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あれから、数日が過ぎた。
「・・・ジュリア様。お体の調子はいかがですか?」
「えぇ・・・。大丈夫よ」
あの夜から何度か同じ様な夢を見る。それはリアーシャ様の子供の頃から今現在に至るまで・・・。
時には私自身の姿が出てくることもあった。ただし、それはリアーシャ様が見ている私だ。
「国王様にご相談されてはいかがでしょう?・・・・、今は大丈夫でもいつか必ず体を壊してしまいます!」
エリーナが私を心配してくれている気持ちが痛いほどわかる。
だが・・・・。
「いいえ、今はいえないわ。先日、東の国が戦争の準備をしているとの報告があってからクラウス様はお忙しいのに、たかが夢ごときでお手を煩わせることはできないわ。それに、今はまだ本当に少し眠れないだけでどこも悪くないのだから大丈夫よ。もし、この夢が毎晩続いてどうしようもなくなったらクラウス様にもちゃんと報告をするわ」
もう一人で抱え込まないと決めた。だが、今はまだ何も問題ではない。
少し眠りが浅くなっているだけのこと。その分、昼間に少し横になっているので体調が崩れるなどということは全くなかった。
ただ、気になることはある。
毎晩ではなくても、たまに見るリアーシャ様の夢はいつも悲しい想いか辛い想いをしているのだ。
それが何かを意味している様に思えてしょうがなかった。
「ねぇ、エリーナ。リアーシャ様のご結婚はいつになるのかしら?戻られてそろそろひと月がたつわよね?」
何か嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
「そうですね。しかし、今はリアーシャ様の嫁ぐ国も戦争に加わるとか加わらないとか・・・。ご結婚と言っている場合ではないのでしょうね」
エリーナの言葉に私は驚いた。
「え!?ウィルト殿下のお国が!?・・・でも、彼の国は東ではなく南に位置するのでは・・・」
「はい。ですが、どうも同盟国が東の国にあり、そこから援助を依頼されているようで、殿下ご自身が戦地に赴くことはないのでしょうが、かの国も色々と大変だと伺っております」
同盟国からの依頼。戦争になれば兵士の数は必要になる。
もちろん、そのような依頼がないこともないのだが、まさかウィルト殿下のところでそのような事が起こっているなどとは全く知らなかった。
「・・・私はまだまだ勉強不足のようね」
クラウス様が忙しくされているのもきっといろいろと関係があるのかもしれない。
それにしても、リアーシャ様は大丈夫だろうか?
いくら戦地に赴くことはないとは言え、大事な人が戦争に加わる事に心を痛めているのではないだろうか?
もしかして、最近見る夢はそれに関係しているのではないだろうか。
「・・・現在、リアーシャ様はどちらにいるのかしら?エリーナは知ってる?」
祖国にいらっしゃるのであればいいのだけれど・・・。
「どうでしょう?ちょっとわかりかねますが、お調べいたしましょうか?」
「えぇ、お願いできる?それから、リアーシャ様に手紙を書くから紙とペンの用意もお願い」
「かしこまりました」
エリーナはそう言うと、部屋を後にした。
なんだが胸騒ぎがする。
今回のこの戦争。我が国には全くとは言わないが、あまり関係のないところで起こっているはずなのに、何かとても嫌な予感がするのはなぜだろう。
「・・・・雲行きも怪しくなってきたし・・・・」
何事も怒らなければ良いのだけれど・・・。
ふと視線をやった窓の外を見ると今にも雨が降り出しそうな雲に覆われ、外は暗くなっていた。