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第一話 食い残された龍神信者。
その日は訪れた。
数年前に、とある呪術師がこう言った。
「龍神がこの世界に訪れ、世界を滅ぼす」
それは本当の事となった。
空に生まれた時空の裂け目から、この世界とは別の次元に住まう龍神が現れ、この世界を喰い始めた。
龍神は「この世界は俺の好きなもので溢れている」と満足げにこの世界を喰っていったという。
そんな龍神の前に、ある一人の男が現れこういった。
「龍神さま、俺を喰ってください!」
頬を紅潮させ興奮気味に言い放つ男に龍神はこう返した。
「え、何……キモ……お前は喰いたくないわ……」
そして世界には龍神が喰い残したものと龍神信者だけが残った。
龍神信者は落胆した……しかし、そこで彼は思い出す。
「この世には、別次元であろうとどんな存在をも呼び出せられる呪文が存在する!」
まさか自分が龍神の気分を害するほどの存在ではないと思っている龍神信者は、龍神をこの世に呼び出すため、そして龍神に食べられるため! 荒野のようなこの世界を奔走すると決意したのだった。