残したお弁当
12月28日。
混み合った新幹線で帰省した悠は、家に着くと具合が悪いとすぐにベッドに入った。雪のせいで新幹線は2時間も遅れた。
「悠、大丈夫?」
母が部屋に入ってくる。
「うん。」
「明日、大掃除しようと思ってたから、悠も手伝って。」
「わかった。」
そう返事はしたけれど、結局、大掃除は手伝えなかった。ずっと具合が悪いと寝てばかりいたせいか、初詣も人混みが嫌だと言って、悠は1人で家に残った。
家の中でシュークリームを食べていると、玄関のチャイムがなった。
お母さん達、帰ってきたなら、そのまま家に入ってくればいいのに。
悠は玄関を開けた。
「瀧本、明けましておめでとう。」
「梶原くん、どうしたの?」
「少し話せない?」
「いいよ、あがって。」
「みんなは?」
「初詣に行って、その後親戚の家によるみたい。」
「瀧本は行かなかったの?」
「人混み、苦手でね。それに帰省ラッシュの新幹線で、少し具合悪くなって。」
「そっか。」
「座って。何か飲むでしょう?」
「いいよ、気を使わくても。」
「ちょっと待ってて。」
悠はシュークリームと缶ジュースを持ってきた。
「瀧本って、甘いもの食べるんだな。」
「食べるよ。」
「いつも辛そうにお弁当食べてる印象しかなかったから。」
「なかなか体力つかなくて、監督にご飯を食べろ食べろって言われ続けた。」
「メシハラだろ、それ。」
「その反動かな。野球辞めて、お菓子ばっかり食べるようになった。」
2人は久しぶりに笑った。
「中学までは、野球してる事がすごく楽しかったの。だけど高校に入って、野球をやってるのが苦痛になってね。高校の最後の夏、本当はホームランを打たれて、これで終ったって清々したの。」
「俺は野球してる瀧本が好きだったよ。」
「梶原くんより日に焼けてて、恥ずかしかった。」
悠は自分の腕を触った。
「瀧本、なんかまた小さくなったよな。勉強はそんなに大変なのか?」
「ううん、楽しいよ。」
「梶原くんは大学、楽しい?」
「普通だよ。なあ、本当にちゃんと食べてるのか?」
「食べてるよ。」
叶大は悠の顔をずっと見ていた。
「今度、瀧本の教室までお弁当届けようか?」
「何言ってんの!」
「弁当箱の中に大好きなシュークリーム入れてやるからさ。」