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王妃の秘密  作者: 睦月
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エリーナの持ってきた赤いドレスを身にまとうとなんだか気持ちが引き締まった様な気がする。


「ジュリア様?どうされるのですか?」


いきなり赤いドレスを持ってこいと言った私にエリーナは心配そうに私に問いかける。


「エリーナ。私決めたわ。王妃として最後にリアーシャ様がこの国の王妃としてふさわしいか私の目で確かめるわ!」


クラウス様の幸せのためにはリアーシャ様が必要かもしれない。

だけど、もし何か企んでこの国を落としめようとしているのならば私が守らなければ・・・。

最後にクラウス様の為にして差し上げられる事はそれくらいだわ。


「・・・・ジュリア様」


エリーナは私の言葉に顔をしかめたかと思うと何かを考えるしぐさをした。

そうかと思えば一人納得したかのように顔を上げにっこりと笑った。


「そうと決まれば、参りましょう」


エリーナの言葉に頷けば私たちは部屋を後にした。

向かう先はもちろん庭などではなくあの方の部屋。

緩みそうになる決意を何とか引き締めながら、目的の場所までくればアポを取っていなかった事を思い出す。

だけど、ここまで来て引き返す事も出来ない。

突然の訪問に申し訳ない気持ちがあったが、扉を叩くようエリーナに促した。

扉をたたけば中から侍女が顔を出した。


「・・・まぁ。これはこれは王妃様。・・・王妃様自ら何の御用でしょう」


さほど驚いた様子はなく、何度か見覚えのある顔ににっこりと笑顔を返す。


「突然押しかけてしまい申し訳ありません。リアーシャ様にお会いしたいのですが、リアーシャ様はいらっしゃいますか?」


そう言葉にすると侍女は眉をピクリと動かし笑顔を作る。


「・・・本当に突然でいらっしゃる事。わが主に確認して参りますので申し訳ありませんが少々お待ち下さい」


そう言って扉の奥へ消えていった侍女の言葉はいちいち棘があった。

昔はそんな人ではなかったはずなのだが、やはりリアーシャ様よりも立場が上と言う事が気に入らないのだろうか?


「・・・ほんっとにあのばばぁ・・・・」


静寂の中ぽつりと聞こえた言葉にそちらを振り向けばすごい形相のエリーナが立っていた。


「エリーナ・・・言葉を控えなさい」


苦笑しながらエリーナを窘めれば、目を見開き頭を下げる。


「も、申し訳ございません。聞こえていましたか・・・?」


そろりと頭を上げるエリーナに頷けば、再び頭を下げた。


「すみません。つい思っている事が口に出てしまいました」


「まぁ」


反省しているのかいないのか、そんなエリーナに苦笑していたら、再び扉が開いた。


「・・・どうぞ、お入りください」


向き直って侍女と対面すれば侍女はそう言って扉を全開に開いた。


「・・・・ありがとう」


侍女は何も言わず頭を下げた。

その姿にエリーナの顔が歪むもののそれを抑えさせ、中へと足を踏み入れた。

応接室となっているその部屋は私の使っている部屋より少し狭い。

狭いと言えども天井は高く、人が十数人入っても苦しいと思う事無い広さだ。


「・・・・お久しぶりでございます。王妃様」


ふと、視線を前に戻せば椅子の横に立ちあがってドレスを摘み頭を下げるリアーシャ様の姿があった。


「頭をお上げ下さい。こちらこそ、ご無沙汰いたしております。突然の訪問に応対して頂きありがとうございます」


そういうと、私は裾を摘み腰を落とすに留めた。

一応でもなんでも、この国の王妃は現在私である。

そう簡単に頭を下げるわけにはいかなかった。

だが、リアーシャ様の侍女はそんな私の姿に眉をよせていたのが視界に入った。


「いいえ、王妃様の訪問嬉しく思います。本来ならば、こちらからご挨拶へと伺わなければいけないのに足を運んで頂き申し訳ありません」


にっこりと笑ってそう言うリアーシャ様の姿は立場は違えど、イングランシャ国にいた頃によく見た笑顔だった。


「・・・いいえ」


その笑顔に私が思っている事は間違っているのではないかと心が揺らぐ。


「立ち話もなんですから、どうぞ、お座りになって下さい」


そう言ってリアーシャ様の前の席を勧められれば、礼を言って席に着く。


「お元気そうでなによりですわ」


お互い席に着けば、変わらない笑顔のままリアーシャ様がそう話しかけてくる。


「リアーシャ様こそ、お元気そうで・・・・」


ここまでやってきたものの、昔と変わらないリアーシャ様に戸惑い言葉がそれ以上出てこない。

そんな私に気付いたのかリアーシャ様は苦笑いと言った感じで話を続けた。


「・・・・なぜ、私がここに来たのかを聞きに来たのでしょう?」


昔の様に話しかけられれば、その内容に驚き目が丸くなる。


「ふふ。相変わらずすぐ顔に出るのね。ジュリアは」


天使の様な笑顔でそう言われるとかぁと顔が赤くなるのが自分でもわかった。

両手を頬に添えれば、向かいの席ではリアーシャ様の表情が暗くなっている事に気付いた。


「・・・・ごめんなさい。ジュリア」


今にも泣き出しそうな声色に私は思わずリアーシャ様の手を取った。


「いいえ!何か理由があるんですよね?そうでしょう?リアーシャ様」


そういう私の言葉にリアーシャ様はふるふると首を横に振る。


「いいえ。たとえ理由があっても許される事ではないもの。こんなこと・・・大切な友人の幸せを壊す様な事!!」


ぽろぽろと流れだすリアーシャ様の涙に思わず私はそっとハンカチを差し出す。


「・・・・リアーシャ様・・・・」







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