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早坂さんのおやつ

作者: 変汁

早坂朱莉(はやさかあかり)とは私の名前だ。


木村順太が早退したせいで、私が文鳥小屋の掃除の手伝いに駆り出される羽目になった。


木村順太が、次に学校に来た時にこの仕返しをしてやろうと思った。ただそのやり方まではハッキリしていなくて、イライラしていた。だから自分でも気づかないうちに鳥小屋や鳥の巣箱の掃除や水の取り替えなどを雑に行ってしまい飼っている文鳥が1羽小屋から逃げ出してしまった。


「だから掃除する時は小屋の戸は閉めてねって言ったじゃん!」


クラスの女子の1人、星本さんが私に向かって怒鳴った。


「先生に言って来る」


水の取り替えをしていた星本さんは容器を私に押し付けると駆けって職員室へ向かった。


先生を連れ立って戻って来た星本さんは、私を指差し、早坂さんのせいで、と言った。


確かに文鳥を逃したのは私だったけれど、そこまで怒るような事とは私には思えなかった。


だって小屋から出られないなんて私にはとても耐えきれないからだ。つまり私達が文鳥だとしたら、一生家から出してもらえないという事だ。


考えただけでゾッとした。だから私は先生にそう言った。


「早坂、つまりお前はわざと文鳥を逃したってわけか?」


「わざとじゃありません。文鳥が自分の意思で出て言っただけです。私はただ小屋の戸を閉め忘れていただけです」


私は先生と星本さんを見返しながらそういった。


その私の言葉に星本さんは気分を悪くしたのか頬を馬鹿みたいに膨らました。涙目で先生!と訴えた。


先生は星本さんを見返してたから私を見た時、

カラスが文鳥小屋の屋根に舞い降りて来てカァと鳴いた。次の瞬間、先生と星本さんの前に逃げ出した文鳥の頭が落ちて来た。綺麗な頭の切断目から少しばかり血が垂れていた。


私はそれを拾うと文鳥の巣箱の出入りへこちら向きにして頭を置いた。


「先生、星本さん。逃げ出した文鳥が戻って来たよ。良かったね」


いつの間にか先生は無言で私を見続け星本さんは膝を抱えてないていた。


小屋の屋根の上で又、カラスがカァと鳴いた。

きっとお腹が空いているのだろう。


でも今は夕食の時間じゃない。


何かを食べるとしたら今はおやつの時間だ。


私は巣箱の側にある、さっき星本さんが入れ替えたばかりの水の容器を見た。そこにはもう1匹の文鳥が嬉しそうに水を飲んでいる。それが終わると巣箱の中に戻った。先生も星本さんも相変わらずだから、私は肩を落とし溜め息をついた。


仕方ないなと思いながら巣箱の中に手を入れた。

産んだばかりの文鳥の卵を1つ取り出した。


「直ぐに新しい文鳥が生まれるから気にする必要はないですよ」


私はいい卵を戻し、小屋から出た。


「星本さん、鍵は閉め忘れないでね。産まれる文鳥まで逃げられたら、新しいものに変えられないからね」


私は2人なさようならと言った。そして文鳥の頭を思い出し、カラスに切断された文鳥の頭と同じ色した苺のショートケーキが食べたいと思った。


今日のおやつはお母さんに頼んで苺のショートケーキを買って来て貰おう。私はスマホを取り出しお母さんにメールをした。

そして文鳥の頭の写メを撮り忘れた事を少し悔やみながら思う。


カラスさん。ありがとう。おやつに美味しい苺のショートケーキが食べられそうだよ




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