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その話が終わると、クラウス様は席を立ちあがった。
「とにかく、それは表向きの話だ。真実は他にある。だが、ここでゆっくり話をしている暇はない。今すぐ君の祖国へ出発しよう」
そういうと、クラウス様はエリーナを呼んだ。
すぐに、扉が開かれ、エリーナが姿を現した。
「すぐにイングランシャ国へ向かう。ジュリアの準備を頼む」
そういうとクラウス様は私の手をとり、椅子から立ち上がらせた。
「詳しい話は、あちらに行ってからにしよう。これは君一人の問題ではないんだ」
その言葉に、不安が過る。
「大丈夫。必ずご両親を助けるから」
私の不安を読み取ったかのように私をギュッと抱きしめる。
・・・大丈夫。きっとこの方は両親を助けてくれる。
そう思うと、クラウス様の腕から身体を離し、クラウス様を見上げた。
「ありがとうございます。私には、クラウス様がいらっしゃるんですもの。大丈夫ですわ」
にっこりと笑顔を作ると、クラウス様は頷き部屋を後にした。
「ジュリア様、急ぎお支度を」
クラウス様がいなくなるとエリーナは、私のドレスを持ってきた。
「そうね。きっと、大丈夫。父も母も助かるわ」
一緒になって心配してくれたエリーナに、安心させるようにそういうとエリーナも頷いてくれた。
「はい。私は公爵様も奥様も信じております」
私たちは、祖国に戻る為準備を始めた。
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次の朝早く、私とクラウス様は馬車に乗りイングランシャへと走り出した。
馬車での移動は時間がかかるうえ、長時間揺られ続けることも身体に負担がかかる為、休憩を何度も挟みながらの進行となる。
やっとのことで、エルステリア国の国境近くまで来た時には、すでに城を出て1週間。もう少しで国境を超えると言う所で、突然馬車が止まった。
「何事だ?」
クラウス様が外に声をかける。
「申し訳ありません!この先道が塞がれておりまして、少々お時間を頂けますでしょうか?」
外から、そう声がするとクラウス様も溜息をつき外に声をかける。
「分かった。早くしろ」
「はいっ!」
返事が聞こえると、従者が走っていく音が聞こえた。
「すまない。そういう訳だから、少し待ってくれるか?」
先を急ぐ私を気遣ってか、クラウス様が申し訳なさそうにそう言った。
「もちろんです。それにしても道がふさがれているとは、何かあったのでしょうか?」
災害によるものなのか、人為的なものなのか。
「・・・そうだな。ちょっと私も見てこよう。ここで大人しくまっていてくれ」
そういうと、額に口づけをし、クラウス様も外に出た。
しばらく、一人馬車の中で待っていると、扉が開いた。
「クラウス様?いかがでしたか?」
ふっと扉の方を見るとそこには見たこともない男が立っていた。
「何者ですかっ!」
「ジュリア王妃様でいらっしゃいますね。お迎えにあがりました」
そういうと、男は私の口を布のようなもので塞いだ。
その瞬間、ふっと何かの薬の様な匂いがしたと思うと急に目の前が暗くなった。