37 ~リアーシャ~
短めです。
私は、なんとかトレース陛下から逃げた。
ベットに投げられ、覆いかぶさってきた彼は私を通して誰かを見ていた。
力では敵う訳もなく、私は護身用として持っていたナイフを取り出して陛下の首筋に充てた。
「・・・離して下さいませ・・・」
なんとか絞りだした声は震えていた。
首筋にナイフを突き付けられたトレース陛下は私の首筋から離れて、にやりと笑った。
「・・・興ざめだ。箱の中で大事に育てられたお姫様だと思っていたが、そんなものを取りだすとはな」
そういうと、簡単に私の手首を捻り上げ、ナイフを床に落とした。
「・・・いっ!!」
あまりの痛さに叫んでも、トレース陛下は面白そうに笑うだけだった。
「大事なのだろう?婚約者様が。だったら、こんな馬鹿な真似はしない事だ。彼の国では私の力が必要だ。そうだろう?」
ふっと、手首の痛みから解放されたかと思うと、トレース陛下はさっさとベットから下り、部屋を出て行った。
残された手首の痛みに、泣きそうになりながら私は思った。
「・・・・ウィル・・・。・・・・・・ジュリア・・・」
私のせいなのだろうか。
全ての事実をトレース陛下から聞かされた時、私の目の前は真っ暗になった。
それと同時に許せないという感情もわいてきた。
だが、彼女も私と同じでただ大人たちの都合に振り回され巻き込まれただけ。
そう思うようにするのだけれど・・・・。
「どうして・・・・」
ジュリアだけが幸せになれるの?
乱されたドレスを整えると私はベットを下りた。