、一つのため息が響き渡る。そして足音もなく、この場から人の気配は消え去った。
枯渇した風貌の世界に、一つの影が降り立った。
フード付きの漆黒色のマントに、ネズミの頭蓋骨の面。襟元には、下が細長いひし形のブローチ。そこからは、薄い灰色のリボンが伸びている。
その影は面を横に避け、フードをとって一息吐く。
女の子、だ。
彼女は耳上で結った二つの茶色の髪を少し振り、正面を見つめて悲痛そうな面持ちになる。
「今週に入って、何度目になったんだろう。魔女が守護者に殺されたのは。いや、それだけじゃなかった。今まで、どれだけ罪の無い普通の女性が殺されて来たんだろう」
彼女は目を閉じ、先程の光景を思い返す。
火の中に磔にされた、まだ十代後半の女性。最初のうちは助かりたくて叫んでいたが煙にむせて、ただただ涙を流し、灰になった。
その事をつい先程魔女界に報告した。「見届けた」と。
「マラディ様」
正面から自身を呼んだその声に、彼女は顔を上げる。
「空蓮さん。あれ、直接来るなんて珍しいですね」
マラディは先程と打って変わって不思議そうに微笑んだ。
「えぇ、これからの世界について、マラディ様を含め、今ファミーヌ様とゲール様にもお声を掛けているのですよ」
「え?姉さんと兄さんにも?」
「はい。ですから、いますぐに魔女界へ行って欲しいのですが」
空蓮が困った様に笑うと、マラディは考える仕草をする。
「わかりました。因みに、姉さんと兄さんには」
「ファミーヌ様は魔女界にいらっしゃったので、もう既に。ゲール様にはこれから」
「うん。それなら、兄さんには私から言っておきますから、空蓮さんは先に戻っていて下さい。すぐ追いかけます」
マラディはフードを被り直し、早足で枯渇したこの世界を歩いたかと思うと、背にコウモリのような羽根を出現させ颯爽と飛び立って行った。
世界が捻曲り、天と地の色が逆転した世界。
魔女界。
所々に鏡が点在し、鏡の中から往来する女性や動物達。ただ駄弁っているだけの者達や、自身の魔法を自慢している者もいる。
その中央、天にまで届く割れない鏡が、眩い光を反射し始め、一同はそちらに目を向ける。そこから現れたのは、二人の死神の姿。
その二つの影が現れたと同時に、ある者は駆け寄り、ある者はその場で歓喜していた。
「ああ!ゲール様とマラディ様だ!すぐに魔女会へ連絡を!未来、未来は居るか?」
ある者がそう叫ぶと、人混みの中から、小学生くらいの少女が現れた。
その体躯に似合わぬ大きめのウィッチ帽、ケープの様な黒いマントで、立てられた襟元は橙色のリボンで止められている。
「ひさしぶり!ディロン、ディートさん!」
未来は軽く敬礼し、二人の名を呼ぶが、ディロンと呼ばれた死神、ディートと呼ばれたもう一人の死神の双方に軽く叩かれる。
「そのあだ名止めてっててば!」
「お前、わざとやってるだろ」
ディロンと呼ばれた死神が面を取れば、マラディであり、ディートと呼ばれた死神は面を外さずに息を漏らした。
「良いじゃん!だって『maladie』って名前、病気の意味だからあんまり好きじゃないって前に・・・・・・」
「ああああ!い、言わないでよ未来!」
マラディは未来の口を一生懸命に抑え、恐る恐る隣の死神を覗き見る。
その視線に気が付いた彼はフードと面を取り、マラディの頭を軽く叩く。
「まぁ、そう思うのも無理はねぇだろ。俺だって『guerre』なんて名前、どうかと思うぞ」
ゲールは薄く笑うと未来に目を向ける。
「未来。早速だが、魔女会へ案内を頼みたい。これ以上紫陽花様を待たせるわけにも行かないし、何より姉さんがうるさい」
マラディも未来もハッとし、未来は咳払いをする。
「では、案内させて頂きます」
天に張り付く、逆さの古城。それが、マラディやゲールの言う魔女会。もう少し詳しく言うならば、魔女会と言うのは魔女達を統率する政府組織の様なものであり、古城はいわゆる国会議事堂。
ただしそう簡単に入れるわけではなく、特殊な門(こちらは逆転していない)に張ってある三重結界を解かなければ入る事は叶わない。更に言えば、ここに入れるのは上級魔女と呼ばれる指折りの魔女だけである。
「未来、自分で飛んでよ」
