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王妃の秘密  作者: 睦月
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ちょっと短めです。

差し出したハンカチを受け取ろうとはしてくれず、私はリアーシャ様の頬にそっとハンカチで触れる。

そのハンカチでリアーシャ様の涙を拭うとリアーシャ様は私の手を取った。


「・・・ありがとう、ジュリア」


瞳が濡れたままにっこりと笑われるその姿は本物の天使の様だ。

こんな笑顔をもつリアーシャ様がまさかクラウス様に何かを企てるなどと考えた自分が恥ずかしくなった。


「・・・いいえっ!私の方こそ謝らなければ・・・・」


そう言いかけて言葉を詰まらせる。

そんな私にリアーシャ様は言葉を続けた。


「・・・ジュリアには辛い事をしてしまっているかもしれない。・・・だけどっ・・・・・私もここに来てしまった以上は努めを果たさなければいけないわ」


リアーシャ様の言葉にハッと顔を上げると、濡れている瞳が真剣な様子でこちらに向いていた。


「貴方には本当に辛い思いをさせると思うわ。・・・だから、私の事を憎んでも構わない。だけど、覚えておいて?私は決して彼を好きなわけではない事を」


そう言うリアーシャ様の瞳はゆるぎない何かを宿していた。

彼女の言った言葉の意味を考える余裕もなくその瞳で見つめられた私は思わず顔をそらしてしまった。


「・・・わかりました・・・」


そして、そのひと言を言うだけで精いっぱいだった。


「・・・ジュリア?顔を上げて」


リアーシャ様の言葉に私は失礼だと思っていながら首を横に振る。

こんな顔は見せられない。


「・・・・ジュリア」


再び呼ばれる私の名に私はしぶしぶ顔をあげた。


「・・・ごめんね」


そう言って先程私がリアーシャ様の涙をぬぐったハンカチで今度は私がリアーシャ様に涙を拭われた。

困った様に笑うリアーシャ様の笑顔が今の私には辛かった。






*****************************







リアーシャ様の部屋を後にして戻ってきた自室で私は項垂れる。


「ジュリア様?大丈夫ですか?」


リアーシャ様の話を傍で聞いていたエリーナは心配そうに覗き込んできた。


「・・・・ええ・・・・」


そう答えるものの心は少しも大丈夫ではなかった。

クラウス様の隣りをリアーシャ様に譲る覚悟はできていると思ったのに。

いざそれを本人の口から聞くとどうしても心が無数の針で刺されるようにチクチク痛む。


「・・・・ジュリア様。もう、正直にクラウス様にお話しされてはいかがですか?」


私の様子を見かねたのか、エリーナは覚悟を決めた様にそう話し始めた。


「クラウス様は決して外見で人を好きになるような方ではございませんわ!1年も傍にいたのはジュリア様です!お心はきっとジュリア様にありますわ!」


その言葉に私は力なく首を振った。


「・・・そんな事わかっているわ。・・・・だからこそ私ではダメなのよ」


エリーナに聞こえるか聞こえないかの小さな声で私は言葉を紡いだ。


「なぜですか!?」


エリーナはしっかり聞きとっていた様だ。

なぜと言われても答えられない。側にいてそれを感じたのだから。

いつも笑顔を絶やさず優しくしてくれるクラウス様。

だけど、いつも心のどこかで何かを思っているようだった。

決して私では埋められない何か・・・・・。


エリーナは私が返事をしない事で言いすぎたとでも思ったのだろうか。

慌てて頭を下げた。


「も、申し訳ありません!出すぎた事を申しました!!」


「・・・いいえ。心配してくれているのだもの。気にしないで」


にっこりとほほ笑んだはずなのに、エリーナの表情は何だが苦しそうだった。

そんなエリーナに私も苦笑すれば、少し一人になりたいと告げた。

心配そうに私を見詰めながらもそれを了承してくれて、エリーナは部屋を後にした。


「・・・・・どうしよう・・・・・」


これから、私はどうすればいいのだろう。

側室を召しあげたばかりでこの国を去っても大丈夫だろうか。

何か勘ぐられはしないだろうか。

だからといって、私はお2人の姿を見ていること出来るのか。


「・・・・無理に決まってる」


リアーシャ様の言葉を聞いただけでこんなに胸が痛いのだ。

2人が仲睦まじく寄り添ってる姿などやはり見れるわけがない。


「・・・・誰か・・・・・」


私をここから連れ出して・・・・・。


ベットにうつぶせになると誰にも聞こえる事無くその言葉はかき消されていった。

そして、誰にも知られる事無く涙を流した私はいつの間にか眠りについていた。







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