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王妃の秘密  作者: 睦月
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幕間 ~クラウス視点~

ジュリアの部屋を出ると思わずため息が零れた。


「・・・・次から次に・・・・」


問題ばかりが起こる。

事の発端は彼女がフィーナ国へ行った事だった。

彼女が今まで何かを隠していた事は知っていた。

だが、いきなり離縁を申しだされ国を出たいと言われた時には心臓が止まるかと思った。

まさか私がリアーシャを好きだと勘違いしていたとは思わなかった。

その事でこの1年彼女を苦しめていたと思うと心が痛む。


「だが、よりにもよって・・・・・」


私は今しがた彼女の部屋に訪れたと言うアイツの顔を思い出し再び腹が立ってきた。

彼女がフィーナ国へ行った後すぐ、アイツから書状が送られてきた。

それもたった2行の書状だ。



 見つけたぞ!


 まさか、お前が隠していたとはな。



その書状を読んですぐにジュリアを呼びもどす事にした。

しかし、彼女は離縁を望んでいて素直に戻ってくるとは思えず、必ず戻ってくる手段として側室の舞踏会と称して。

この時だって、私は知らず知らずのうちに彼女を傷つけていたとは露知らず。

それでも、何とか誤解は解け彼女は私の気持ちを信じてくれた。

ただ一つ、彼女に嘘をついてしまったが・・・・・。







彼女は覚えていない。

幼いころにお互いに共有した秘密。


『この事は誰にもいわないで・・・・・』


今にして思えばとても重大な、隠していてもいいのかと思うほどの秘密だ。


「・・・・バレてしまえば、色々厄介な事になる・・・」


ぽつりとつぶやいた言葉とともにうかんでくる顔は長年兄として慕っていた顔だ。

その昔、王族として他国との外交も含め色々な国へと赴いていた。

そこで、よく顔を合わせていたのが同じような状況だったアイツだった。

ある国に訪問した時も同じように訪れていたあいつと、こっそりと城を抜け出し町に繰り出した。


そこで、ある女の子と出会った。


彼女は町のはずれの小高い丘に立っている木の傍で泣いていた。

私たちはいつもなら気にせず通り過ぎていたのに、なぜかその時はお互い何も言わず彼女の元へと近づいたのだ。

彼女は、傍に寄ってきた私たちに驚いて顔上げた。

・・・その時の顔は未だに忘れられない。

幼いながらも整った顔立ち。

涙にぬれた大きな瞳がまるで輝く星のようにきらきらしていた。

小さな手はその涙をすぐに拭きとるといままで泣いていたとは思えないほど気丈な声で私たちに声をかけた。


「貴方達はどなた?ここは公爵家の敷地だとご存知ですか?今すぐ出て行かないと人を呼びますよ?」


自分たちよりも小さなその女の子はちゃんと自分の立場を理解し、私たちを牽制してきたのだ。

まだ、6つか7つだろう女の子に言われた私たちは目を丸くし、うっかり大笑いしてしまった。

その事に機嫌を悪くした彼女をその後宥め、私たちは公爵の客だと説き伏せ、彼女の涙の理由を尋ねた。

だが、彼女は涙の理由を語らなかった。

そんな彼女に興味をもったのは私だけではなくあいつも一緒だった。

滞在中、時間をみつけては2人で彼女に会いに行った。

アイツが、彼女をからかうと彼女は小さな頬を膨らまし怒った。

そんな彼女を私が慰め皆で笑い合った。

たのしい時はアッと言う間にすぎ私たちは国に戻らなければいけない期限が迫っていた。


「・・・こんなに笑ったのは久しぶりだ」


あいつはそう言って愛おしそうに彼女を見つめた。


「・・・俺は必ず彼女を迎えに来る」


そう言い残すと一足先にあいつは国に帰っていった。

その時は、まだまだ先の事だと笑った。


だけど、再び彼女の涙を見てしまい私は彼女を守りたいと強く思った。

そして、その想いを彼女に告げた。


「・・・俺は君と結婚したいんだ」


涙でぬれた彼女は首を振った。


「・・・・・私はこの世界にいてはいけない人間なんです・・・・」






*******************************



「・・・・・クラウス様」


ふと思考が遮られ、声がした方を向いてみるとそこにはアルが立っていた。


「どうした?」


「イングランシャ国王女リアーシャ様がご到着されました」


頭を下げそういうアルに頷き私は彼女に会う為、執務室を後にした。

彼女に似た顔を思い出しながら、リアーシャの待つ応接間へと入る。


「・・・久しいな」


「ご無沙汰いたしております。この度はとんでもないご招待誠にありがとうございます」


そう言って頭を上げた彼女の顔をにっこりと王女らしい顔で笑っていた。


「・・・そう言ってくれるな。私はアイツの為ならなんでもする」


「・・・だからといって、私を側室にするなどとは勘弁して頂きたいものですわ」


呆れたように溜息をつくリアーシャに私は返す言葉もなく、ソファに腰掛ける。


「はぁ・・・。あなたは相変わらずジュリアにメロメロなんですのね。まぁ、いいですわ。最近ジュリアにさけられているのではないかと不安になっておりましたの。ジュリアに会えるのであれば協力いたしますが、私の結婚式には必ずジュリアを連れてくると約束して下さいね?」


彼女の今回の訪問は、我が国の舞踏会の招待ということで来てもらっていた。彼女の結婚報告も兼ねて。

そんな他国の姫をまさかこんな芝居に突き合わせるなど言語道断と言われても仕方がない。

だが、頼めるものは彼女しかおらず、本当に側室を設けるなどそんな事は考えてもいない。

そんな彼女からの申し出を断る事などできるはずもなく、


「・・・・わかっておる、1しゅ・・・・」


「もちろん、その後1カ月は滞在してもらいますから!」


私が言葉を紡ぐ前に、きっかりと期限を言い渡されてしまいおもわず眉間にしわが寄る。


「1年もまともに会えていませんのよ?当然ですよね?」


そういわれしぶしぶ頷くしかなかった。


舞踏会はもちろん公式なものではなく、親しい友人たちとの舞踏会にするつもりだった。

アイツが、舞踏会に参加すると言ってくるまでは・・・・・。

その為に至急リアーシャにこんな事を頼まなければいけなくなった。

ジュリアを伴ってやってきたアイツを見た時には腸が煮えくりかえりそうだった。

そして、舞踏会が終わりアイツは私の部屋へとやって来て言った。


「・・・他国の姫をこんな事に使っていいのか?・・・・」


そのひと言で、アイツが何を言いたいのかわかった。


「だが、お前とは親しい付き合いだしな。黙っててやるからしっかりやり通すんだな」


・・・・思わず手が傍にある剣に伸びそうだった。

あいつはこの舞踏会が嘘である事を見抜いていた。

アイツが一体何を企んでいるのか。

一体、ジュリアをどうするつもりなのか。




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