勿論、空中にあるため、飛行しなければならないのだが。
「だぁって、私まだ子供だから魔法使うと疲れるんだもん」
「何言ってんの。コウモリの羽根だって疲れるよ!そもそも私とそんなに大差無いでしょう!あんまり甘えてると、ペスト撒くよ!」
マラディが睨み付けると、未来は降参とばかりに手を挙げた。すると、マラディの前を飛行していたゲールが諭す。
「マラディ。脅すのは良いが、実際には使うなよ。お前は『病』と言っても『感染病』なんだから、標的以外の命も取りかねない」
その声にマラディは、「それは勿論」と返した。
「おぉぉそぉぉいぃぃ!!何やってるの!?ゲールくんとマラディちゃん!!」
石造りの暗い室内に響く、ソプラノの声。
その声の主が、マラディとゲールの姉、ファミーヌである。
ファミーヌは暇でしょうがない事を体現しているのか、室内を行ったり来たり、自身の髪の毛を弄ったりしていた。
それを苛めている人もいたが、ファミーヌの眼中にはない。
そんな最中、この部屋の鉄扉が突如、重苦しい音を立てて開いた。
その瞬間、ファミーヌは勢いよくそちらの方へと突進して行き、鉄扉を開いた人物を思い切り抱き締める。
「痛だだだだ!?姉さん、ギブ、ギブゥゥゥ!!」
「姉さん、兄さん死んじゃう!死なないけど!」
辺りは騒然となり、ファミーヌはゲールが気絶するまで締め続けた。
そして、そんなファミーヌを止めたのは、一生懸命姉の行為を止めようとしていたマラディではなく、騒ぎを聞きつけた紫陽花だった。
「もうっ、驚かさないで下さいな!ファミーヌちゃんは焦りすぎです。いつも通り、落ち着いて行動なさい」
正座させられ、謝罪する死神三兄弟が、大魔女に説教させられているというこの図は、なかなかシュールだ。
「まぁまぁ、取り敢えず本題に移りましょうよ、紫陽花殿」
紫陽花の背後から、十代後半、白髪にも見える銀髪に、明るい緑色の瞳をした少女が現れ、マラディはその風貌に目を開いた。
「・・・・・・紫陽花様、その方は」
マラディと同じく、現れた少女に疑問を抱いたファミーヌがそう問うと、少女自身が答えた。
「初めまして。私は三代目樹姫の黒龍白技と申します」
その答えに、三人は息を呑む。
「貴方方はいずれ、『この世の理』を統率する役目があります。そして、今まで行き来していた貴方方の仕事を、それぞれ一つに統一します」
紫陽花のその言葉に、三人は何かに気が付き、ゲールは反論しようと口を開きかけたが、ファミーヌに止められる。
「その為の、樹姫様という訳ですね?」
鋭い口調でそう言ったファミーヌに、紫陽花は頷き、掌を差し出して命ずる。
「ファミーヌ。貴女は死神『飢』の能力を持ちつつも、魔女としての能力がそれを著しく上回っています。貴女ならば、私の良い後継者となるでしょう」
「光栄です。必ずやそのご期待に応えられるよう、魔力をより一層高め、精進致します」
「続いてゲール。上級並みの魔力を持ちながらも、死神『戦』の能力に秀でています。貴方ならば、良い裁判者となれるでしょう」
「はっ。『この世の理』をこれからも繋げていくために、日々努めていきます」
次々と傅く姉と兄を見て、マラディは自身の心臓に手を当てた。
自分はどうやら、魔女の素質に秀でる姉と、死神の素質に秀でる兄よりも、さらに上の『力』を持っているらしく、つい最近には、新しい『力』を開花させた。
それが今後、どの様になっていくのかは解らないが。
そんなマラディの様子を見ていた白技は紫陽花の背後から出て、マラディの目の前で胡座をかく。
樹姫たる彼女の行動を見た三兄弟は凝視する。
「貴女は、自身が何者なのかを、ご存知ですか?」
「・・・・・・え?え?」
マラディは困惑し始めたが、白技の問いの真意に気がついたファミーヌは小さく息を漏らす。
それを横目に確認した白技は一つ頷き、話を続ける。
「まあ、それは貴女も薄々気が付いているでしょうから飛ばすとして、貴女は恐らく、最終的に『この世の理』を統率する存在になるでしょう」
突然のカミングアウトに、マラディ本人がついていけないまま話は進む。
そして次の言葉を聞いて、マラディは固まってしまう。
