3話 『沈黙』のメイド
俺とレオナは監獄にて赤いドラゴンに追い掛け回されていた。
「な、なんで、ど、ドラゴン!?」
「雪村さんって臆病な人だったんですか?」
「うっさい! ドラゴンいりゃ、誰だってビビるわ」
そりゃ、ドラゴンだぜ。レオナが言うに炎を吐くあいつなんだぜ。戦う術も知らない俺と血を見るのが苦手なお嬢様では何も太刀打ちできないじゃないか……。
逃げ切るが先か、食われるが先か。
いや、DEAD or DEADだろ、どう考えても……。
赤いドラゴンはよだれを滴らせながら襲ってくるので、更に身の危険を感じてしまう。なんというか、俺たちのことをまるで食料かと勘違いしているようだった。
逃げている間気づいたことだが、幸いにもドラゴンは足が遅いらしいので、何とか捕まらずに逃げきれている。
だが、これがいつまで続くのだろうか。ドラゴンの体力が尽きるのが先か、それとも俺たちの体力が尽きるかのどっちかだった。
ともかくドラゴンを倒すために何か対策しなくては。
「なあ、あいつに何か、弱点はあると思うか?」
「弱点ですか? そうですね。ただ、あれは馬鹿だと思います」
レオナは目を細めて言った。
「それは弱点ってなるんか! 馬鹿でも、これは消耗戦すぎるだろ。どっちかが屈するまで終わらないぞ」
「そうですね」
レオナはどこか考えている素振りを見せた。
何か良い打開策でもあるのだろうか。
「この道は……」
レオナはそう呟いたと思うと、すぐに、
「雪村さん、次の道を右に曲がってください。監獄の出口があります」
「本当か! でもこの監獄から出たとしてもあのドラゴン追って来るだろ」
「そうですね。いや、もう大丈夫そうですね」
レオナがそう言うと、俺たちの目の前に人影が現れた。
人影はどんどん大きくなり、やがて、鮮明に見えてきた。
あれは、メイド?
黒髪のメイド服の女がこちらに向かってきていた。
「リーファ! やっちゃって!」
レオナがメイド服の女に命令し、
「承知しました。レオナ様」
リーファは俺のすぐそばを素通りしていき、そのままドラゴンに直行していく。
「おい、あいつ殺されるぞ」
「雪村さん、大丈夫です。私のメイドは強いの!」
レオナは自信満々に答えた。
それなら今は信じよう。あのメイドがどうにかドラゴンを止めてくれることを。
リーファはドラゴンの近くまで行くと、高く飛び上がり、それから頭に人差し指が触れる。
その瞬間、ドラゴンはなぜか動きを止めた。それからすぐに眠りについたのだ。
ドラゴンは気持ちよさそうにいびきをかきながら眠っていた。
「レオナ、あのメイドは何かドラゴンに細工したのか?」
「ええ。あれはリーファのエクストラスキル『沈黙』による効果よ。相手を眠らせる効果があるみたい」
どうやらあのメイドがスキルを行使してドラゴンを眠らせて動きを止めたようだった。
「といかスキルの上位互換なのか? そのエクストラスキルは」
「ええ。エクストラスキルはこの世界で珍しい力なの! リーファは私と会う前からすでに持っていたらしいの。だから私よりも強いの!」
「そうか。まあ、敵に回したくないな」
何せ、鉄格子を簡単に切るレオナが強いというくらいだから、多分俺は秒で負けると見た。だからあのメイドは敵に回ると俺は勝てないだろうな。
「レオナ様。このドラゴン、いかがなさいますか」
リーファはドラゴンを指差しながら、レオナに聞いてきた。
「ほっときましょう。せっかく気持ちよさそうに眠っているですもの」
「そう、ですね」
「それにほら、私、血が苦手なの」
「はい。知っています」
「だからドラゴンを痛めつけたらだめよ」
「分かりました」
リーファは頷いた。
「さて、リーファ。出口には聖騎士様はいませんでしたか?」
「はい。そちらに関しては問題ありません」
「そう。じゃあ、二人とも行きましょうか」
俺たちはドラゴンから何とか逃げ切り、監獄から脱出するのだった。
石畳の階段を上り、地上へと出た。
そこには広大な草原があった。
「雪村さん。この草原の道を東に進めば、私の屋敷があります。よろしければ一緒に来てください」
俺はレオナに屋敷へと案内してもらうことになった。




