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久しぶりの投稿です。
「・・・クラウス様・・・」
「ジュリアか。もう少しで終わるからそこで待っていてくれ」
そう言っていつものソファーに腰を掛けておく。
昨日はリアーシャ様の元へ行っていて来られなかった午後の休息の時間。
ふと、見上げるとそこには書類に目を落としているクラウス様の姿がある。
いつもならばその姿を眺めながら静かに彼の仕事が終わるまで待っているのだが、今日はするりと言葉が零れた。
「・・・なぜ、側室などと嘘をつかれたのですか?」
私の言葉に書類を読んでいた視線が止まった。
「・・・・何の事だ?」
何事もなかったかの様にクラウス様の手元にある書類が次のページへとめくられる。
「リアーシャ様に全て伺いました。私を呼びもどす為にその様な嘘をついたと。しかし、それでしたら、私が戻った時点で終わったはずです。なぜ、わざわざリアーシャ様を巻き込んでまで舞踏会を開かれたのですか?」
今度こそクラウス様の書類が手元を離れ、溜息が零れる。
「・・・・リアーシャに聞いたのか」
「・・・はい」
クラウス様が顔を上げ私を捕える。
「・・・・ならば、リアーシャに聞いた通りだ。君をこの城に呼び戻す為にあのような舞踏会を開いた。それだけ私は焦っていたからな」
そう言いながら、クラウス様はいつもの向かい側の席に着くのではなく私の隣りへと腰を下ろした。
「そういう事ではありません!なぜっ・・・」
「暖かいお茶を入れてはくれないのかい?」
話の途中で言葉を被せられ遮られた。
にこりと笑うその笑顔におもわずため息がこぼれる。
「・・・・わかりました。少々お待ち下さい」
傍に用意してあったポットに手をかける。
カップにそれを注ぐとふわっとジャスミンの香りが鼻をくすぐる。
「・・・熱いので気をつけて下さい」
そっと、クラウス様の前にカップを置くとそれを手に取りコクリとクラウス様の喉を通って行く。
「うん。体が温まるよ」
音を立てながらカップが元の位置に戻されると、クラウス様がこちらを見て口を開いた。
「・・・ジュリア。君は何のためにそんな事をきくのかい?そんな事を知ったところで何をしようというの?」
優しい口調に優しい笑顔だ。
だけど、その奥には深くかかわる事を拒否する意味を含んでいる。
「何をしようと言う訳ではありません。なぜそんなことをされたのか知りたいのです」
そう。そんなことをしなければ、リアーシャ様が傷つくことはなかったかもしれない。
舞踏会などなければ、リアーシャ様は婚約者様のそばで笑っていたかもしれない・・・。
そう思うとどうしてもその理由を知りたかった。
「・・・まだ・・・今は君には話せない・・・かな・・・・。彼女は体調が戻り次第、国に返そう。彼女の婚約者も今こちらに向かっているところだろう」
歯切れの悪い言葉に、私の知らない所でやはり何かあるのではないかという思いがますます強くなり不安にかられた。
「一体何があるというのですか・・・?」
思わず突いて出る言葉にクラウス様は目を瞑り首を振るだけだった。
「・・・とにかく、今はリアーシャの傍についていてあげなさい。君がいれば彼女も落ち着くだろう」
そう言うとクラウス様は席を立ちあがり、再び机へと向かった。
残されたテーブルの上にはまだ湯気が立っているお茶が置かれたまま・・・。
きっと、彼はこれ以上話すつもりはないのだろう。
気づかれない様に溜息をつくと、私も席を立ち部屋へと戻る事にした。
「・・・・今夜は部屋に戻れないかもしれない。先に寝ていてくれて構わないよ」
部屋を後にしようと扉に手をかけた瞬間、クラウス様の言葉が聞こえた。
振りかえると、彼の視線は書類の上に落ちていた。
再び出そうになる溜息を抑えながら、私は返事をして部屋を後にした。
廊下に出ると、そこで待機していたエリーナと目があった。
「おかえりなさいませ。ジュリア様。クラウス様とお話できましたか?」
にこにこと笑顔で迎えてくれるエリーナに笑い返そうとするが、上手く笑顔が作れていない事がわかる。
「・・・・どうかしら・・・。肝心な事は何も言って下さらなかったわ・・・・」
ぽつりと本音が零れるとエリーナも困ったように肩をすくめる。
「きっと、国王様には国王様のお考えがあるのでしょう。さぁ、お部屋にもどりましょう」
さくさくと私の後ろに付き促されるままクラウス様の部屋の傍を離れ自室へと向かった。
あけましておめでとうございます。
新しい年を迎えても一向に成長しない文章力にいらいらされる方も多いかと思いますが、しょうもないと思って見て頂けると幸いです。
もちろん、読む気にもなれないと言う方は迷いなくまわれ右で構いませんww
どうぞ、今年もよろしくお願い致します。