「貴女には悪いですが、これから一年間、魔女界及び死神界の立ち入りを禁止します」
静かな街中のバスストップ。そこに、マラディは突っ立っていた。
何故こんな事になったのか?普通なら人間に視認できるはずが無いのに、例外こそあれど一時的に死神の能力と魔力を没収されてしまったせいで、普段は刺さらない視線が突き刺さる。
とは言ってもこの場にいる人なんて、マラディ以外には居ないが。
例外として、『守護者』と呼ばれる者達がいる。まぁ、守護者の中でも特に『理解者』と呼ばれる、数少ない魔女や死神の役目を理解のある者達だけだが。
『守護者』とはその昔、巫(或いは覡)と呼ばれていた、“万里の理を守護する者”であり、霊力を所持する、霊能力者ともマジシャンとも取れる者達だ。
現在の彼らは死神や魔女を“大切な者の命を奪って逝く卑劣な輩”と見なし、滅しようと息巻いている(但し、視認できるのは魔女のみである)。
そんな今のこの世、もし自身が死神であり、魔女である事がばれ、何かあった時には元から併せ持つ霊力と新たに開花させた能力のみで戦わないといけない。
そこを心配した紫陽花が取った行動が、樹姫との連携。それにより、『理解者』の中でも、特に信用・信頼出来る守護者を保護者に指名したらしい。
それが今、マラディがこの場にいる理由なのだが、困った事に、自身の保護者となってくれる人物の情報があまりにも少ない。
樹姫によると歳は十九、男性で、滅多なことがない限りは怒る事すらないらしいのだが、容姿の事については一切触れなかった。
取り敢えず待ち合わせ場所に行くしかないので、バスが来るまで待っている。
「お嬢さん」
「ひいぃ!?」
突然背後から声を掛けられ、マラディはバスストップの看板の後ろに隠れ、恐る恐る、声を掛けた人物を見る。
『お嬢さん』と呼ばれたが、マラディを呼んだ人物も十分『お嬢さん』だと思う。
歳の頃は十代前半の子で、身長はマラディより少しだけ高く、紫の類に入る髪色と瞳。髪の毛は後ろで簪のようなものでハーフアップにしている。
だが、服装がどうにも『お嬢さん』とは言い難い。
ブラウスと言うよりはYシャツだろうか?そして、青いネクタイに、その上から緑色の、裾が膝まであるパーカーを羽織っている。
その子の足元には、トランクが一つ。
じっくり見つめていると、その子は不思議そうな顔をして首をかしげた。
「君、見かけない顔だけど、もしかして“静寂の公園”に行くの?」
その声音に、マラディは女の子と言うよりは男の子だろうか?それとも男の娘?と、どうでもいい様な良くない様なことを考えていた。
その子の問いに小さな呻き声で肯定の意を表すると、その子はにっこりと微笑んだ。
「実は僕もあそこに行くんだ。景色が良くて、風が気持ちいいんだ」
『僕』と言うということは、やはり男の子?
彼(?)の言う“静寂の公園”とは、この最寄りのバスストップから乗車して三十分、降車して徒歩一時間にある小山の麓から、更に一時間掛かる場所にある寂れた公園だ。
その小山の頂上には樹齢二千年以上の巨木が立っており、今でも枯れずに若々しい葉をつけている。
このバスストップに他の人間がいないのは、このバスストップが小山の麓までしか行かないからであり、樹姫すら「そこに行く人は稀で物好きだ」と言ったほど。
確かに、マラディに声を掛けた彼(?)は、彼自身の色素も相俟って異質だ。
「ねぇ、良かったら一緒に行かない?」
そんな彼(?)の厚意に、断らない理由なんて無かった。
「いらっしゃい、土岡の若大将。いつもあきないなぁ」
そう言って出迎えた年老いたバスの運転士はカラカラと笑った。
「おや、今日は彼女がいるのかい?若いっていいなぁ・・・・・・」
マラディを見つけた運転士はしみじみと顎に手を当てたが、「土岡の若大将」と呼ばれた彼(?)は苦笑した。
「何言ってんの、さっき会ったばかりさ。名前もまだ言ってないし」
「いやいや、もしかしたらそうなっちまうかもよ?」
随分と愉しそうに小指を立てた運転士だが、彼(?)は小声で「呆れた・・・・・・」と言ってトランクを持って乗車。それに続いてマラディも恐る恐る入る。
実はマラディ、バスに乗るのは初めてで、どうしていいか解らず、辺りを忙しく見渡す。
