1話 邂逅と王国転覆計画の始まり
この世界では自分の力を誇示するのは危険なことなのだと、俺は投獄されてから初めて思い知ることになる。
薄暗いこの空間でもう何日ぐらいたったのだろうか。それすらも忘れてしまうくらい俺は居たのだろう。
牢獄の中で俺は腕を鎖できつく拘束されていた。
俺は早くここから出て、ここに投獄した王に仕返ししてやりたいくらいだった。
何なら恨みがましく、殺してやりたいくらいだった。
殺す、あいつは絶対。
そんな俺の元に誰かが近づいてくる音がする。何というかハイヒールで石畳の床を歩くかのような音だった。
カタン、カタン、カタン……
足音は突然止まった。
俺は睨みつけるかのように顔を上げて格子の先にいる誰かを見ようとした。
そこには金髪を携えた少女がいた。金髪を一つ結びにして、動きやすそうな冒険者のような軽装。足にはなぜかハイヒール。腰には細長いレイピアのようなものを携えていた。
少女は俺を見て、口を開いた。
「私は魔女です。あなたにお願いがあります」
初対面の俺に対してなぜか少女はお願いをしてきたのだ。だから俺は少し驚いてしまった。
それに自分のことを魔女だと語る少女に俺は驚く以外の感情はなかった。
少し考えた後に、俺は少し意地悪な質問をした。というか今の状況にでナイーブになっていた俺にはそう言うことしかできなかった。
「いや、お前誰なんだよ。俺の無様な姿を王様にでも拝んで来いとでも言われたのか?」
すると魔女?は少し困ったようにワタワタと動揺していた。
「ち、違うんです。私の意志でここに来たのです。別にあなたを傷つけるためにここに来たのではありません」
「そうか。じゃあ、俺に何の用だ?」
「だからその、あなたに少しお願いがあるのです」
「お願いか? 俺に? 俺のこの状況で果たして、お前の願いを叶えてやれるかどうか……。そんな馬鹿馬鹿しいことに付き合ってやれるか。他を当たれよ! ははっ、そうだな。ここから出してくれたら何でも聞いてやるよ!」
俺はそう自嘲的に言ってみせた。こうも言えばこいつも諦めて去っていくのだろうと思った。
だけど魔女?はなぜか俺の元から去ることはなかった。
なぜか肩を震わせていた。そして腰にぶら下がるレイピアの柄に手を携え……。
「これで私のお願い聞いてくれますよね」
次の瞬間、眩い光が視界を覆った。
目を開けると俺の目の前にある鉄格子は斜めにズレ落ちた。
鉄格子の断面は赤くなっており、まるで何かの光線を受けたかのようだった。
魔女?は鉄格子を跳ね除け、俺のいる牢屋へと入って来る。
俺の目の前で立ち止まった。
するとすぐに俺の腕に絡みついた鎖を跡形もなく木端微塵に切り裂いてみたのだ。
「これは私のスキル『光明』。どんな硬いものも光で切り裂くことができる斬撃です」
「反則かよ。でもまあ、この世界ならあり得るのか」
「それはまるで別の世界から来たかのような言いかたですね」
「そうだな。どう言えばいいだろうか」
「いえ、私には分かります。つまりあなたは、別世界からの転移者なのですね」
「そう、正解だ。俺は前の世界で死んだはずだった」
俺は前の世界では交通事故で死んでいることになっている。それがトリガーになったのかどうか分からないがどうやら、この最悪な世界へと転移されたらしい。
「一度死んだのなら、転生ということにはならないのですか?」
「いや、そうはならなかったらしい。転生は前の世界で保持していた身体を失って、転生先の身体に入るって感じだな。一方、俺の場合は前の身体のまま別世界に来たというわけだから、つまりは俺はこの世界に転移されたというわけだな」
「なるほど、そういうことでしたか。話には聞いたことありましたが、転移者は初めて見たかもしれません」
俺はゲームで培った内容を語り、少女は納得してくれたみたいだった。
この世界は転生とか、転移とかあまり事例の少ない事みたいらしい。現に魔女?が初めて見たかもしれないと呟いたのが何よりも証拠だ。
しかし転移したからとはいえ、この世界で俺は一体どうすればいいのか全く分からなかった。
「あのー。ちょっと良いですか?」
「ん、どうした?」
「私、あなたをこの檻から出しました」
「というと?」
「あのー、あなたは何でも言うこと聞くといいましたよね」
「ああ。言ったな」
「じゃあ、私のお願いを聞いていただきます」
俺はさっきまでの発言をどこか蝕むかのように後悔することになる。
魔女?は俺に言った。それはまるで何か決心したかのような顔で。
「あなたはこれから私と一緒にこの国を乗っ取ります」
「は? 何かの冗談を聞かされているのか?」
「冗談ではありません。私は本気です」
「お前、この国を乗っ取るって意味わかっているのか? この国の王、騎士を敵に回すことになるぞ。良いのか?」
「良いも何も、現にもう敵に回していますよ。だって、私、今、あなたの脱獄を助長したのですよ。それは王国にとってもう敵に回している他なりません」
「そうか。分かった」
「良いのですか? こっから先は後戻りできませんよ」
「ああ。いい。どうせ、俺はこの世界でやる事なんてないからよ。それに俺はあの王様の鼻をへし折ってやりたいくらいだね。いや、ぶん殴って、ギタギタにして、俺の目の前で土下座させてやるね」
魔女?はどこか嫌なものを見るかのように俺を見ていた。
「ま、まあいいでしょう。そのくらいならばいいでしょう。その、お願いします」
「ああ。俺のことなんか好きに使えばいい」
こうして俺と魔女?は出会ってしまった。
それがのちにこの世界全体を巻き込むことになるとはこの時、誰も知る由もなかった。
さあとうとう始まってしまいました。
リメイクというかほぼ新作みたいなものです。
多分20章くらい続くと考えています。
どうぞ、長い間、お付き合いください。




