雪の降る街
初参加のテーマ小説の、雪小説です。小説というより、詩のような仕上がりです。ほかの方々も同じく「雪小説」で投稿なさっているのでよろしかったら是非…
しんしんと降り続ける白い粉。
綿のように柔らかいのに、人の命を奪っていく。
もうどれだけの時を過しただろうか。
この白い粉はいつまで降るのだろうか。
僕の命はいつ連れて逝かれるのだろうか。
冷たい、重い、眠い・・・こんなにも柔らかいのに。
どんなベッドよりも寝心地がいいのに・・・何故だろう?
「起きて!!こんなモノに負けないで!!」
ああ、遠くで僕を呼んでいる。
―――――本当に?
僕は呼ばれている?
柔らかくて気持ちいいのに―――何故?
白い白い世界。
見渡すかぎりの白。
他の色はない。
でもここに居るのは居心地が悪い―――何故?
まぶたを開ける。
やっぱりそこは白い。
頬に温かいモノが伝う。
これは何?
温かい・・・・・・
「お願い、どこにも逝かないで・・・」
僕は呼ばれている―――誰に?
ああ、遠くで僕を呼んでいる。
―――――待って!!
そうだ。
僕は君に。
君に言わなきゃいけない。
しんしんと降り続ける白い粉。
白い白い世界。
見えたのは君の涙。
僕は君の頬に手を触れる。
そこにはたくさんの、繋がれた管。
僕の命を繋ぐ管。
これを取り去ったら僕の命は奪われる。
こんなものに頼らなければ生きていけない。
ねぇ。
君は何で泣いているの?
そんなに温かいのに。
僕の涙はきっと冷たいだろう。
―――――あの白い粉のように。
重く、君を殺してしまう。
僕なんかのために君が死んでしまうのも、繋がれてしまうのも嫌だ。
「僕は君に言わなきゃいけない」
酸素を送るマスクが邪魔で声がこもってしまう。
ちゃんと言わなきゃいけない。
ねぇ、僕は君に泣いてほしくない。
君の温かいモノを失わせたくない。
「僕は・・・君を愛せない」
君の温かい身体を抱き締める力さえない僕。
―――――どうして傍にいてなんて言えるだろう?
僕の心はあの白い粉のように冷たくなったのだろうか?
あれにのまれない、のまれたくないと思った心に反して・・・
ああ、遠くで君が泣いている。
泣いてほしくない。
泣かないで。
君が泣くと僕の頬が温かくなるんだ。
染み込むように心まで。
「あなたは私を愛していないの?」
いいえ。
僕は君を愛してる。
だけど言えないだろう?
抱き締めることも出来ない腕しかないのに。
一生を誓う命もないのに。
どうして君を愛してるなんて言えるだろう。
「僕は君を愛せない。愛していない」
また君は泣くんだね?
でも僕を忘れて。
愛してる。
心から。
でも君を死なせるわけにはいかない。
僕の心は白い粉に埋まっていく。
冷たくて、重くて、悲しくて。
君を失うのが怖くて。
しんしんと降り続ける白い粉。
君はもういない。
見て、この白い粉を。
僕はこれが溶けないうちに消えるから。
ねぇ、どうか君は泣かないで。
僕の心は温かくなってしまうから。
君を望んでしまうから。
温かいモノがほしかった。
安らげる場所がほしかった。
僕は望みすぎたね。
君を。
さようなら。
僕は逝く。
白い白い世界へ。
最期に思うのは君の温かい、涙。
白い粉を溶かす、涙。
ああ、遠くで君が泣いている。
嬉しい―――――君の涙が。
悲しい―――――君の涙が。
泣かないで、泣かないで。
僕は逝く。
白い白い粉の世界に。
温かさを亡くした冷たい世界へ―――
少し哀しみ色がネコは好きなんです(=^;Å;^=)雪はネコにとって死を連想させるもので、このような仕上がりになりました。読んでくださってありがとうございます。