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第三話 古代の遺跡探索。

 さて、ネイドという移動手段を手に入れたので早速遺跡に向かうことにしたようだ。


 世界崩壊時に持っていた、皮革でできた水筒にキレイな水を注ぎ、ネイドに跨る。


「ほら、行け」


 足で腹を蹴りネイドを進ませる。乗馬は多少嗜んでいたのか、ネイド乗っている姿は大して見苦しくない。


 パカパカと歩を進め、時々食べるための魔物も轢きつつ、ネイドと龍神信者は順調に遺跡に向かって進んでいた。


 遺跡への移動を開始して約半年が経ち、遺跡にたどり着いた。龍神に喰われていたら、と心配だったが、道中でも何度か建造物を見かけたあたり龍神は遺跡というものが嫌いなのだろう。


 それは石造りの古臭い遺跡だったが、何百年も前から存在していると考えれば新しく見えるような、奇妙な外観の遺跡だった。


 ネイドが他の魔物に食われることを恐れ、龍神信者はネイドと共に遺跡に足を踏み入れる。入った瞬間にかび臭さや何かが腐ったような匂いが鼻をついた。


 足の裏からはなんとも言えない、ぐじゅりとしたものを踏んだ感覚が伝わってくる。そのぐじゅりとしたものは死んだスライムらしく、しかも最悪なことに見える道の床全てにスライムの死骸が張り付いていた。ちなみにネイドは気にする素振りを全く見せていない。


 顔を顰めながら龍神信者は足を進める。中は暗く、とてもではないがランプの類のものがなければまっすぐ進むことすら叶わないだろうと予想がつく。ランプを持ってきて良かった、と龍神信者は安堵しつつ、呪紋がないか遺跡の壁を見回した。一見何も無いように思えたが、よく見ると濁ったスライムの死骸の向こうに文字のようなものが書いているときがついた。


 それは一本の線の両脇に呪文文字と呼ばれる呪文を構成する文字が書かれているものだった。ちなみに呪文文字と補助記号(今回の場合は線)によって描かれた呪文の一種を呪紋と呼ぶ。それを目を凝らしながら辿っていくと、奥へ奥へと続いているらしかった。


(この先にメインの呪紋があるのだろうか?)


 順当に考えればそうだろう、と龍神信者は呪紋を追いかけることにした。


 遺跡内は曲がりくねった構造をしていて、まるで迷路のようであった。道もはじめのうちは一本道だったのだが、進むにつれて枝分かれが多くなっていき、それに合わせ足元の呪紋も枝分かれをするようになっていた。おかげでだいぶ苦労して進むことになってしまった。


「遺跡の別名は迷宮とも言うが……いやはやまさにその通りだな」


 スライムに足を取られるし、幸いにも道は広かったので、龍神信者はネイドに乗って進むことにした。


 その後も行き止まりに悩まされたり迷子になったり魔物の死骸に慄きもしたが、ついに最深部らしきところに到着した。それは下に続く階段のようであり、床の呪紋は階段より数メートル手前で一つの円を象り、またそこからいくつもの線に分かれ、階段の入口の縁につるのようにまとわりついていた。それは一種の芸術性すら感じるもので、龍神信者も少し見惚れてしまった。ネイドは我関せずといった様子だった。


 円の中心部には、おどろおどろしくもどこか奇麗さを感じさせる赤い宝石が埋め込まれていた。


 階段は流石にネイドが通れるほどの広さはなかったので、仕方なくネイドはおいていき龍神信者が単独で降りることにした。相変わらずスライムの死骸は床に張り付いていたが通路よかマシだった。なんせ、通路は一面スライムだらけだったが階段はスライムの死骸がない部分があるのである。それだけでも龍神信者は嬉しかった。


 しばらく降りていくと、なにやら広間にでた。ランプだけでは全て照らせないほど広く、階段の壁や床びっしりにあった呪紋は床のある一点で収束し、またどこかに伸びているようだった。


