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リアーシャ様が怪我をされてから数日がたった。
リアーシャ様の様子が知りたくて何度も何度もエリーナを使いに出した。
「・・・徐々に元気を取り戻しておいでの様ですわ」
エリーナの言葉にほっと安堵するものの、同時に罪悪感に襲われる。
そんな事が数日続いていたある日。
いつもと様子の違うエリーナが続けて言葉を紡いだ。
「それで、ジュリア様にお会いしたいとの事です」
エリーナの言葉に思わず息が止まる。
「・・・え?」
「リアーシャ様がジュリア様にお会いすると申されたそうです!」
エリーナは満面の笑みで同じ事を繰り返した。
「リアーシャ様が・・・・・」
会えると聞いた途端、私が会いに行っても本当にいいのかという思いが過った。
それでも、リアーシャ様のお身体が心配でしょうがなかった。
「すぐに用意をして頂戴。用意が出来次第リアーシャ様のもとへ向かいます」
そういうと、エリーナは頷き部屋を後にした。
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目の前でベットに横になる姿は痛々しい。
あの後すぐに準備を終え、リアーシャ様の部屋に訪れて見ると、リアーシャ様はまだ起きられる事が出来ず、ベットの上で横になってこちらを見ていた。
エリーナに席を外させ、リアーシャ様と2人きりにしてもらった。
ベットに横になるリアーシァ様の右手には包帯が巻かれ、今までの白い肌が更に白く血の気が失せている。
「・・・・リアーシャ様・・・・」
思わず言葉をなくしてしまう。
「ジュリア・・・・。ごめんなさい・・・。心配をかけてしまって・・・」
にっこりとほほ笑む姿も、顔色がわるい為かなぜか寂しそうに見える。
「いいえ・・。お身体はもう大丈夫なのでしょうか?・・・・・っ」
リアーシャ様の姿にどうしてもこみ上げてくるものを抑えることが出来なくなる。
「・・えぇ。大丈夫。誤った事をしてしまったわ。なぜこんな事をしたのか自分でもわからないの。あの時の記憶がないの・・・。それに、クラウス様の事は本当に恋心を抱いている訳ではないのよ?私にはちゃんと婚約者がいるもの。だから・・・泣かないで」
そっと延ばされ私の頬に触れるその手はひんやりとしていた。
そして、リアーシャ様がなぜこちらに側室として来ていたのかを知った。
「・・・それでは・・・全て・・・嘘だったと・・・・?」
「・・・ごめんなさい。クラウスはあなたを繋ぎ止めるために必死だったのよ」
「・・・いいんです・・。リアーシャ様が謝られることではありません。私がいけなかったんです・・・。私が最初からちゃんとしていれば・・・・」
「ジュリア・・・・。貴方は何も悪くないわ。・・・・・あなたは自分を責めてばかりね。私がこんなことを言うのはどうかと思うけど・・・・あなたはこの国の王妃でしょう?あなたがそれでは国の者は不安になってしまうわ。優しいあなたは素敵だけど、それだけではダメなのよ。・・・・・私は大丈夫。もうこんな事はしないわ」
リアーシャ様の視線はしっかりと私へと向けられていた。
その強い瞳は私がまだイングランシャ国にいたころと同じものだった。
「・・・はい。・・・・懐かしいですね。昔もよくこうしてリアーシャ様に怒られていましたね。まだまだ、成長していませんね」
くすりとお互い笑い合うと、私は一つ深呼吸をした。
「・・・申し訳ありません、リアーシャ様。私はやる事を思い出しましたのでこれで失礼します。・・・・・リアーシャ様、ありがとうございます」
そういうと私はリアーシャ様に頭を下げその部屋を後にした。
私の大好きなリアーシャ様。
あの強さが好きだった。
そんな彼女の前で弱音を吐くといつもああして叱られていたっけ。
彼女は大丈夫。
私も見た目だけ彼女になりきっていたわけじゃない。
何より彼女のあの強さに憧れていたのだ。
それを忘れてすっかり弱気のジュリアに戻ってしまっていた。
「しっかりしなければ!」
気合を入れて、リアーシャ様の部屋をあとにすれば、部屋の外で待っていたエリーナに首をかしげられた。
「ねぇ、エリーナ。リアーシャ様はご自害された時の事を覚えておいでではなかったわ・・・。これっていったいどういうことかしら?」
ぽつりとつぶやく疑問は先ほどリアーシャ様と交わしていた会話でふと思ったことだった。
「・・・・ショックのあまり、ご自害された前後の記憶をなくされたのではありませんか?」
私の疑問に右手を顎にあて考えていたエリーナが答えた。
「でも、一体何にショックを受けられたというの?」
「・・・なんでしょう・・・・」
2人して頭をかしげながら自室へと戻った。