表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

テクマクマヤコン といえば、変身の呪文な訳で

魔女姐さんは、娘の周りを一周すると、フフフ と笑いました。


「今夜の主役が 好きそうなカラダしてるねえ、上玉じゃないか。

あの小生意気な小僧にくれてやるには惜しいけど、これも約束だ。」

いきなり 意味深な過激発言

娘は ゾゾゾ としましたが、その後から 眩しい光の筋に包まれ そんなことも忘れるほど 目眩を覚えました



目を開けたときは…まあ なんということでしょう

着ていた作業着は 淡いにパステルカラーに彩られた上品なドレスになりました!

たっぷりとした ドロープに、ふんわりとしたリボンが 添えられて、 動くたびに 布に織り込まれた錦糸がキラキラ光ります


「すっ…」

絶句する程のゴージャスさ

耳には ユラユラと揺れるロングイヤリング

長い黒髪に映える赤い花の髪留めも いまなら セットでおまけつき


差し出された手鏡に写る自分は、完全に別人

薄化粧までしちゃったアタシは どちら様でしょう?


あまりに見慣れない自分の顔。ここまでくると、笑えてきます。

そのキョドりっぷりに、魔女姐さんが 先回りしていいす

「なあに、『孫にも衣装』なんざ 言わせたい奴に言わせればいいのさ」

まあ、うん。

自分のキャラと似合ってるかは別として、よくいる社交界の御嬢さんに引けは取らない 立ち姿ではあります


「いいねえ、我ながら いい案配に仕上がったもんだねえ …」

魔女姐さんが なにか 続きを言いかけました。

「えっ?」

我にかえる娘。

魔女姐さんは ニヤリと笑いました

「そのドレス、背中のリボンで止めてるんさ」

んんん?

「いや、こっちの話だ。 殿方に背中をとられる時は、相手を選ぶんだよ?」フッと笑って 一度だけ娘をみやりました

娘は、「リボンの形が 崩れやすいってこと?」気になりましたが 差し出された靴にみとれて 聞きたかった事も 忘れてしまいました。

そのさまを、魔女姐さんが 「まあ、いいか。その方が面白そうだ」と ほくそえんでいたのも知らずに。



渡されたのは、見たこともない 透き通った素材の靴

「うわ、キレイ!」

娘は、驚きの声をあげました。それは、靴なのに 透き通った素材の不思議な靴。

部屋の薄暗いランプの光を受けて 煌めいています

「お前さんは、知らないかもしれんけどさ。

お前さんのお父上は 東方貿易に明るかったんだよ。 自分の娘が年頃になったら 贈ろうと思って 内緒にしていた秘密の靴だ」

並んで揃えられた靴、魔女姐さんが 支えてくれながら脚を入れると。

「これには、お父上とお母上の願いが籠ってる。縁起モンのご加護だよ、今夜は楽しんでおいで」

魔女姐さんは、ウィンクして 戸口を指しました


そこには、真っ赤なカーペット。

いつの間にか真っ直ぐに敷かれていて、その先には 優美な曲線を描く馬車が待っていました


…暖かみのある茶色ともつかぬオレンジ色をしているしている馬車。

あれは、さっきのカボチャが 化けた?


「あしたの朝食、どうしよう…」

娘は、チラリとそんなことを思いましたが、カーペットを踏んだ途端、そんなことは 忘れてしまいました


馬車に乗り込んで、魔女姐さんが、見送りついでに 言いました

「いい忘れたけど、魔法は 保って夜中までだよ。城の大時計が 12回鳴ったら、解け始めるから それまでに帰っておいで」

…そうなんだ。

娘は、うなづきました。


まあ、長居するつもりもないし、長居できる技量もないも思うし。


「じゃ、楽しんでおいで。

お前さんに、神のご加護がありますように」

魔女姐さんが キセルを最後にフーッと吹くと その息は キラキラと輝き出して 馬車の周りを取り囲む光の霧となり…息を飲む間もなく、空に舞い上がりました

そして、娘が気が付いた時には 一人 城の回廊にたたずんているだけとなっていました




娘を見送り、一人残った魔女姐さん。

満足そうに 空を駆ける光の馬車を眺めていましたが、キセルの煙とともに 呟きました


24時迄に帰ってこいと言ったのは 魔法の持続性何て理由じゃない

「このアタシが そんな ハンパな腕 見せるわけないじゃないか」

足元の黒猫が喉を鳴らして 擦り寄ってきました


まっ 本当の理由は、

「男は 深追いするもんじゃない。」

愛猫を話し相手に 城を眺めては 独り言は続きます

「適度にジラして 追って越させて 『捕まってあげる』のがいいのさ。初対面同士が 夜耽るまで 一緒にいるなんざ、無粋だねえ」


キセルの灰を払いつつ、魔女姐さんは呟き、最後に 息を吐きながら 祈りました


「ご勝運を」




ちなみに。

魔女姐さんが 着せてみせたあのドレス。

背中のリボンを引けば 簡単に 胸元が寛ぐ 脱着ラクラクタイプ…!!


良いですねえ!

我らがお嬢は コルセットが大っ嫌いですからね、丁度いいんですよ。

いやいや、んなわけ ないでしょ


「清楚に見えて 脱がせたくなる一張羅で 現れるなんざ コテコテじゃないか。

魅せて減るもんじゃない。方乳の一度や二度 拝ませるってのも ご愛敬ってもんだ。」


…物騒なオバさんですね。やれやれ





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