5話 剣聖との会談
鎧男は目を覚ましてからすぐさま王に報告しに行っていた。
王は鎧男の話を聞き、怒りの形相をあらわにした。
「朕は長年かけて、灼熱の力を手に入れたというのに、まだ奴は倒れぬか!」
「王よ。我ではあの薔薇の魔王に太刀打ちできません。今、薔薇の魔王は迷宮にいると思います。ですから今すぐ討伐命令を! このまま奴を野放しには……」
「ええい! 黙れ!」
「失礼、王よ」
王は鎧男の話を遮るように叫んだ。
鎧男は申し訳なく、頭を下げていた。
それから王は唸りながら、顎に手を当て、
「まあ、よい。あの魔王は朕が直々に始末しておきたいが、生憎、朕は力を使い果たした。じゃから、そうじゃ! あの剣聖を呼べ!」
「はあ、聖騎士長ですか」
「ああ。奴なら、朕の命令にも従うし、それに奴は、あの有名な剣聖の家系じゃからな。奴ならば一瞬にして魔王なんぞ始末してくれよう」
「かしこまりました。王よ」
鎧男は王の謁見の間から出ていった。
それから聖騎士長のいる部屋へと鎧男は赴くこととなった。
「しかしなんで我が聖騎士長にお願いする必要があるんだ。剣聖の家系なんぞ、今の平和ボケしちまった世界に必要ないものの」
鎧男は愚痴をこぼしつつ、聖騎士長の部屋の扉をノックした。
するとすぐに扉が開かれた。
部屋の中から出てきたのは青年だった。この男こそが王国最強の剣聖であり、聖騎士長スレン・ユグドラだった。
「お疲れ! トルネル君」
スレンは笑顔でトルネルを出迎えた。
そんな笑顔がトルネルにとって少し不愉快に感じつつも、
「ああ。入るぞ」
「どうぞ」
スレンはまた笑顔でトルネルに入る様に促した。
部屋に入ってからは長テーブルを挟むように、向かい合って二人は座った。
部屋には他にメイド服を着た獣耳を生やした亜人の少女が一人いた。
トルネルは亜人の少女を見つつ、
「悪趣味め」
と嫌味を言った。
そんなことを言われスレンは少しムッとした表情で、
「それは言わないでほしいものですね。私は彼女に対して奴隷のように扱っておりませんし、それにこれは彼女が私に仕えたいと申し出たものです。変な憶測で人を判断するのはやめてもらいたい」
「そうか。すまんな」
トルネルは内心納得してはいなかったが一応謝る素振りを見せた。
スレンは快く「いいよ」と言ってくれた。
全くどんだけお人好しなんだと、トルネルは思った。
そんな二人の目の前には紅茶が置かれていた。
これはそこの亜人が注いだ紅茶である。
スレンは自慢げに、
「これは王国一級品の紅茶でございます。どうぞ召し上がってください」
「ああ。いただこうか」
トルネルはティーカップに手をつける。これ、タダの紅茶なのだろうかと思いつつ、一思いに飲んだ。
「まあ、悪くない」
そんな風にトルネルは感想を述べると、スレンは嬉しそうに、
「でしょ! マリンの注ぐ紅茶は美味しいんだよ。王国一の腕前さ」
そんな風にスレンはマリンのことをほめちぎっている傍らで、マリンは恥ずかしそうに顔を伏せていた。
「さて、ところでトルネル君。ここに来たということは、私に何か用事があるのかな?」
スレンはこのように話題を持ちかけた。
「ああ。そうだ。近頃、薔薇の魔王が監獄に現れたのを、お前も知っておろう」
「そうだね。薔薇の魔王か。噂では可愛い女の子だと聞いたよ」
「なんだ、その噂。まあいい。それで王はお前に薔薇の魔王を討伐してほしいとの命令だそうだ」
「ふーん。なるほどね」
スレンはティーカップの取っ手に手をかけて、一口飲んだところで、
「いいよ」
「そうか。ならば王に伝達しておくぞ」
「ああ、構わないよ。君も魔王討伐のための準備をしたまえ」
「ああ、そうさせてもらう」
トルネルはスレンの部屋を出ていった。
出ていった後で、スレンは自身が愛用する剣を磨いていた。
剣を磨き終わった後で、スレンは傍らにいるマリンに声をかけた。
「マリン、本当にすまないね。いつもの頼むよ」
スレンの言葉にマリンは何か察したかのように、
「あれ、ですね。もしかして、監獄に行かれないのですか?」
「まあ、そうなるね」
「かしこまりました。ところでスレン様はこれからどちらへ行かれますか?」
「そうだね。シノ・ハイラー様の元へ挨拶かな」
スレンはそう言うと、剣を腰に身に着け、部屋を出ていった。




