表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

3話 信仰の果て

 全身の力が抜けたように地面に崩れ落ちる。


 神としての力の大半を使い果たしたからか。もちろんそれもあるが、何よりも後悔の念が私を地に落とした。


 彼のことを何も考えず、自分勝手な考えだけで、大切な人の記憶を消した。


 人としても、神としても、してはいけないことだ。誰にも、そんな権利はない。


 一夜の瞳を思い出す。何の希望もなく、くすんだ瞳。


 私は、一夜のあんな姿は望んでいない。


 もっと、笑顔で、楽しそうな姿を望んでいた。それも、私によって、だ。


 だから、風花の記憶を消したんだと、今になって思う。


 心の何処かで期待していた。きっと、今の一夜にも、私は必要な存在なんだって。


 本当に、愚かだ。ここまで都合のいい展開を思い描いていたなんて。


 結局、神様らしいことなんて、何一つしてあげられなかった。


 彼が初めて神社に来た時から、今に至るまで。


 もしかしたら、神社に来る時間すら、無駄だったかもしれない。そう考えるだけで、胸が張り裂けそうだ。


 でも、自業自得。


 神様なんて、私には相応しくなかったんだ。


 彼の邪魔しかしていない。こんな、出来損ないの神様。今や、信者の一人もいない、一人の人間を信仰する私に。


 震えたため息が漏れる。


 私の中から、神様という肩書きだけが剥がれ落ちていった。


 それでも、頭に残るのは一夜。


 彼のことだった。


 それもまた、なんと愚かだろうか……私を信仰してくれていた頃の、一夜の姿。


 せめて、最後くらいは彼の望むことを。


 彼が、今の一夜が望んでいるのは……ほかの誰でもない風花。


 悔しいな、虚しいな。


 これが私だったら、どれだけ良かったのだろう。


 私は立ち上がると、残りカスのような信仰心を使う準備をする。


 記憶を元に戻す力は、もう残されていない。


 消された記憶の対象を、変えるだけだ。


 誰に変更するか。


 どうしても、ここで悩んでしまった。


 親、兄妹、親戚、友達。どれも、今の一夜には必要。


 そう、今の彼に必要のない人物。ここにいるじゃないか。


 知っている。だから、知りたくなかった。思わず、大粒の涙がこぼれ落ちる。


 確かめたいから、ここまでやってきた。なのに、知ってしまった。


 今にも、吐き出してしまいそうだ。


 最後に見た彼の姿が、あの姿だ。しかも、よりにもよって自分の手で、あの姿にしてしまった。


 後悔してもしきれない。もう、取り返しがつかない。


 それでも、やるしかない。


 たった、一人信者だった人のために。


 たった、一人の神様のために。


 私は……記憶を消した対象を、変更した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