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Destiny Heart's  作者: harukana
第零章
4/4

beat4 : 追われる身

誤字、脱字、感想お待ちしています

 少女と共に喫茶店に入り適当に飲み物を注文する。


「まずは自己紹介からかな? 僕の名前はレイ、レイ=ユヅキだ。シェリニカ大学で学生をやってる。君は?」


 暫く、無言が続いた。そしつ遂に少女が口を開いた。


「私は……私の名前はレンカだ……」


「さて、レンカ。お前、RGに恨みを持っているのか?」


「あなたには……関係ない……」


「どうでもいいが、RGを潰そうとしているならやめとけ」


「なぜっ!」


「君さ、自分の実力分かってないよね? 君の攻撃は僕に全て避けられたんだよ? レンカ、僕は昨日RGの連中に敗れた。僕よりも弱い君が僕を倒したRGを単独で潰せるとでも?」


「…………」


「奴らは、奇術を使う」


 僕の発言に"頭大丈夫か、こいつ"といった目で見られた。確かに、僕もそんな事をいきなり言われても信じないだろう。あまりに非科学的すぎるからな。


「信じるかどうかはお前しだいだ。僕は決定的な証拠を持っているわけじゃないからな。だが、僕の目から見たら、あれは魔法や奇術といった類のものだった」


「あなた馬鹿? 魔法とか奇術とか……。一度、精神科か眼科を行くことをお勧めするわ」


 相変わらず、酷い言われようだな。


「レンカが行ったところで死ぬだけだ。だから諦め――」


「うるさい、黙れ! 私はもう一人でも大丈夫なんだ! 弱くなんか……無い!」


「僕は警告したよ。レンカのそれは勇気ではない。今のレンカがRGに突っ込んでいくのは勇気ではなく、無謀だということを知れ」


 冷たく言い放つ。その言葉を受け、レンカは俯き小さく震えていた。それは怒りか、恐れか……はたまた両方か。


「RGを潰したい気持ちは分からんでも無い。だがな、個人で潰せるような団体であるはずが無い。RGのやっている非道を警察が知らないはずが無い。ならば、なぜ動かない? RGは下手したら国家規模の団体かもしれないんだぞ!」


「なら何だ!? 一緒に戦ってくれる仲間を探せばいいのか?」


「悪いけど、仲間なんて集まらない。命を懸けRGを潰そうとする者なんかいる訳が無い。例え、いたとしても、お前はその人の命を奪うことになる」


「ならどうすれば――」


「言っただろ? 諦めろって」


「…………」


 悔しそうな表情で俯いた。


「……諦めろ」


 そう言って僕は立ち上がり、二人分の代金を払って店を出た。


 喫茶店からで出て十分ほど経っただろうか。俺は妙な胸騒ぎを感じていた。


(僕は心配なのか……?)


 そうだよ、心配だよ。なぜならレンカは……似ているのだから。僕は急いで喫茶店に戻った。喫茶店に着き、窓から中を見てみる。そこにレンカの姿は無かった。手が汗で濡れて気持ち悪い。僕は慌てて、町の中を走った。レンカは恐らくRGが運営しているバーに向かっているのだろう。


 バーの近くに着いた僕は、レンカの姿を認めた。バーの裏側でいつ乗り込むか見計らっているようだ。


「おい、レン――」


 僕はレンカを止めるために声をかけようとしたが、気付かずにレンカは乗り込んでしまった。


(まったく、少し遅かったってか?)


 先ほどレンカが待機していた場所へ移動した。身を潜め中の様子を伺おうとした。


「おい、あんちゃん。そこで何やってるんだ?」


 声をかけられ後ろを振り向くと、怖い顔のお兄さんが僕の事を睨んでいた。RGに入っている連中って何でこんなに厳ついの? といったくだらない事を考えてしまった。


「実は……迷子なんです」


「はあ?」


 驚いたような顔をしている。確かに二十過ぎた俺が迷子なんて言ったら、こんな反応になるか。


「人を探していたらこんな所まで来てしまって……」


 男は、怪しそうな表情で僕を見ている。


「あ、そ、その、すみませんでした! ぼ、僕はもう帰ります」


 そう言って、僕は男の後ろに回りこみ


「何て、言うと思いましたか?」


 思いっきり男の背中を蹴り飛ばした。


「ぐぬぅ……」


 男は倒れこんでしまった。その時、ボキッと鈍い音が聞こえたような気がした。


「力加減ミスったかなぁ……」


 僕はそう呟き、再度中を覗き込んだ。中を見ると入り口付近に数人の男が倒れているだけで、他には誰もいなかった。


(捕まったのか?)


