21
「ジュリア!!」
しばらく、ベットの上に座ったままぼーっとしていた所に、慌ててクラウス様が部屋に入ってきた。
「・・・クラウス様」
その場に立ちあがり彼を迎えようと彼の元まで行く前に私は彼の腕の中に収まっていた。
「クラウス様?」
「・・・すまない、ジュリア。あの人がここまで来るとは思っていなかった。未だ国に滞在していた事で、今回の事が彼の耳に入ってしまい、君を見舞いたいと言うから了承したが・・・・まさか、ここにくるなど・・・。くそっ!こんな事になるならあの時君を出すべきじゃなかった!!」
頭の上から悔やんでいるような声でそう話すクラウス様の腕は更に力が入り私を強く抱きしめる。
あまりの強い力に少し苦しくなった私は彼の名を呼んだ。
「・・・・ク、クラウス様」
彼の名を呼ぶと彼はハッとしたように私を拘束していた腕を緩め両肩を掴まれると彼の胸から解放された。
「・・・・すまない」
目を伏せて謝る彼をみて、なぜかトレース陛下の言葉が蘇った。
「・・・・私に何か黙っている事がおありなのですか?」
無意識のうちに言葉が零れていた。
だけど、その言葉を聞いたクラウス様は目を見開いた様に私を見た。
「・・・何か、聞いたのか?」
先程までとは全く違う低く唸るような声に思わず肩が強張る。
「い、いいえ・・。ただ、貴方が私を騙していると・・・・・」
クラウス様の鋭い視線に耐えきれなくなり思わず顔をそむけてしまった。
「・・・ジュリア、その言葉を信じるのか・・・?」
「・・・わからないんです。私・・・・信じたくないのに、なぜかトレース陛下の言葉が引っ掛かってしまって・・・・」
今の気持ちを正直に話す。
彼はきっと眉を寄せて私を見ているのだろう。
はっきりとその表情を見る事は出来なかったが・・・。
「・・・・ジュリア、私を信じてくれ。君を騙してなどはいない・・・。ただ・・・まだ告げられない事はある・・・・。しかし、時が来たら必ず、君に伝えるから」
ふと、肩に置かれていた手のぬくもりが消えた。
顔を上げて見ると、そこには悲しそうに笑うクラウス様の顔があった。
「ク・・ラウス・・さ・・・ま?」
私の問いかけにハッとしたように再びいつもの笑顔を取り戻して私に笑いかけた。
「そういえば、先程医師から連絡があってリアーシャが目を覚ましたそうだ。・・・まだ、誰とも会う気はないといっているが、近いうち君にも会えるように話をつけてみるよ」
リアーシャ様の話をされて、ほっとしたのも束の間、やはりまだ私に会いたくないのだという想いで再び胸が苦しくなった。
「・・・そんな顔をしないでくれ。・・・・彼女だって本当は・・・・」
クラウス様は何かをつぶやいて目を伏せた。
「クラウス様?」
なんだか情緒不安定の様に先程から沈んでいる。
私に見せてくれる笑顔が本当のものでないことも気づいているが、今はまだ言えないという彼の言葉にこれ以上私も何も言えない。
それに、今はリアーシャ様の事も気になってしまう。
「・・・とにかく、今はゆっくりと休みなさい。君までも倒れてしまっては大変だからね」
そういって額に唇づけを落とすとクラウス様は再び部屋を後にした。
静まりかえった自室を見回して、溜息が零れる。
「・・・やはり、私がここにいるからこんなことが・・・・」
誰にも聞かれていないと思うと本音が零れてしまう。
以前はクラウス様の想い人と幸せになってほしいと思いここを出た。
だけど、私が戻るとまた再びこんな事になってしまう。
まるで、私が不幸を連れてきているみたいに・・・・。
そんな考えが浮かんではそれを思いとどまり自分に言い聞かせている。
「・・・リアーシャ様・・・・・クラウス様・・・・」
大好きな2人が傷つくのであれば、やはり私はここにいては・・・。
そう思い、先程のトレース陛下の言葉が浮かんでくる。
《あなたが、この国を出ていきたいと思った時、私はいつでもあなたをお迎えしますよ》
緑の多い国フィーナ国。
祖国の様な雰囲気が心を和らげてくれる。
ただ、トレース陛下の最近の様子がおかしい事に少し戸惑いを覚える。
結婚当初に訪れた時はとても気さくで、クラウス様とも兄弟の様に仲が良かったように見えた。
それなのに、今回この部屋に乗り込んできたことも、私へ云った言葉も今までのトレース陛下の面影は全くなかった。
「・・・私が何も知らないだけで、本当は周りで何か起こっているの・・・?」
その言葉に答えをくれるものはいなかったが、なぜかそれが正しい気がしていた。
しかし、今は精神的にも体力的にも疲れており、いつの間にかベットの上で眠りについていたのだった。
す、すみません・・・・。
ちょっと行き詰まり中のため、のろのろ更新です。
しかも文も乱れまくり・・・・。
後日ちょこちょこ改稿しながら改めて行きますので、多少の乱れは目を瞑って頂ければ・・・・・っ!!