表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/20

ステップファミリー

『ステップファミリーって知っていますか?』


 突然の投稿だった。

 すっかり毎日の日課となったインスタグラムのチェックをしていると、結菜ちゃんママの投稿が飛び込んできた。投稿されている写真には、結菜ちゃんとママ、パパと女の子が写っていた。結菜ちゃんとママ以外は顔をスタンプで隠してあるので雰囲気しかわからないが、女の子は結菜ちゃんよりもかなり年上に見えた。


『実は、結菜にはお姉ちゃんがいます。パパと私は再婚で、お姉ちゃんは前の奥さんとの子供、結菜とはいわゆる異母姉妹です。

 最初、結菜の妊娠がわかったとき、お姉ちゃんにどう伝えようか悩みました。また、産んでいいのか、悩みました。血の繋がっている子といない子、私はうまく分け隔てなく接することができるのか。ただでさえ、他人がママになってお姉ちゃんにも負担になっているのに、さらにお姉ちゃんの負担になるのではないか。すごく悩んで、パパとも何度も話し合いました。

 けど、お姉ちゃんに報告した時、パパと同じくらい私の妊娠を喜んでくれて、妊娠中も労わってくれて、結菜が生まれてからもとてもかわいがってくれています。結菜もお姉ちゃんが大好きで、いつもお姉ちゃんといるときは、ニコニコです。お姉ちゃんには、本当に感謝しています。

 ステップファミリーとは、私たちみたいな家族のことを言います。

 お姉ちゃんと私は、血が繋がっていません。けど、普通の親子みたいに仲良しだし、お互いに大切に思っています。血の繋がりがなくても、家族になれます。パパと結婚して、お姉ちゃんとも家族になって、本当によかったと思っています。

 先日、友人の一人から、ステップファミリーになろうか迷っていると相談をされました。その子と話しているうちに、世の中の同じように悩んでいる人に、少しでも安心してもらえたらなと思って投稿しました。全然参考にはならないかもしれないけれども、誰かの力になれたらいいなと思っています。』



――この投稿はバズる予感がした。



 私の予感通り、結菜ちゃんママの投稿には1万近くのいいねと多数のコメントが寄せられた。


 婚姻するカップルの三組に一組は離婚すると言われている現代において、ステップファミリーというコンテンツは一定数の人に刺さる。同じような境遇の人からの共感を集めやすい。


 バズる投稿に引っ張られるように、結菜ちゃんのインスタグラムのフォロワーは5,000を超えた。フォロワー数6,000の凜のアカウントに肉薄する勢いだ。


 一番フォロワー数が少ないのは芽衣ちゃんで、フォロワー数は2,000ほど。フォロワー数1.2万の笑茉ちゃん、1万の咲良ちゃんには、結菜ちゃんも私も遅れを取っている。


 やはり、ハーフベビーはコンテンツとして強い。顔の作りが人形のように美しく、ただ座っているだけ寝ているだけでも絵になる。日本人の両親から生まれた赤ちゃんでは太刀打ちできない。あと、ちょこちょこ投稿に登場する笑茉ちゃんママと咲良ちゃんママにも、一定数のファンがいるようだ。


 みんなこまめに投稿をすることで、フォロワー数を順調に増やしている。結菜ちゃんママのように、自分の私生活を切り売りすると多くの人の目に留まりやすいことはわかっている。けど、私はインスタグラムという虚構の世界にプライベートな部分を介在させたくなかった。私は特徴も面白味もない人間だし、特にバズるようなネタもなく、他の人の目に留まる要素も持ち合わせていない。フォロワー数を増やしたいなと思いつつ、投稿する内容に頭を悩ませる日々。


 数は力だ。


 インスタグラムはお金になる。先日、PRの依頼が来て受けたら、1万円の謝礼がもらえた。内容はごく簡単なもので、子供用のお食事エプロンが送られてきて、凜がエプロンを身に着けて食事する様子を写真に撮って感想と共に投稿するだけ。ほんの数分で終わる作業でお金がもらえ、また、買えば4千円もするエプロンがただでもらえたことにびっくりした。他のママたちもうまく活用して、PR案件を受けてお小遣い稼ぎをしているようだ。ただ、PRは諸刃の剣であまりやりすぎるとフォロワー離れに繋がる恐れもあるので、受ける案件は見定めている。


 笑茉ちゃんはモデルデビューをしたようだ。インスタグラムに、子供服ブランドのカタログでモデルデビューをしたと書いてあった。笑茉ちゃんママも定期的にVERYに登場しており、親子そろって華やかだ。


 凛もモデルデビューさせてみようか。


 考えが一瞬頭をよぎったものの、すぐに消え去った。確かに凜はかわいいが、ハーフの子にはどうしても容姿で見劣りするし、モデルになるほどのビジュアルではない。インスタグラムだと雰囲気や内容で他の人の目を引くことが可能だが、容姿だけでシビアに判断されるモデルの世界では厳しいだろう。


 せめてインスタグラムの世界では、笑茉ちゃんや咲良ちゃんと肩を並べたい。そのためには、私も投稿を頑張らなければ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