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Destiny Heart's  作者: harukana
第零章
2/4

beat2 : 謎の少女

誤字、脱字、悪い点、感想お待ちしています。

 硬く冷たい感触に意識が戻ってきた。妙に体が冷えていて、僕は眠たい目を開け、辺りを見回す。


「ここは……?」


 開けっ放しの扉、暗く窓の無い部屋、そして僅かに薬品の臭いが鼻をついた。ここは、薬品室だろうか。


「なんで、こんな場所に?」


 ここから出ようと体を起こそうとしたその時だった。


「いたっ!」


 腹部の強烈な痛みに、完全に意識が覚醒した。そうだ……僕は確か襲われたんだ。そして、斧を振り下ろされたはずなんだけど……助かったのか?


 僕は近くの戸棚に手をつき起き上がる。そしてそのまま、のそのそと薬品室を出た。廊下は真っ暗で、何故だか不気味に感じられた。夜まで、教授の手伝いをすることはあったが、不気味に感じたのは初めてだった。


「早く家に帰ろう」


 不気味な感覚に僕は焦りを感じていた。気付けば腹部の痛みさえ忘れ、無我夢中で走り出していた。我に返ったときは大学から結構離れた公園の近くにい

た。


「はぁ……はぁ……」


 頭はクラクラし、足元がおぼつかない。口の中は物凄く苦く、立っているのさえ苦痛に感じた。僕は……何をこんなに恐れているのだろうか? どうも気分が優れない。僕は公園にあるベンチに座り込んだ。






 しばらくして、足音が聞こえてきた。その音に恐怖を覚え、僕は思わず叫んだ。


「僕に……僕に近寄るな!! こっちに来るな!!」


 自分でもびっくりしていた。これほどまで恐怖を抱えていたこと、そして思わぬほど声が大きかったこと、に。びっくりさせてしまったかなと思い、謝罪

の言葉を述べるため僕は顔をあげた。そこには一人の少女が立っていた。


「あの、いきなり叫んで悪かった」


 顔を良く見ると懐かしい感じがした。茶髪で少し癖があり、肩に髪がかかっている少女。見た感じ僕よりは歳が下だ。少女は僕の顔を見ると少し驚いたような表情をし、そして蔑んだような目で見てきた。


「な、なんだよ」


 なんでそんな目で見られなくちゃいけないんだよ! その顔でそんな目をするなよ……。


「あなたの大学に今日RGが入り込んだでしょ? その事について聞きたいのよ」


「GR? 今日の侵入者がRGだったって言うのか?」


 そう僕が聞くと、呆れたような顔で僕に言う。


「あなた、知らなかったの? TVでも騒がれてたじゃない」


 TVと言われてもなあ……。家には寝るだけのために帰ってるし、大学では講義や実験ばっかだからな。そんなもの見る暇など無い。


「さっきまで気を失ってたからな……。それにTVを見てる暇は無いんだ」


「そう……そんな情報網じゃ、いずれ身を滅ぼすわ」


「自分の身ぐらい自分で守れる。余計な心配はいらない」


「さっきまで気絶してたのは何でかしら? それに例え自分が守れても『大切な人』は守れないわ」


「ッ……!」


 さっきから何なんだ、こいつは! 侵入者に遅れを取ったこと、そして先ほどから気分が優れないことで精一杯なのに、こいつの話を聞くと今にも怒りが爆発しそうになる。


(なんで、こんな奴にそんな事言われなきゃならねえんだよ!)


 僕は自分の怒りを静めるため、そしてこの少女から離れるためにその場から立ち去ることにした。


「僕は疲れてるんだ! 帰らせてもらう」


 少し声を荒げ、少女の横を通り過ぎようとする。しかし、先に進むことは出来なかった。彼女が剣を抜いて僕に向けてきたからだ。


「負傷し、武器も持っていない一般の学生に刃を向けるなんて……教育がなってないな。まったく、これだから最近の若い輩は……」


 お前も若いだろ! とか言うツッコミは来なかったが、その代わり少女の体はプルプルと震えていた。


「本当に疲れてるんだ……だいたい僕が何したって言うんだよ。君少しおかしいよ」


 疲れてる所為か、苛立っている所為かそんな言葉が口から出る。その瞬間だった。少女は剣をなぎ払ってきた。僕はバックステップで回避していた。


「まったく、いきなり何なんだよ」


 その言葉を無視し剣を振り回す。僕はそれを避け続けた。訓練は詰んでるな……だいたい三年ってとこか。まだまだ甘いな。実戦経験が少なそうだ。


「なあ、もう終わりにしないか? いくらやっても無駄だろ?」


 その言葉に怒りを覚えたのだろう。太刀筋が荒く、読みやすくなっている。言葉ではなだめているが、実際は少し楽しんでいたりする。


「まったく、仕方ないな……」


 さて、そろそろ遊びも終わりにするか。



  今だ!



 僕は少女の隙をつき、剣の柄の部分に蹴りを放つ。少女の手から剣は離れ空中に飛ぶ。僕はそれを手に取ると少女の喉下手前に突きつける。


「勝負あったな」


「くっ……!」


 悔しそうな表情だ。さて、どうするかな。


「さて、と。まったく、何の真似だ。一般人相手に剣を振り回すなんてよ」


「それは、あなたが……」


 さっきの挑発のことか。こちらだって苛立ってたんだ。仕方ない、仕方ない。


「あれだけの事で腹を立てたのか? あれだけで斬り付けるとか沸点低すぎだって……。だいたい、先にちょっかい掛けたのは君じゃないか。もし、僕が大怪我を負ったり死んだらどう責任を取るつもりなんだ?」


 僕はまくし立てるように言った。僕はどう考えても被害者だ。悪いのは相手だ。僕は悪くない。


「…………」


 謝ったりするのかなとも思ったがどうやら謝る気は無さそうだ。


「それじゃあ、さっきも言ったが僕は疲れてるんだ。今度こそ帰らせてもらうよ」


 僕はそのまま家路についた。最後彼女が何かを言おうとしていたが、聞き取る事が出来なかった。






 家に着いたのは、大学で倒れてたこともあり午前四時を過ぎていた。もうほとんど寝ることは出来ないか。大学で倒れていたのは余計に疲れてたみたいだ。僕はすぐにベッドの中に潜り込んだ。頭の中で思い出されるのは侵入者――少女はRGといっていたが――との戦いで使われた奇術の事だ。御伽噺に出てくるような魔法を連想させられる。それにあれだけの痛みがあったにも関わらず、たいして外傷が酷くないという事も気になる。


「まったく、どうなってるんだよ」


 気にはなるものの、考えても答えは出せそうに無かった。僕は諦めて眠りについた。



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