失恋しかしない
掲載日:2026/10/29
満開の桜の下、失意の底で感情の計算式を上書きしようとする人間の切ない選択を描いた物語の導入です。
プログラムされた世界で失恋を重ね、喪失の重さに耐えかねた「私」。しだれ桜の雨に打たれながら幸福の初期値をゼロに固定しようとする、静かな諦観と再生の序章。
いいことなんて一つたりもなかった。
失恋しかしない。しだれ桜の満開のもとに、失くしたものの重さは計り知れない。
いいことなど微塵もなかった。
それは神の作ったブログラム通りの。
頭が良ければ思い通りに、良くなければ一世一代の大博打に打って出るより他にない。
いいことなどあり得ない。よつまていいことなどないと仮定する。するとどうだ?
桜の雨に濡れながら、私は計算式を上書きする。
幸福の初期値をゼロに固定すれば、傷つく数値すら残らない。
散り急ぐ花弁が、何もない私に静かに寄り添う。
満開の桜の下で傷ついた心を隠すように「幸福の初期値をゼロにする」と誓う主人公の切ない決意と儚い美しさを表現した作品です。不条理な現実に傷つきながらも自分だけの論理で立ち向かおうとする静かな力強さが、読む人の心に深く残ることを願っています。