「……これを使うのか? ちょっと自信なくなってきたな……」


 逆に今までは自信があったのか、とツッコみたくなる。


 広間にはスライムの死骸は無く、呪紋が見やすかった。龍神信者は歓喜した。意外とスライムが不快だったのかもしれない。そしてスライムが無いからこそ気がつけたのかもしれないが、上階と下階をつなぐ線型の呪紋が途中で擦り切れ消えていた。


 呪紋の先には円形の補助記号とそれに沿って書かれた呪文文字があった。その呪紋はかなりの大きさをしており、ランプでギリギリすべて照らせるかどうか、という感じだ。


 円形、というのは第一印象で、実の所は孤が幾つも少しズレながら連なって、そして円のような形を作っている。また、孤と孤は離れている訳ではなく、延長線が中心部に向かう短い線で繋がっていた。小胞体をイメージしてもらえればと思う。


 また、この呪紋は今までの呪紋とも違っていた。通路や階段に書かれていた呪紋はざっと見た感じ、同じ呪文文字の繰り返しだったが、この円形の呪紋はどこを取っても異なる呪文文字が書かれていた。


 また、一つ気になる点があり、それは呪紋が描かれている床の一部がタイルのようになっていてかつ、自由に取り外しが可能なことと、その形に合ったスペアのようなものが広場の隅に幾つか置かれていたことだ。


 龍神信者は教会に務めていた時に得た呪文についての知識を思い出しながら呪紋を解読しようと試みた。かなり熱心に書籍などを読んでいたからか、知識は龍神信者の思っていたよりもスラスラと出てきて、解読も思っていたより早く進んだ。


 といっても四半期はかかったかもしれない。


 解読の結果分かったことは、起こる現象、これはおおよそ龍神信者の思っていた通りだった。所々、龍神信者も分からない部分があったので全く同じかは怪しいところだが。


 呪紋を発動させるトリガーがどこかというのもわかった、どうやらあのタイルは召喚するものの名称を書く部分だったらしく、それに召喚対象を書き呪紋に組み込むと、その瞬間に呪紋が発動するらしい。


 最後に、何を代償にこの呪紋は発動出来るのか。呪文というのは、必ず使う際何かしらの代償を支払わなければならない。それは客観的な視点により価値が決まるとされている。


 解読の結果、この呪紋は世界の核に内包されるエネルギーを代償に呪紋を発動させることが判明した。

 呪文と呪紋は読みは同じ「じゅもん」ですが「もん」部分のイントネーションが違うのでそこで区別できます。地方によって変わるらしいですよ。(牡蠣と柿的な)


 呪文は呪文文字によって構成される、特別な現象を引き起こすプログラムのようなものの名前です。使う際代償が必要です。なので呪紋でも呪言でも何を代償にするかという記述が必ずあります。

 呪紋は本文中にもある通り、呪文文字と補助記号によって描かれた呪文の一つです。

 呪文文字は人の為の呪文を作り、扱うために作られた独特の文字です。もともとは魔物が似たようなものを使っていました、それを模倣したわけです。

 補助記号は呪紋を書く際に、どこに呪文文字を書くか目印にしたりするためのものです。無くても問題はありませんが、あった方がもちろん呪紋は正確になります。

 呪言といういわゆる詠唱のような発動方法もあるのですが、息継ぎをするとそれまでの詠唱がパァになるなどの理由であまり普及していません。龍神信者はなぜか使えます。

 まあそもそも呪文自体一般的では無いんですけど。


 遺跡内にスライムの死骸が大量にあるのは、遺跡がスライムにとって最適な環境なので大量発生してるからです。生きてるスライムも居ますが、スライムは光から逃げる性質があるので龍神信者の目には入りませんでした。


 スライムは体に自然には分解されにくい流動体のものがまとわりついているという構造です。床にへばりついてるのは流動体のものなので、死骸というよりか残骸とかの方が正しいかもしれません。

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