第39話
目を覚ますと、ベットの傍で椅子に座ったままエリーナが泣きはらした目で眠っていた。
周りを見渡してみても、カーテンが閉められていて今がどのくらいの時間なのかわからなかった。
「・・・私・・・・」
ぼぅっとする頭を起こし、なぜまたベットの上で眠っているのかを考えた。
「・・・そうだわ・・・・お父様とお母様が!!」
私の声に、傍にいたエリーナが動いた。
勢いよく身体を起こしたその瞬間、私と目が合い、エリーナは申し訳なさそうに頭を下げた。
「も、申し訳ありません!!」
「エリーナ、落ち着いて。大丈夫?あなたも目が腫れてるわ」
二人揃って泣き疲れて眠ってしまうなど、一体いつ以来だろう。
子供のころは良く、母に怒られてそんな事があったのに・・・・。
その母も今は祖国の牢に閉じ込められていると言う。しかも、死刑と・・・・・。
またこみ上げてくるものがあったが、そこをぐっと我慢し、私はエリーナと向き合った。
「・・・エリーナ。一体、祖国で何があったの?」
彼女に問いかけて見るが、彼女が泣いている時点でその理由を知っているはずがない事はわかっていた。
「・・・申し訳ございません。私にも一体、何がどうして、公爵様と奥様があのようなことに・・・・」
エリーナは自分の言葉に再び涙が込み上げてきていた。
「・・・・しっかりしなさい。今、私たちが泣いていても状況が変わるわけではないでしょう?とにかく、事の顛末を把握しないと・・・・」
エリーナは私の言葉に、涙を止め、頷く。
泣きたい気持ちは痛いほどわかる。
だが、先程も言った通り泣いている場合ではないのだ。
「とにかく、この事をクラウス様に報告致しましょう。それから、お手を煩わせてしまいますが祖国の事を調べてもらえるようお願いしましょう」
私一人では何も出来ない。
クラウス様が最近、忙しい事は重々承知しているが、こればかりは彼に頼らざるを得ない。
「すぐに、クラウス様に面会の知らせを。何が何でも話を聞いてもらえるようにお願いして頂戴」
「かしこまりました」
エリーナは先程までの表情とは違い、しっかりと頷くと部屋を後にした。
「・・・・私もこんなところで倒れている場合ではないわよね。いくら遠い異国の地にいてもお父様とお母様の危機にじっとなんてしていられないわ」
誰に聞かれる事もなく、自分自身に言い聞かせるようにそういうと私はベットから下りた。
そして、机の上に置かれっぱなしになっていた手紙をもう一度よく読みなおした。
「・・・・トルファ公爵家当主 マット・トルファおよびその夫人、ディーナ・トルファ両名を逮捕。一月後、両名の死刑が決定・・・・・」
なぜ・・・・。父と母が逮捕されなければいけないのか。
浮かんでくる涙を再び堪え、何一つ見落とさないよう続きを読んだ。
「現在は、イングランシャ城内の牢に入牢中・・・・」
「・・・・お父様っ・・・・、お母様っ・・・・」
堪えられない思いが言葉となってこぼれ落ちる。
どうして、こんな事になったのか・・・。
それは、どこにも書かれていなかった。一体、父と母が何の罪で牢に入れられたと言うのだ!?
手紙は簡素なもので現状だけが書かれていた。
ふと、手紙が2枚ある事に気づく。
先程は、1枚目の内容を読んだだけで思わず気を失ってしまっていた。
「・・・・なっ!!!そんな!!」
1枚目以上に驚愕する内容に思わず手紙をその場に落としてしまった。
「・・・私とリアーシャ様が・・・・・・・・」
その時、ふと小さい頃にみた光景を思い出した。
まだ、私が幼かったころ、父と母が深夜に何かを話し合っていたあの場面を・・・・。