それに気が付いた彼(?)が「こっちこっち」と手招きをしていたので、やはり恐る恐る行動する。
「乗り物酔いとか平気?」
「はい・・・・・・多分」
オドオドと行動するマラディに彼(?)は優しく微笑むと、マラディを窓際に座らせ、自身は立ったまま前座席の横に寄り掛かる。
それを確認した運転士はアクセルを踏み、バスを発車させる。
「そうそう、君の名前を聞いてなかったんだ。僕も名乗ってないけど」
彼(?)は咳払いをし、マラディを真っ直ぐに見て名乗る。
「初めまして。僕は土岡楼院。君は?」
そう聞かれ、マラディは顔を強ばらせながら応える。
「吹雪境・・・・・・です」
マラディの本名は『Death=malade=both』だが、彼(?)に答えたこれは偽名では無い。どちらかと言えば幼名などに近いものであり、死神だとバレないために、こちらの名前を使うようにと言われている。
「境ちゃんね、よろしく」
爽やかに笑った彼(?)は、マラディに手を差し出す。
マラディは少し躊躇ったがその手を取る。
「因みになんだけど、僕、見た目は女の子に見えるかもしれないけどちゃんと男の子だから」
そう言われマラディは、彼は容姿を気にしていたのかと思い、取り敢えずフォローしてみる。
「あー、ええっと、大丈夫ですよ。服装が女の子には見えないんで・・・・・・」
それを聞いた彼はホッとした表情を見せた。
「よかったら、僕の名前呼んでいいよ」
そんな事を言われても、困惑するだけなのだが、取り敢えず呼んでみようかなと思う。だって、今生初めての人間との対話だから。
「土岡様」
そう呼ぶと、彼はポカンとしたが、すぐに失笑した。
「もうちょっと、親しみのある呼び方にして欲しい、かなぁ~」
マラディは一生懸命考え、きっと下の名前で呼べばいいのかもしれない、と思う。それから、様付けしない方がいいのかもしれない。
「え、うと、じゃあ、楼院さん・・・・・・?」
彼・・・・・・楼院の名を呼ぶと、彼は「う〜ん」と悩んだみたいだが、そこは何とか譲歩してくれたらしく、「まぁ、それでいっか」と言った。
「着きましたぜ、お二人さん」
バスから降り、楼院の後ろに隠れながらお節介運転士に会釈し、辺りを見渡すと、舗装されていない砂利道が目に入る。
「さっ、ここから歩きだよ」
と、さっさと歩き出した楼院に、三歩遅れてマラディも歩き出す。ここから一時間、歩き続けなければいけないとなるとなんだか鬱だ。
死神の能力か魔力のどちらか一つでも残っていれば飛べたのだが。
今のマラディは、ただの人間に等しい。体力は元から人並み以上にあるし、運動神経もそれなりに高いが、長時間歩くことには馴れていない。
砂利道は陽の射す木々のトンネルに続いており、マラディは楼院に続きその中に入る。
因みに歩いている間、楼院とは一言も交わさなかった。
優しい木々のトンネルを通り抜けると少し開けた所に出て、そこからはどうやら、白と青のブロックタイル舗装がされている。
先を歩いていた楼院がトンネルの出口に立つとこちらに振り向き、逆光でその表情は見えないが、良く見ると風が吹いているらしい。
「着いたよ。おいで」
マラディはその声に導かれるかのように息を切らしてながら登っていく。
トンネルを抜けて最初に感じた風、舞い上がる新緑の空気。
手を翳して目を細めてから先に到着した楼院にお礼を言おうと顔を上げる。
「・・・・・・っ?」
しかしそこに、楼院は居なかった。どういう事だろうか?公園というだけあって広いし、錆びついてはいるが、ブランコやすべり台などの遊具もちゃんとある。
「こんにちは、待ってたよ」
聞こえてきた声にゆっくりと辺りを見渡す。
ブランコやすべり台などに隠れて見えなかった、ジャングルジムの上。そこに、彼は座っていた。
「・・・・・・楼院、さん・・・・・・?」
マラディがそう呟くと、楼院はニッコリと笑った。
「死神『病』を司るお嬢さん。改めまして。僕は『重圧力の守護者』、土岡楼院―」
「―君達の『理解者』だ」
再び風が吹く“静寂の公園”。
揺れる髪の毛と鼓動―・・・・・・。
こうも情報が少ないと驚くのかと、マラディは心中で自分のこれからを不安に思った。