 僕はいそいで、バーの中に入った。






 暫く進むと、とある部屋から話し声が聞こえた。その扉に近づく。


「よくやったぞ、お前達。今月の給料を上乗せするぞ」


「「「「「ありがとうございます!」」」」」


「さて、この娘はどうしようかね」


 ボスらしき人物はそう言いながら、レンカに向かい歩き出した。レンカをまじまじ見ていると、いきなり表情が変わる。


「ハーハッハッハッハ! お前ら、よくやった! お前らには神術を授けよう」


 途端、男共がざわつく。神術か……。それにレンカに近づいてからいきなり上機嫌になったな……何故だ。いや、考えるのは後だ。


「お前ら、今与えた神術を使って、この娘を殺せ」


 その言葉と共に空気の流れが変わった。不思議な力の流れを認める。あの攻撃がくるのか。


(まったく、黙って見てられるのはここまでかな)


 僕は、扉を開け、部屋の中に入る。


「いつまで、こそこそ隠れているのかと思ったよ。……ほう。お前、レイ=ユヅキか」


 赤黒い髪に、黒で統一された服に身を包んだ女性がニヤリと笑ってこちらを見てくる。


(…………まさか、な)


「貴様まで現れてくれるとわな。楽しくなりそうだ」


「レンカを返してもらうよ」


 僕はそう言いながら、刀を鞘から抜き出し構える。しかし、女は不敵な笑みを浮かべている。しかし、女は何もしてこない。


「チッ」


 僕はレンカの場所に走って移動する。そして、レンカを拘束していた縄を切る。


「レンカ! 逃げるぞ!」


 戸惑っているレンカの手をしっかり握り、今来た道を戻りだした。


(何故だ!? 何故襲ってこない!?)


 気味が悪い。まるで、何か強大な罠にかけられているような……。


 バーから出た僕らは、僕の家に行くことにした。







 現在、無事襲撃も無く家に着いた。そこまで大きくは無いが、一戸建てだ。レンカを自分の部屋に連れて行く。部屋にはクローゼットに机、ベッド、戸棚といった必要最低限の物しか置いてない。戸棚は医学書で埋まっている。部屋は特に散らかってはいない。家には寝に帰るぐらいだからだ。


 適当な場所に座ってもらったが、会話は一切無い。僕は彼女が何かを言うまで黙っていた。時間にして一時間は経っただろうか? レンカは何かを言いかけようとするが、すぐに俯き黙ってしまう。そしてついに口を開いた。


「あの……ありがとう」


「ん、どういたしまして」


「その……勝手な真似をしてごめんなさい」


「別に謝る必要は無いよ。レンカと僕は仲間でも、友達でも無い。僕らは赤の他人なんだから」


「……なら! 何で助けてくれたんですか……?」


「…………」


 答えにくいなぁ。


「それは……困っている人がいたら助ける、当然の事だろ?」


 僕はこの言葉が嫌いだ。この言葉を聴いてレンカは少し驚いていた。


「何だよ?」


「いえ、あなたがそういう事を言うような人には見えなかったので……」


 うん、合ってるよ、それ。


「だって嘘だし」


「…………」


「わかったわかった。マジな話をするとだな……ってそんな事はどうでもいいんだよ」


 あやうく、会ったばかりのこいつに理由を言う所だった。まあ、別に言っても良いんだがな。


「問題なのは、レンカ。もし、僕が助けに来てなかったらどうなっていたと思う?」


「それは……殺されていたかもしれない」


「殺されそうだった時、気分はどうだった?」


「…………」


 軽く震えだすレンカ。どうやら先ほどの事を思い出しているようだ。


「恐れを抱き、後悔する。顔からは血の気が失せ、胃が痛くなる。そうだろ?」


「……う……ん」


 それを経験できたならいいか。もう馬鹿な真似はしないだろう。


「その感覚を決して忘れるな。で、レンカはこの後どうすんだよ?」


「私は……RGを潰す」


 やっぱりか……。


「傭兵なんか雇ってみればどうだ?」


「傭兵? あんな臆病者を雇ったら足手まといになるだけだ」


「酷い言い様だな。まあ、確かに言いたい事は分かるけどね。まあ、なんにせよ今動くのは危険だ。RGはたぶんお前を探しているはずだ」


「そうか……なら取り敢えずは身を潜められる場所を探す」


「それがいいな。さて、とにかくもう寝ろよ。見張りは僕がやっておくからさ」


「そんな訳には――」


「明日からは結構辛くなるかもしれないだろ? 今日ぐらいは休め」


「では……甘えさせてもらう」


「ん、おやすみ」


 僕は部屋の電気を消し、部屋から出る。そのまま玄関へと向かった。






「何か用かな?」


 玄関の前にいるであろう人物に声をかけ、玄関の扉を開ける。


 家に帰ってくる間尾行されたのか? 我ながら気付くのが遅れた……。


「ほう、気付いていたか」


「さっきな。で、何か用かい?」


「君と彼女の鍵が欲しいんだ。この意味わかるよね?」


 こいつ……。そうか、もう六年経ったのか。


「悪いけど、鍵を渡す事は出来ないな」


「はは、もう準備は進められている。君たちは追われ続ける運命なんだよ。そう、永遠に追われて死ぬか、鍵を差し出すか」


 僕は黙って刀を抜く。


「ふふ、今日は争うつもりは無いさ。だから刀を納めてくれないかい? ただ一言、鬼ごっこの開始時間を伝えに来ただけだよ。"午後三時にこの家を襲撃する"とね」


「何故、わざわざそんな事を言いに来た……」


「さあね。ボスの考えていることは分からないからね。申し送れた、私はルジオだ。また会おうか」


 そう言って去っていく。完全に周囲から敵の気配が無いと確認してから僕は刀を納めた。この家にはもういられないな……。分かってはいたが、RGの前に姿をさらしたのは不味かったかな。仕方ない、大学にしばらく休むと連絡しておくか。

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